「湾湾はネットの自由が好き、壁に登るのは好きじゃない」「ネットの自由がない、壁に登らないといけない所に、誰が帰ると思うの? 全く訳が分からない!」
中国政府が台湾に対する26項目の「優遇措置」を発表した11月4日、中国中央テレビの女性アナウンサーが妙に親しげな口調で「湾湾、回家吧」(湾湾、うちに帰っていらっしゃい)と呼び掛けた。「湾湾」とは中国本土で使われる「台湾」の愛称とのことだが、この動画がネットで広がると、台湾ではたちまち違和感が広がった。
ある女性キャスターはネットで「湾湾は家に帰りません。香香(香港)は家庭内暴力に遭っているし、西西(西蔵、つまりチベット)と新新(新疆)は監視されている。湾湾は西西、新新、香香を見て、死ぬほど恐ろしくなった。だから帰りません」と語った後、「湾湾はネットの自由が好き」と言ったのだ。
確かに「中中」にはネットの自由がないのは、もはや世界中の認めるところだ。
国際的な非政府組織(NGO)、フリーダムハウスが5日発表した報告「2019年ネットの自由」によると、中国は天安門事件30周年や香港の抗議デモを受け、ネットの管理を強化、4年連続でネットの自由への侵害が最も深刻な国となった。
報告では、ネット接続への障害、コンテンツの制限、ネット利用者の権利保護の3点から分析、うち中国はネット利用者の権利保護は0点となった。
人権活動家の胡佳はラジオ・フリー・アジアに「『北京の(ネットの)壁』は『ベルリンの壁』よりもさらに分厚くなった」と語ったという。
中国で使われるソーシャルメディアは、常に当局による監視を受けている。
北海道大学の研究者が9月に中国で「スパイ」容疑で拘束され、11月15日に解放・帰国した事件でも、日本の学者らが真相究明や早期の解放を求め、日中関係改善に逆行する動きだと懸念や批判が広がったが、微信などで話題に上ることはまずなく、関係者は知っていても、書こうとはしない。削除されるだけでなく、書き込むことで何らかのトラブルに巻き込まれる恐れもあるからだ。
こうした高度な監視社会を象徴するものとして、街中に張り巡らされた監視カメラがある。中央通信社の報道によれば、中国はいわゆる「社会信用システム」、つまり全国民を点数化し、様々な利便や罰則を与える制度の推進のため、異常な勢いで監視カメラが増加しているという。
都市部の街頭では、交通ルールに反した人を監視カメラが撮影し、違反者の顔を大型ディスプレーが映し出す。