2019-11-16

これが独居老人ってやつか・・・

仕事帰りに、家の最寄駅で倒れているおじいちゃんを助けた。

仕事で遠出して、くたびれて家に帰る途中で。

最寄駅を出ると、腰を折り曲げて何かを探しているおじいちゃんが目についた。

一生懸命何か探してるように見えて、サポート必要なのかな?と思いつつじーっとみて、でも通り過ぎてしまった。

声をかければよかったかな、思ったけど、きっと大丈夫、と思ってスーパーに入って買い物をした。店を出た時、やっぱり戻って見てみよう、もしも居なければそれはそれで解決したと安心できるし、もしまだ居るならばとても困ってるということだから、助けようと、思った。

戻ると、あろうことかおじいちゃんは倒れていた。

荷物を道に投げだして。

何人かの人はおじいちゃんを横目で見ながらも、酔っ払いホームレス判断がつかなかったと見えてみんな通り過ぎてゆく。

おじいちゃんに近寄ると、思いの外おじいちゃんは目をパッチリと開けて空を見上げていた。

寝てるだけです風を決め込んでいたのだ。

大丈夫ですか?」話しかけると

大丈夫です」

とかすれた声で言う。

救急車を呼びますか?」と聞くと

大丈夫です」

と言う。

「どこか具合が悪いですか?」と聞いても

大丈夫です」

気づくと横に主婦がいて、

救急車呼んだほうがよさそうですね?」と言う。

でもおじいちゃんをみるとどこが具合が悪いのかは分からない。

一応もう一度聞く。

救急車呼びますか?」

大丈夫です」

主婦の人が駅員さんを呼んできてくれた。

駅員さんも一通り上のやりとりを繰り返して

警察を呼ぶことにした。

11月の地べたに横たわるおじいちゃんは、しきりに寒い寒いと言う。

「地面に寝てるからですよ家に帰りましょう?」

「いいや、それはちょっと、、、」

おじいちゃんはすこし起き上がりたそうだったので、起き上がりをサポートすることになった。

手を握る。瞬間にすこし緊張した。

このおじいちゃんは身なりも綺麗で体格もしっかりしていて、きっとホームレスの方ではないだろうということを自分に言い聞かせる。

おじいちゃんの手をとると、冷たくて、誰かの手をずっと求めていたみたいに、しっかりと握り返してきた。

駅員さんと、主婦と、力を合わせて起き上がらせる。

おじいちゃんはどうやら、この辺に住んでる人で、家族はおらず一人暮らしで、家がどこなのかは分からなくなっちゃったらしい。

私は多分、最初に話しかけた瞬間から、7年前に亡くなった祖父のことが重なっていた。

祖父も昔、迷子になってしまって、近所の人に送り届けてもらったことがあった。

本人も、わかってたはずのことが分からなくて、こんなことが分からないなんて恥ずかしくて、人に分からないというのもショックだったはず。

気づくと飲み帰りの中年サラリーマンも立っていて、彼の提案で、飲み屋から椅子を持ち出して座らせることにした。

おじいちゃんは私の手を強く握ったまま離さない。認知症の人の症状なのか、手を何度も何度もニギニギしてくる。

隣の主婦はおじいちゃんの脈に触れており、聞けば看護師だと言う。

どおりでこの人は一番、状況判断が早い。

もう救急車呼んじゃえば?と早い段階で言っていたのもそういえばこの人だった。

そこから警察を待つこと30分。

駅員さんは持ち場を離れることの事務連絡を同僚にし、サラリーマンは飲み仲間に事情説明して遅れることを詫び、主婦は家庭のことを思っただろうし、私は明日もまた仕事遠征だなと思った。

現実的個人事情と、でもこの人を見放すことはできない感情と、後者が勝った人達がこのシチュエーションを共にした。

赤いライトが見えるたびに、警察やっと来たか?!とざわめいて、だけどなかなか警察は来なかった。

ようやくパトカーが見えた。赤いライトは付けずに、すーっと来た。

警察がつくとホッとしたのと一緒に、こんなに時間がかかるものなのかと。

このおじいちゃんをしっかりサポートしてくれるんだろうかと、なぜだか小さな敵対心私たちは感じた。

警察が来たことで、初めておじいちゃんリュックは開かれた。

中には幸い、おじいちゃん家宛のいろんな書類が出てきて、これでもかとばかりに、おじいちゃん名前と住所を主張していた。

警察はおじいちゃんに対して

「住所は分かりますか?」

と聞くけれど、下を向いたまま頼りなさげに首を振る。

警察が仕方なく住所を読み上げる。

そして「家に誰かいますか?」と聞いても

「誰もいない」と言う。

そして、「家に帰れますか?」と聞くと、流石のおじいちゃん

ちょっと厳しい、、」という。

すると警察は、

パトカーで来てるので家までお送りします」と言う

私とサラリーマン看護師主婦は、家に帰ってもおじいちゃんが一人きりという状況を一番心配していた。

この状態のおじいちゃんがいつまた、分からなくなっちゃうのか、わからない。

最悪の場合は、、、と色々考えると、おじいちゃんパトカーで家に送り届けるのは、全く不完全なソリューションに思えた。

とはいえ同居人やお子さんもいないとすれば、独立した一個人であるおじいちゃんの、その後の選択肢私たちが決めることもできない。

かなりモヤモヤして不安そうな顔をした私に対して、サラリーマン看護師主婦は「まぁしょうがないよな」と努めて前向きに言う。

きっといろんなことを知っていて、だから、これが最善だと理解したんだろう。

警察にお礼を言われたので私たち解散をすることになる。

お疲れ様でしたと言って、すごい2人とも早歩きで立ち去るのでびっくりした。

動揺の35分を過ごした私たちは少なから仲間意識を感じていたはずだけれど、あっという間に元の他人に戻っていった。

帰り道はかなり重い気分になった。これが現実だと思ったし、こういうことが日本のいろんなところで起きてるんだと思った。

縦長の狭い部屋に身を隠すように暮らす東京人達プライバシー私たちを守ってくれる一方で、こういうおじいちゃんを見えなくしてしまう。

まぁしょうがないよな、といったサラリーマン椅子まで持ってきてくれる優しい人が日本にはたくさん居るのに、それ以上のことを出来なくさせてるのは何なんだろう。

ご近所コミュニティ崩壊

プライバシーを守られたいのは誰?

これから高齢者マジョリティになっていく中で、プライバシーより重視されるものがある気もする。

こういう事象に対するソリューションはないんだろうか。単純じゃないのは分かってるけど、、、。

最寄駅で倒れているおじいちゃんを助けた。

助けたんだろうか?

  • anond:20191116175556

    その先が必要なのは間違いないけど、でも今日は助けてくれたよ。しっかりしていたころのおじいちゃんなら目を見て感謝をすると思う。というわけで、助けてくれてありがとう。

  • anond:20191116175556

    増田もお疲れ様でした。 お金があろうとなかろうと、家族がいようといまいと、私たちは全員この独居老人になる可能性を持っているわけで。 私たちはこうなったときにどうなりたいだ...

    • anond:20191116213607

      でもキモくて金のないおっさんが独居老人になりたくないから助けてくれというと一人で死ねと罵倒してしまうんですよねわかります

      • anond:20191116213718

        うんまあキモくなくて金があってもそうなる可能性はあるにしてもキモくて金のないおじさんがそうなる可能性の方が高いかもしれないな…統計がないからなんとも言えないけど。

  • anond:20191116175556

    社会のトレードオフはそういうことだよね。 増田は何も責任を感じる必要はないし、これが最適だったんだよ。 今回の選択より更に望ましい選択肢は存在していない。 我々の社会は...

    • anond:20191116214556

      結局自分に振られそうになったらうるせえジジイの面倒なんざ見たくねえんだよっていうのが当世風の正義なんだから、堂々と見殺しにでもすりゃあいいのにね しょうもない奴だよ

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