ハッブル宇宙望遠鏡が目撃、美しき星たちの神秘的な姿:今週の宇宙ギャラリー

地球の大気に妨げられずに宇宙の姿を捉えるのであれば、宇宙望遠鏡にかなうものはない。軌道から銀河を眺めているハッブル宇宙望遠鏡は、これまでにさまざまな宇宙の神秘を捉えている。その一部を紹介しよう。

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    1/6「UGC 2369」は、互いにぶつかりあう一組の銀河だ。塵とガスからなる茶色っぽい橋が、まるで指のように、2つの銀河をがっちり組み合わせている。この橋は、両者のあいだに重力の相互作用があることを示している。このように相互に作用する銀河は、それぞれ相手のかたちを根本から変えてしまう。そして、好むと好まざるとにかかわらず、次はわたしたちの番だ。われらが天の川銀河は、近くにあるアンドロメダ銀河とのあいだで、いずれ相互作用を起こすと見られている。40億年もすれば、合体してひとつの銀河になるはずだ。合体後の超巨大銀河には、「ミルコメダ(Milkdromeda:Milky WayとAndromedaを合成した言葉)」というニックネームがつけられている。PHOTOGRAPH BY A. EVANS/ESA/HUBBLE/NASA
  • 星の死は、非常に美しいものになることがある。とりわけ、「NGC 2022」のケースではそうだ。死につつある恒星は、物質をへと吐き出し、星の構成材料からなる泡のようなものをあとに残す。奇妙なことに、そうした泡は惑星状星雲と呼ばれるが、惑星や、惑星の形成とはなんの関係もない。その名がついたのは、かつて望遠鏡を通して見たときに、惑星のように見えたという単純な理由からだ。PHOTOGRAPH BY R. WADE/NASA/ESA/HUBBLE
  • 「野ガモ星団」の異名をもつ「メシエ11(M11)」は、2億2,000万年前から存在すると推定される星団で、専門用語では「密集度の高い散開星団」と呼ばれる。だが残念なことに、散開星団としては長くは生き延びられないだろう。この種の星団では、星が比較的分散して存在しているため、近くを通る大型の天体が、その重力で星を引きつけ、このにある輝く点のような星たちをいっそう引き離し、拡散させてしまうのだ。天文学者たちの推定によれば、M11に残された星団としての寿命は、数百万年ほどしかない。そのあとは、緩やかに結びついた星々が散らばった状態になるだろう。PHOTOGRAPH BY P. DOBBIE ET AL./ESA/HUBBLE/NASA/CC BY 4.0
  • 連星系が生んだ「南のかに星雲(Hen 2-104)」は、ハッブルがこれまでにとらえた宇宙写真のなかでも特に有名だ。連星系のそれぞれの星が互いに作用し、高速で物質を吐き出した結果、このユニークな形状ができあがっている。ぶつかりあう2本のライトセーバーさながらに、2つの星の放出の力が、宇宙に吐き出される物質を複雑に絡みあわせているのだ。PHOTOGRAPH BY NASA/ESA/STSCI
  • この網状星雲は、ほんの8,000年前に死んだ星が起こした超新星爆発の残骸だ。その星は、太陽の20倍を超える質量をもつ恒星だった。そうした星が超新星爆発を起こすと、巨大な衝撃波パルスが生じ、すさまじいスピードで物質が押し出される。この写真に見られる様々な色は、さまざまな種類の元素や物質が存在することを示している。このカラフルな「高速道路」の下のほうには、ふわふわとした緑色の雲が見える。ここではまだ、超新星の衝撃波との相互作用は生じていない。一方、赤い領域にあるのは、パルスとの相互作用をいままさに始めたばかりのガスだ。これらのガスは、時速150万kmという驚くべき速度で移動している。PHOTOGRAPH BY NASA/ESA
  • 今回の真のスター、の登場だ。この写真は、2009年に保守点検のためにハッブルを訪れた宇宙飛行士が撮影した。左側には、太陽電池パネルの1枚が写っている。そして背景の青色はもちろん、われらが地球だ。PHOTOGRAPH BY NASA GODDARD

今回の宇宙ギャラリーでは地球低軌道に入り込み、ハッブル宇宙望遠鏡とともに時間を過ごすことにしよう。

ハッブルは1990年にスペースシャトル「ディスカヴァリー」によって軌道上に打ち上げられて以来、宇宙観測の仕事を続けている。これまでに宇宙の年齢や膨張速度、われらが天の川銀河の質量や大きさの測定に貢献したほか、数々の大きな発見をしてきた。

だが、この大胆不敵な宇宙望遠鏡は、誕生してから現在までのあいだに、大きな難問に直面してきた。反射鏡の歪みのために分解能が予定よりかなり小さいことが、打ち上げ直後の調整でわかったのだ。このため米航空宇宙局(NASA)は93年、クルーを再度送り込み、反射鏡を修正して問題を解決した。

ハッブルは数十年にわたり、科学者と世界を驚嘆させてきた。ハッブルは地球軌道にある数少ない望遠鏡のひとつだが、地球の大気に妨げられない宇宙の姿を見るためには、それが大きな意味をもつ。ハッブルの伝える光景は、誰も予想しなかったほどまばゆいものだったのだ。

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アップルのワイヤレスイヤフォン「AirPods Pro」は、ジョブズ時代を思わせる驚きに満ちている:製品レヴュー

発売されて以来、かなりの人気が続いているアップルのワイヤレスイヤフォン「AirPods Pro」。その実力は人気に違わず、質から使い勝手、フィット感、そしてノイズキャンセリングの性能まで素晴らしいものだった──。スティーブ・ジョブズの“あのセリフ”が思い浮かぶ、『WIRED』US版のレヴュー。

TEXT BY PARKER HALL

Apple

PHOTOGRAPH BY APPLE

アップルの新しいワイヤレスイヤフォン「AirPods Pro」は、よくできている。あまりにもよすぎて、ねじれた小さなゴルフティーが耳からぶら下がっているような奇妙な見た目や、ほかのワイヤレスイヤフォンと同じくおそらく数年もすればバッテリーがだめになってしまうことを忘れてしまうくらいだ。つけている姿がいかにも金持ちみたいだという理由でネット上でミームにされても、構わないとさえ思ってしまう。

ここでは不満を並べ立てるのではなく、このAirPods ProがこれまでのAirPodsの2つのモデルと比べて、いかに優れているかを語っていくつもりだ。新しいシリコーン製のイヤーチップは本当に快適で、アクティヴノイズキャンセリングを使えばお菓子売り場の幼児の叫び声もほとんど聞こえなくなるのは最高である。ランニングには耐水性能は欠かせないし、Siriはあらゆる要求にしっかり応えてくれる。

アップルがiPhoneから“勇敢”にもヘッドフォンジャックを廃止して以来、これがアップルのイヤフォンのあるべき姿だった。

使い勝手もフィット感も向上

まず、フィット感は申し分ない。イヤーチップは従来のモデルよりも大きく人間工学に基づいたデザインになっていて、シリコーンのおかげで耳の密閉性は素晴らしい。アップルは以前までのモデルと同じく自然な着用感を維持しつつ、イヤフォンに通気孔を設けることによって耳の内外の圧力を解消することに成功している。これによりイヤフォン着用時の圧迫感がなく、軽いのでほとんど耳に何も着けていないような感覚だ。

軸部分は短くなってより湾曲が増し、マイク部分がやや口元に近くなった。これにより少し通話品質が向上し、全体として耳から突き出している部分も少なくなった。これは安定性向上にもつながっている。従来のAirPodsは耳につけていて不安になることが多々あった。通勤電車で誰かに肩をぶつけられただけでイヤフォンがどこかに飛んでいってしまうのではと、いつも不安になるくらいだ。AirPods Proでは、そういった心配はない。

AirPods Pro

PHOTOGRAPH BY APPLE

操作性もよくなっている。これまでのタッチ操作では、イヤフォンの位置を調整しようとして誤って操作してしまうことがあったが、このモデルは軸部分に感圧式のセンサーが搭載された。軸部分をつまむようにして押し込み、その押し込む時間の長短によって楽の再生や一時停止、曲の変更、周囲の音を聞くことができる外部音取り込みモードの切り替えなどが行える。イヤフォンを片耳だけ外せば自動で一時停止し、旧来のBluetoothヘッドセットのように片耳だけで使うこともできる。

充電ケースはこれまでのAirPodsに比べてやや大きくなったが、これはイヤフォンの形状によるものだろう。それでも小型でポケットサイズであることには変わりなく、小さすぎて普段は役に立たないジーンズのポケットにも入れられるほどだ。アップルによると、充電ケースのバッテリー容量は本体1回分の充電に加えて19.5時間ぶんとなっており、実際に使ってみてもほぼそれと同じくらいの稼働時間だと感じた。

満足ゆく音質と完璧なノイズキャンセリング

従来のAirPodsは、やや物理の法則に抗いすぎているきらいがあった。イヤーチップがしっかりしたものでなかったので、音量を思い切り上げない限りいい低音を得るのは難しかったのだ。そのせいで、これまでのAirPodsの音はこもりがちで、低音域は強調され高音域は弱いので、耳障りがよくないうえバランスも悪かった。

これはイヤーチップの影響が大きいのだが、AirPods Proの音質ははるかに満足できるものになっている。

ビートルズの「Oh Darling」では強くパンするギターの音が見事な解像度でかき鳴らされつつも、左側で鳴っているポール・マッカートニーの陽気なベースラインやピアノのきらめくような和音をかき消してしまうことがない。リンゴのドラムもパンチが効いていてキレがあり、両サイドの音にかぶることなくステレオの中心で反響している。この曲はそのよさを最大限に引き出すのが難しく、これまでのAirPodsでは中音域がごちゃごちゃでこもってしまっていた。

ノイズリダクション機能も完璧だ。個人的に移動時のお気に入りであるソニーのワイヤレスイヤフォン「WF-1000XM3」と間違いなく同等で、現状ではワイヤレスのアクティヴノイズキャンセリングイヤフォンとして唯一のライヴァルと言える。AirPods Proも同じように不気味なほどの静寂を与えてくれるのだ。

関連記事ソニーのワイヤレスイヤフォン「WF-1000XM3」は、ノイズキャンセリング性能が恐るべき水準にある:製品レヴュー

これはオフィスや通勤中、スーパーなどで使うにはうってつけだ。一方で長時間のフライトに関しては、個人的にはまだオーヴァーイヤー型のもっと大きなノイズキャンセリングヘッドフォンを使っていくのではないかと思う。

外部音取り込みモードも搭載されている。軸部分を長押ししてオンにすれば周囲の音が聞きやすくなるので、道路を渡ったり周囲に気を配ったりしなければならないときには特に有効だ。

数少ない弱点はバッテリー

AirPods Proにもやはり欠点はある。ノイズキャンセリング起動時の充電1回あたりの駆動時間はわずか4.5時間で、ノイズキャンセリングを使わなくても駆動時間は30分しか延びない。これは従来のモデルと比較してもさらに短い。

それだけバッテリーがもてば十分だという人や、そもそも4.5時間以上も音楽を聴くことはないから気にしないという人もいるかもしれない。しかし、長寿命バッテリーの真価は数年後に発揮される。バッテリーが優れていればいるほど、製品の寿命は長くなるのだ。

AirPods Pro

PHOTOGRAPH BY APPLE

スマートフォンと同じように、完全ワイヤレスイヤフォンに内蔵されているリチウムイオン電池は時間とともに劣化し、充電時の保持力がゆっくりと減っていく。これまでのAirPodsから考えると、AirPods Proは数年くらい定期的に使い続けた場合、1回の充電につき2時間ほどしか駆動しなくなってしまうだろう。その変化ははっきり分かるはずだ。

また、Androidユーザーにもお薦めできない。AndroidではSiriの素晴らしい音声アシスタント機能は使えないし、バッテリーの残量も表示してくれない。これは大きな違いだが、アップルにとってはおそらくどうでもいいことだろう。これまでのAirPodsと同じく、AirPods ProもほぼiPhoneやiPadオーナー専用と言える。

iPhoneユーザーなら「買い」

AirPods Proは、何かひとつの用途に限った場合は最高のイヤフォンとは言えない。しかし、あなたがiPhoneをもっているなら、サウンド界のスイスアーミーナイフのように活躍してくれるだろう。これはおそらく、アップルのハードウェア帝国のなかでは「Apple Watch」以来で最高の新製品かもしれない。

250ドル(日本では税別27,800円)という価格はほかのモデルに比べてやや高額だが、だからといってアップルに文句を言うものでもない。ソニーのWF-1000XM3もほぼ似たような性能で、あちらのほうが少しバッテリーのもちがよく、価格が20ドル安いといった程度だ。iPhoneをもっているなら、従来のAirPodsに100ドルを上乗せしてこちらを買う価値は間違いなくあるだろう。AirPods Proはそれくらい優れているのだ。

使っていてこれほど満足できるアップル製品に出合ったのは、10年以上ぶりかもしれない。多くの点でAirPods Proは、いまよりよかった過ぎ去りし日々のアップルを思い出させてくれる。タートルネックを着たスティーブ・ジョブズが真っ黒なステージに立ち、夢中になっているオーディエンスに向かって「One more thing(最後にもうひとつ)」と言ってAirPods Proを差し出す姿が思い浮かぶ。奇妙なことに現在のアップルは、このAirPods Proをプレスリリースだけで発表したのだ。

AirPods Proは完璧ではない。それでもアップルは、間違いなく誇りをもっていいだろう。

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