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「ぐぉぉぉ……(やべぇ、帰りてぇ……家どこか知らないけど……)」
俺は今、自衛隊駐屯地にある独房の中で胡座を掻いていた。
マジで暇なんですが。さっきアセビにゲーム機借りたけどちょっとした拍子に握りつぶして泣かせちゃったし。
睡眠欲も無いから寝ることさえできない。
「ぐぉぉ。(そう言えば、さっき俺の体から翼生えたけど、あの変形能力ってどこまでいけるのかな。)」
これは多分、良い暇つぶし……違う違う。良い実験になるだろう。
試しに、人差し指が刃物になるのをイメージする。
するとピキピキと音を鳴らし、一瞬で手甲の人差し指の先端が鋭利なナイフに変わった。
おお、すげぇ!
試しに床を軽く切ってみると、タイルがバターみたいに切断されていく。
心の中で『戻れ』と念じたら、指はちゃんと元の形状に戻った。
その後も俺は実験を重ね、大体は今の自分の体について理解した。
・変形する先の色、硬さ、大きさ、性質は自由に決められる。
・生き物も、一目見るだけで完全に模倣可能。部屋の隅にいた蜘蛛を模倣すると、体が巨大な蜘蛛に変化した。
・今朝の『天使』にも変化できた。かなり弱体化はしているが雷も発生可能。
「……ぐお?(あれ、強くね?)」
なんだこの、『ぼくのかんがえたさいきょうのもんすたー』みたいな能力は。
こういうのはただ強くすれば良いってもんじゃないんだぞ。
弱点とか付けないと陳腐になる……いや、自分が強い分にはOKなんだけども。なんかな……
「ドミネーターさんっ!ガブリ◯スの厳選終わったのでポケモンやりましょう!次は負けませんよ!」
その時、ドアが開いて二台のDSを持ったアセビがやってきた。
いや一応勤務中だろ。遊びに来んなよ。
ああそうだ。俺の模倣能力って、人間にも使えるのかな。
丁度良いから試してみるか。
ーー骨組看破。筋繊維複製。内臓模倣。皮膚転写
「ぐぉ。(コピー開始。)」
体が捻れて縮み、体表が色白の皮膚に塗り変わっていく。
頭部から艶のある黒髪が流れ、鉄格子に反射した瞳が蒼い光を放っていた。
「ぅ、え、ぇ……!?わ、わたし、?」
……成功、っぽいな。
小さくなった手を見ながら俺は立ち上がった。
でもなんか息がしにくいし、立ってるだけで物凄く疲れる。
「にやぁっ!?にゃんで、裸なんですか!?」
変な声で驚きながら言ったアセビに指摘され、自分の体を見下げる。
そこには、存外豊かな二つの丘があった。
「ぐおぉぉぉっ!?(えええ!?)」
服とかサービスしてくれても良くないか!?
つか寒っ!体が人間モードになるとこういうのもあるのかよ!
「おいドミネーター。お前に話が……ってぉぉぉお!?アセビィィィ!?なんで裸で檻に入ってる!?プレイが特殊すぎるぞ!流石の私でもドン引きだよ!」
「み、見ないでください!ほらあなたも隠して!見えちゃいますから!」
急に入ってきた山吹がこの光景に吹き出す。
戻れ!戻れ!
テンパりながらそう念じると、身体は元の騎士モードに戻った。
よ、よかった……アセビの人としての尊厳を粉々に打ち砕く所だった……
「うう……もうお嫁に行けない……!」
「大丈夫だ。どうせ誰も貰ってくれない。」
「なんでそういう事言うんですかぁ!?」
泣き出したアセビを尻目に、山吹は俺の方に歩んでくる。
「……で、なんだ今のは?」
「ぐ、ぐお……(すんません……)」
「謝罪が聞きたいんじゃない。説明を求めているんだ。」
真顔で物凄い圧力を放ってくる山吹に、俺は自分の能力を説明する事にした。
■□■
「……なるほど。有機物、無機物に関係無く、対象への完全変形。それが君の能力か。」
長時間の説明の末、メモを取りながら山吹はそう納得した。
「先ほど判明した他のドミネーター達と比べると……うん。正直微妙だな……」
「ぐおっ!?」
なに!?他の怪物達ってそんなに強いの!?
インフレし過ぎだろ!
能力コピーとか普通ラスボスクラスの能力だよな!?
「ぐおぉぉ!?(具体的には!?)」
「ん?ああ……例えば報告書には、触った物を“全て“『なんでも切れる剣』に変える能力を持つ物とかあったな。」
……“全て“って部分を強調してる辺り、なんか嫌な予感がするな。
「この『全て』はなんと人体や弾丸、ましてや空気さえ例外ではない。このドミネーターが空気に触れている限り、なんでも切れる剣が無限に増殖する、というわけだ。そのせいでまだ姿さえ確認できていないらしい。」
……え、なにそのチート。
ただの災害じゃん。太刀打ちできねぇじゃん俺。
「ええと他には……『現実を改変する』とか。『死の概念そのもの』とか『他のドミネーターを使役、強化する』とか。あとはー」
「ぐぉぉ!(もういい!やめてくれ!)」
おかしい、おかしい!おかしいよ!
んだよそれ!もう俺の敗けで良いから人間に戻してくれ!
そんな連中と戦いたくない!
「……あとな。今朝君が倒した天使の件だが。死体を研究した結果いくつか分かったことがある。」
山吹が、深刻な表情で言う。
な、なんだよ、まだ何かあるのか?
「アルジェリアに、別個体の『天使』が二千体いた。」
……は?
あの怪物が、もう二千?
「ぐおっ!?(ファッ!?)」
「全員死骸だったがね。君があの布……『天使の聖骸布』を破壊したのと同時時刻、活動を停止したらしい。」
体から血の気が引いていく。
案外簡単に殴り倒せたから、他の怪物達も楽勝かと思ったのに。
なんだこの、倒した敵が実は小ボスだった上、あと二千体いますよ。みたいな。
頭おかしくなるわ!
「そして……あと二つ、分かったことがある。一応質問するが、最悪なニュースと超最悪なニュース、どちらを先に聞きたい?」
ーーまだ、あるのかよ。
心の中で悪態を突きながら、俺はジェスチャーで少しでもマシな方を先に言う様頼んだ。
「……アルジェリアが、消滅した。」
悼ましい、と。歯を噛み締めながら山吹が言う。
……なんだって?
俺は、自分の心臓の鼓動が早鐘の如く早まるのを感じた。
「……これもさっき知らされた事だが、『ドミネーター』が死ぬと、その国は他のドミネーターから積極的に襲われるようになるらしい。そのせいで、計六体のドミネーターによってアルジェリアは蹂躙され、国土はほぼ更地になってしまった。……当然。そこに住んでいた人も。」
ーー目が霞む、腹の下の辺りが熱した鉛でも呑み込んだみたいに熱い。
……俺が、あの天使を殺したせいで、国が一つ消えた?
「いや、君が悪いわけじゃない。……ただ、これを隠しておくのは君に対して卑怯だと思ったんだ。実際、あそこであの天使を倒さなければ逆に日本が消えていた。」
ーー俺は、大量虐殺者も同然じゃないか。
「……あと、超最悪な方はな。」
山吹は、追い討ちを掛ける様に続ける。
「もう二時間と三十分で、別の『ドミネーター』が日本に上陸するという報せが入った。」
ーーあと二時間半で、最低でも一つ国が消える。
それも、俺の手によって。
勝っても負けても、多くの人々の未来を、握り潰す事になる。