抜群の柔軟性で、炎鵬が粘りに粘って館内をどよめかせた。最後はほぼ180度の開脚。そんな執念も、過去3戦全敗の松鳳山には通じなかった。押しつぶすような右からの上手出し投げで、2敗目を喫した。
あと一歩だった。2度目で成立した立ち合い。相手の出足を逆手に取って右にひらり。前のめりになったところを見逃さず、土俵際まで攻め込んだが仕留めきれなかった。
土俵中央まで押し返され、深い右上手を許すと動けない。左下手を探って抵抗したが「詰めきれなかった。ああなったらどうしようもない。足がついていかなかった」。天敵の壁は分厚かった。
新入幕だった夏場所、勝ち越しをかけた千秋楽で流血の熱戦の末に敗れてから、松鳳山に4場所連続ではね返されている。「うまいっすね。(相手を)正面に置いて、前に前に相撲を取ってくる。落ち着きもある」。冷静さと激しさを兼ね備える、10歳以上年上のベテランに脱帽するしかなかった。
とはいえ、単独トップに立った白鵬とはまだ星の差1つ。下を向くつもりはない。「引きずるような相撲じゃなかったんで。また明日、しっかり取る」。踏ん張って混戦を演出する。