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【大相撲】

惜しかった炎鵬 松鳳山の執念にカンパイ。『完敗』ではなく老雄に敬意の『乾杯』である[北の富士コラム]

2019年11月15日 21時41分

松鳳山の執念に「乾杯」

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◇大相撲九州場所<6日目>(15日・福岡国際センター)

 これだけ上位陣と期待の力士が次々と敗れては、はっきり言えば、この原稿を書く気力もうせてしまう。

 御嶽海なんかは、もはや戦意喪失で宝富士に寄られると何の抵抗もなく土俵を割ってしまった。情けない。実に情けない。これからの大相撲界を引っ張るべき力士がこのありさまでは、お先真っ暗である。

 優勝2度。順風満帆に大関目前まで来たが、今場所ばかりは12勝どころか、本人が目標にしている10勝だって怪しくなってきた。順調に来ただけに、逆境に弱い面をさらけ出している。まぶたの切り傷で死んだ人はいない。死に物狂いで戦ってみたらどうだ。書いているうちに、俺の方が頭にきて興奮してきた。

 それでは、少し冷静になろう。スケールの大きな相撲で評価の高い朝乃山は、けんか四つの遠藤にもろ差しを許し、下手投げで敗れた。前さばきのうまい遠藤に対し、立ち合いから右を差しに出たのがそもそもの間違いであった。

 私なら、立ち合いは突き放しでいったと思う。それからつかまえに出るべきだったが後の祭り。遠藤のうまさが光った一番。元気のなかった遠藤だが意地を見せた。この味は捨てがたい力士である。

 貴景勝もすっかり歯車が狂ってしまった。当たれない、押せない、引く、残せない。全て悪い。先場所は、今場所より状態が悪かったのに12勝も挙げている。今場所は大関に返り咲いて、幾分、気持ちが緩んでいるのかなとも取れる。何とか頑張って白鵬を追ってほしいものだ。大関なんだから。

 それから、何と言っても惜しかったのは炎鵬だ。珍しく立ち合いに注文をつけて変化。図に当たって松鳳山をもう一歩まで追い詰めたが、松鳳山もさるもの。引っかくもの(あまり面白くない)。よく残し、土俵中央まで攻め返した。

 投げの打ち合いになったが、組んでは松鳳山が上だった。炎鵬は股が裂けんばかりに残したが、精根尽きて涙をのんだ。やはり天敵であった。まことに残念な負け方ではあるが、松鳳山の執念にカンパイ。言っておくが完敗ではない。老雄・松鳳山に敬意の乾杯である。

 われながら良いことを言うな。少しキザだったかな。昔、俺が「キザの富士」と呼ばれていたのを知っている人はいまい。冗談冗談。こんなことでも言わなければ、あほらしくてやってられないね。

 きょうは新調したジャケットを着たので中洲に出ようかと思ったが、既にそんな元気はない。早くシャワーを浴び、ルームサービスで飯を食って寝るに限る。こんな場所は早く終わらないかな。

 そうだ、白鵬のことを忘れていた。立ち合いで少し横を向いていたら終わっていた。いったい、どうなったのかとビデオを見たら、明生の左足の親指が返ったのだろう。勝手にひっくり返っていた。労せず、とはこのことだろう。どうやら流れは白鵬に。そんなあんばいである。(元横綱)

 

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