​誰でも見つかる自分の才能の探し方

小さい頃、いっぱい本を読んだら上手に文章を書けるようになると言われたことはありませんか? bar bossa店主・林伸次さんによるとそれは嘘だろうとのこと。そんな「文章を書くこと」から、人間の才能について、今週は考えます。

本をたくさん読んだら文章が上手になる、は嘘?

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

小さい頃、「とにかく本を読みましょう。良い文章を書くには本を読むことが一番重要です」といったことを言われませんでしたか? 僕、両親が共働きで、小さい頃は両親の友人が勤めている図書館に何時間も預けられて、図書館中の本を読み尽くしてしまったり、母が絵本の会社に勤めていたので、小さい頃から絵本に囲まれてたりしたんです。だからいつの間にか文章を書くのが好きになって、文章を書くのを仕事にしたいな、なんて考えてたんですね。

でも、文章が上手い下手って本を読んだ数では決まらないんです。燃え殻さんって本当に文章が上手いし、Twitterに書かれる140文字は本当に天才的で、いつも「すごいなあ」って思うんですね。でも燃え殻さん、ほとんど本なんて読んでないそうなんです。村上春樹も一冊も読んでないそうです。やっぱり読書、関係ないかもしれませんね。例えば数学と音楽とある種のスポーツって、遺伝で決まる要素がすごく大きいそうです。それを踏まえても、読書量だけで文章力が決まると考えるほうが無理があるのかもしれません。

起業して成功した人や、何か作品を発表して成功した人たちに、「才能って何だと思いますか?」っていうのを、僕、カウンターでよく質問するんですね。ほとんどの人が「運とタイミングです」って言います。成功者が後で色々と成功した理由を語って、それが記事になったり本になったりするけど、「全く同じことをしても成功しない。成功した人は運が良かったっていうのが大きい」って言います。

そして、その運を引き寄せるには、「何度も打席に立つしかない」ってみなさん言います。まあほとんどの人が一度起業して失敗したり、一度公募に小説を送って選ばれなかったりしたら、あきらめてしまうそうなんです。

そこでへこたれずに、「じゃあ次はどうしようかな?」「前のは何が悪かったのかな?」と考えて、何度も打席に立っていると、いつかヒットやホームランが出るというわけです。確かに「打席」と考えると納得ですよね。野球で打席に立てるのって一回だけじゃないですからね。三割打者でじゅうぶんすごいんですから、何度も三振があって当然です。一試合にヒットが1本でも良いほうかもしれません。

才能があるは「好き」ということ

一方で才能って「その人の性格」でもあるらしく、会社で指導役をしている人や、クリエイターに寄り添う編集者のような人に言わせると、「才能がある人はみんな素直に他人の意見を聞く」だそうです。周りの人からの忠告を素直に「そうか。じゃあ試してみよう」っていう人が必ず伸びるそうです。要するに「柔軟性」でしょうか。

あるいは才能って、同じことに「ずっとずっとこだわれる力」っていうのも聞きます。ほとんどの人が途中で「もう疲れた。こんなもんで良いだろ」って感じで投げ出しちゃうらしいんですね。スポーツでも作品でも会社でも、「もう良いか、このくらいにしとこ」って感じで終わるそうなんです。そこをいつまでもいつまでもくらいついて、こだわってこだわって、そのことに集中し続けられるのを「才能がある人」と言うらしいんです。

それって要するに、その人が「一番好きなこと」だからなんですよね。まあみなさん、それぞれ「好きなこと」ってあると思うんです。例えばこの連載も「性愛」についての話ってよく読まれるんですが、本当にプロと言いますか、それが職業の人って、とにかく「エロ」が大好きで朝から晩までエロのことばっかり考えて、こだわってこだわって、良い作品を作ります。外国語学習とか、食べることとかも、本当に好きな人はのめりこんで行きますよね。ずっとずっと「そのことに集中していられる力」っていうのが、どうやら「才能」らしいんです。

そしてそういう才能って、どうやら誰にでもひとつやふたつはあるようでして、例えば先日ある方が、「会社に話が合わない人が3割、話が合う人が7割」って仰ったんです。その方、コミュニケーション能力が高くて、みんなに好かれるタイプなんです。でも「合わない人が3割」って言うので、僕はびっくりしました。というのも僕、「話が合わない人、苦手な人」って100人に1人くらいなんです。誰とでも楽しく話ができます。

自分は決してバーテンダーに向いていると思ってなかったのですが、それってもしかたら才能かもしれませんよね。だって、誰かと楽しく話すのって、僕にとっては全く苦じゃないんです。ずっと続けられるんです。そういう、オリンピックに出られるような才能ではない、でも意外と他の人にはない能力というのも、才能のひとつのような気もします。でも、才能が誰にでもあったとしても、みんなそれに気づかなかったり、うまく使わなかったりするようなんです。そして、自分の才能とは違うところに手を出してしまいます。

例えば、社交性がないのに接客をがんばっている人はいませんか? 他にも、外国語が嫌で嫌でどうしても覚えられないなら、あきらめて自分が得意なことを探した方が良いです。好きなことが才能につながるのだから、好きなことを全部書きだして、そこから自分ができることを探して見はいかがでしょうか。自分だけの「これ!」に気づいたら、そこだけを伸ばして、こだわって(好きだからこだわれますよね)、誰にも負けないっていうのが一番のようですね。あなたにも才能、きっとあるはずです。

林伸次さん、はじめての小説。

ケイクス

この連載について

初回を読む
ワイングラスのむこう側

林伸次

東京・渋谷で16年、カウンターの向こうからバーに集う人たちの姿を見つめてきた、ワインバー「bar bossa(バールボッサ)」の店主・林伸次さん。バーを舞台に交差する人間模様。バーだから漏らしてしまう本音。ずっとカウンターに立ち続けて...もっと読む

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    コメント

    shigekey "ずっとずっと「そのことに集中していられる力」っていうのが、どうやら「才能」らしいんです。" |林伸次 @bar_bossa | 約1時間前 replyretweetfavorite

    at_saaa 林さんのバーに行ってみたい https://t.co/hjytj4PONF 約1時間前 replyretweetfavorite

    t_take_uchi 誰でも見つかる自分の才能の探し方|林伸次 @bar_bossa | 約1時間前 replyretweetfavorite

    les_trooper 誰でも見つかる自分の才能の探し方|林伸次 @bar_bossa | 約2時間前 replyretweetfavorite