2019年11月23日から4日間の予定で、ローマ法王フランシスコ(82歳)が来日する。南米出身の初めての法王であり、庶民の出身。彼の所属するイエズス会からのローマ法王輩出も初めてである。
何もかもが異例づくめ、と言われるが、なぜそれが「異例」なのか。
簡単に言えば、長い植民地として歴史を持つ国から、欧米の精神文化のトップが出たということが一つ。
そして二番目。そもそもイエズス会は入会の時に司教にならないという宣誓をする。権威から長く距離を置いてきたイエズス会という宗派から法王が出る、というのは大変異例なのである。
ヨハネ・パウロ2世の来日から38年ぶりに、法王が日本にやってくる。フランシスコ法王は、13億人と言われるカトリック信者の頂点に立つ人物だ。
今回法王となったフランシスコ。就任前の名をホルヘ・マリオ・ベルゴリオという彼は、庶民の出でもある。ごく普通の移民の家庭で育ち、若いころは恋愛も経験している。そして、軍事政権下の政情不安なアルゼンチンで、貧しい人々のために布教活動を続けたことで知られる人物だ。
映画『ローマ法王になる日まで』(主演:ロドリゴ・デ・ラ・セルナ)でも描かれているが、彼のように険しい道を歩んできた法王は稀だろう。命がけの信念を持たなければ、映画に描かれていたような政情不安の国で、体を張っての宣教などできない。
むろん、映画はある意味作られたものだ。しかし、若きアルゼンチン時代の法王の写真を見れば、その眼光の鋭さに射抜かれる。
今私が見ているのは、地下鉄に乗り、カメラに目を向ける写真だ。その瞳は暗さと慈愛を同時にたたえているように見え、きれいごとでは済まない思考と経験を経てきた人物だという印象を覚える。法王となった今でも時に法王は地下鉄やバスを使い、清貧を貫いて、法王の住むべき王宮に住まず、他の司教たちの住む寮にいるという。ただの人気取りの人物にできることではないだろう。
貧しい人への配慮を怠らず、若者の要望に応じた自撮り写真が出回るなど、何かと話題の多い人物だ。
「ロックスター法王」と言われ、西欧で大変な人気を博している理由がわかる気がする。非常に人間的な魅力をたたえた人物なのではなかろうか。少なくとも「今までの法王とは違う」と、キリスト教世界を知る在日外国人は口をそろえる。
今回の来日を折にその素顔に迫りたいと思い、上智大学にアイダル・ホアン神父(上智大学神学部教授)を訪ねた。アルゼンチンで神学生時代、現法王から直接の指導を受け、今も交流が続いているという。
そのインタビューから、法王フランシスコの素顔を感じていただけたら幸いである。