ほぼ日刊イトイ新聞

2019-11-15

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・まだ、ラグビーのことを考えたり話し合ったりしてます。
 ぼくにとって、それなりに大きな
 「文化的なインパクト」があったのだと思います。

 ラグビーの世界でのお金に関係する考え方も、
 このごろの「スポーツとお金」についての価値観と、
 ちょっとちがっているよなぁ、と気づきます。
 日本のスポーツファンがそれなりに詳しい
 プロ野球での年俸のランキングを調べると、
 上位100人くらいまでは、1億円を超えています。
 最上位の選手たちが、どれほどのお金を稼いでいるかも、
 新聞記事になったりもしますから、
 わりと、ふつうの人も知っていたりするものです。
 その金額に見合っただけの価値がある、とされています。
 そういう大きな金額を得ることができる選手は、
 「ドリーム」を実現したと讃えられもします。
 ぼくは、これはこれでたいしたもんだと思っています。
 選手の評価が、金銭的な富と直結していることは、
 価値がわかりやすいし、選手の励みにもなるでしょう。

 ところが、ラグビーには、この価値体系がありません。
 ぼくのお手軽調査ですが、世界トップクラスの10人が、
 日本のプロ野球選手の100位くらいの年収です。
 赤の他人のぼくが、そんなことを比べるのも、
 失礼な話のような気もするのですが、
 ラグビーの選手の活躍の目的は、どうやら、
 たくさんのお金を得ることと繋がっていないと思えます。
 「がんばって、稼ぎたい」という選手には、
 ラグビーは向いてないジャンルのスポーツのようです。
 それとはちがう動機や目的で、選手たちは
 ハードで献身的なプレイをやっているのでしょう。
 もしかしたら「稼げないのに、どうして?」と、
 悪意もなく質問する人もいるかもしれません。

 ぼくは、こういう価値観のちがいに、
 ひとつだけの答えを探す必要もないと思っています。
 「なんでもお金で計れるわけじゃないよ」と、
 昔からよく言われてきたことばが、
 「ほんとにそうかもしれない」と感じられるなら、
 それはそれで、すごいトライなのだと思うのです。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
「人として尊敬される選手」という存在は、最強だよね。


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