日産自動車が、次世代の「インテリジェントルームミラー」を2020年に投入する(図1)。「電子ミラー」の一種で、カメラで撮影した後方の映像をルームミラーのあった場所に配置した液晶ディスプレーに表示するもの。最大の特徴は、トヨタ自動車やドイツ・アウディ(Audi)などが解決できなかった電子ミラーの難題を解決したことだ。実現の裏には、1人の男の執念があった。
「開発費は払えない」――。日産自動車の田崎祐一氏(プラットフォーム・車両要素技術開発本部 内外装技術開発部 内外装HMI開発グループ)は、開発パートナーであるパナソニックの担当者を前に話を切り出した。
これは、次世代インテリジェントルームミラーの開発の一幕。日産が2016年に車両への搭載を始めた現行品に次ぐ3代目のプロジェクトを主導した田崎氏は、コスト削減策を検討した結果、開発費をパナソニックに支払わないという結論を導き出した。
この点を切り取ると「日産は非道だ」となるが、会話には続きがある。田崎氏は、「日産との共同開発品だが、他の自動車メーカーに自由に売っていい」とパナソニックに提案したのだ。
日産だけでは量産規模を確保できず
通常、自動車メーカーが部品メーカーに開発費を支払うと、その成果物は他社には供給できない。日産は、自社で次世代インテリジェントルームミラーを囲い込むのではなく、「他の自動車メーカーへの供給で量産規模を確保し、コストを低減する道を選んだ」(田崎氏)。
裏を返せば、日産単独では開発費を賄えるだけの量産規模を確保できないということでもある。「CMOSイメージセンサーや画像処理チップなどの主要部品を一から新設計した」(田崎氏)ため、開発費は一気に膨れ上がった。
「完成までに3年間もかかってしまった」と反省する田崎氏。それでも、多くの時間と資金を投じて誕生した次世代品は、他の自動車メーカーが頭を悩ませている問題を見事に解決している。
その問題が、「LEDフリッカー」と呼ばれるちらつき現象である。LEDは高速に点滅している。点滅周期とカメラのシャッターのタイミングが悪いと、画像ごとの明るさがばらばらになり、映像がちらつく(図2)。
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