中国経済、GDP6%成長とは思えない「ヤバすぎる実態」

巨大国家の運営はかくも難しい…
近藤 大介 プロフィール

禁断の「発表」が示すもの

さて、毛司長が農業に続いて発表したのは、工業に関する統計だった。

「今年第1四半期から第3四半期までの全国の規模以上の工業増加値は、前年同期比で5.6%の増加だった。企業形態別には、国有企業が4.7%増で、民営企業が6.9%増、外資・香港マカオ台湾企業が1.4増だ。3大部門で言えば、鉱業が4.6%増、製造業が5.9%増、エネルギー分野が7.0%増だ。

また、1月から8月までの全国の規模以上の工業企業は、総額4兆164億元の利潤を達成した。前年同期比では-1.7%だった」

工業に関しては、5月から6月にかけて、広東省の製造業地帯を見たが、5.9%も伸びているような実感は湧かなかった。ある広州の電器メーカーの社長は、次のように述べていた。

「繊維(衣料)工場のような低付加価値製品を作る工場は、どんどんベトナムなどに移転しつつあり、空洞化が加速している。携帯電話などの高付加価値製品を作る工場は、広東省に残っているが、部品問題に悩んでいる。下請けの部品メーカーの資金繰りが悪化し、部品を正常に供給できなくなってきているのだ」

〔PHOTO〕gettyimages

また、工業企業の利潤が、前年同期比で-1.7%と、マイナス成長になったことが気になるが、建国70周年記念日(10月1日)の前日、浙江省である「事件」が起こった。

9月30日、浙江省統計局は、ホームページ上で一瞬だけ、「1月~8月の浙江省の工業企業の利潤の増加速度は全国よりも高い」という表題の発表をアップしたのだ。察するに、翌日は晴れがましい70周年の建国記念日ということで、つい「発表してはならないこと」を上げてしまったのだろう。

 

すぐにホームページ上から削除されたが、次のような内容だった。

〈 今年1月~8月の浙江省の規模以上の工業企業利潤は、前年同期比で2.8%増だった。これは全国平均の-1.7%よりも4.5ポイント高い。

全国の東部の10省市の中で、浙江省の利潤の増加速度は海南省の12.9%、福建省の10.4%に次いで良好である。北京市-14.4%、天津市-5.8%、河北省-11.2%、上海市-19.6%、江蘇省-3.5%、山東省-13.0%、広東省-0.4%であり、それよりも良好である 〉

ここには、中国経済を牽引する北京、天津、上海の悪化ぶりが如実に表れている。特に、中国で最もGDPが高い都市である上海が、前年同期比で2割近く減少しているのは、由々しき問題だ。