育成2年目右腕の田中優大投手(20)にスポットを当てる。最速150キロの右サイドスローだが、高2までは外野手だった。投手転向から1年でスカウトから評価を受けるまでに成長し、プロ入り。支配下登録へ節目となる3年目へ「制球力の向上」を課題に挙げ、宮崎秋季キャンプで連日過酷なメニューを消化している。(取材・構成=河原崎 功治)
右のサイドハンドから繰り出される球威抜群の直球が武器の田中優。1年目の18年は2軍戦の登板は1試合だけだったが、今季は7試合に登板。計9イニングを投げ14奪三振、防御率1・00とステップを踏んだ。どんな努力があったのだろう。
「今までは上半身だけで投げていた感じ。それがだんだんと下半身を使えるようになった。プロで2年やって、球の見せ方とかも分かるようになったのは大きいんじゃないかなと。場面や状況をしっかりと把握できるようになったのは成長したところかなと思います」
9月に20歳になったばかり。体もまだまだ成長中で、プロ入り後に身長は5センチ伸び、体重は1年で12キロも増えた。
「寮に入ってから、ご飯は食べるようになりました。ウェートも高校の時よりやる回数が増えた。試合の合間に間食を取ったり、自分で意識して軽食を食べるなどしてきました。体も大きくなったと思うし、球(の質)も重くなりました」
昨年に続き、今年も宮崎フェニックス・リーグに参加。秋季キャンプのメンバーにも抜てきされた。昨秋キャンプでは自己最速となる150キロを計測するなど著しい成長を見せたが、今季は急成長した体との向き合い方に悩み、制球が定まらないことが多かったという。
「トレーナーにも『体が成長してるからリリースが安定しない時期だよ』と言われた通り、今年は制球に悩まされました。スライダーも調子いいときと悪いときがあって。調子いいときだとしっかり横曲がりするんですけど、悪いときは縦に落ちたりとか制球も変化量もバラバラ。そうすると捕手も要求しづらいと思うんです。しっかり変化量、コントロールを安定させるのが今の課題です」
チームでも貴重な右のサイドスローとして期待は高い。現状、チーム内で右の横手投げは田原と、今キャンプで挑戦し始めた17年ドラフト1位の鍬原だけ。では、田中優のサイドスローの原点とはどこなのか。
「高校2年生まで外野手をしていて、もともと野手だったんです。でも、チームに投手があまりいなかった。遊びでキャッチボールのときに横投げをしてみたら意外と球が速かったんです。その時は135キロくらいでしたけど、そこから監督に『やってみろ』って言われて。投手を始めたときから横投げだったんです。投手も小さい頃からやってみたいと思っていた。投手でいこうってなったときは結構すぐに受け入れられました」
来季は育成3年目。支配下登録へ節目の年となるが、新たな球種の習得にも努めている。引き出しを増やし、来季を迎えるつもりだ。
「左打者の内角に投げるのが苦手。引っかけてしまうんです。そこを改善しつつ(左打者の)外に逃げるシンカーを投げていきたい。今は練習中なんですけど、もう少しまとまりが出てくればいいのかなと。鋭く速い変化でゴロを打たせたいということで練習しています」
将来的な目標にはクローザーを挙げた。今季支配下登録された堀岡らと近い将来、1軍のブルペンを支えるような力をつけ、フル回転する決意を示した。
「自分の武器は思いっきり投げる、アバウトな投球だと思います。きれいにまとまるというよりも、少し荒れ気味の投球。将来は抑えをやれるくらいまで成長していきたいと思っています」
◆歴代の巨人の主なサイドスロー
▽鹿取義隆 140キロ台のキレの良いストレートと多彩な変化球が持ち味。通算755試合で91勝46敗131セーブ、防御率2.76。
▽角三男(現・盈男) 1年目の1978年に5勝7セーブを挙げ新人王を獲得。翌年のオフにサイドスローに転向し、主に抑えとして活躍。通算618試合で38勝60敗99セーブ、防御率3.06。
▽斎藤雅樹 藤田元司監督のアドバイスでサイド転向後に頭角を現し、89年には日本記録となる11試合連続完投勝利を記録するなど5度の最多勝を獲得した“平成の大エース”。通算426試合に登板し、180勝96敗、防御率2.77。
▽中川皓太 18年途中から肘を下げたフォームに改良。今季は開幕から16試合連続無失点を記録するなど、自己最多の67試合に登板。4勝3敗16セーブ17ホールド、防御率2.37と大車輪の活躍を見せた。
◆田中 優大(たなか・ゆうだい)1999年9月14日、山形・鶴岡市生まれ。20歳。羽黒高2年時から投手、3年春は県大会準V、東北大会8強。3年夏は山形大会8強。2017年育成ドラフト4位で巨人入団。今季はイースタンで7試合に登板し、勝敗なしも計9回4安打1失点、14奪三振。185センチ、76キロ。右投右打。年俸310万円。