JR西日本が兵庫県明石市に大規模な新幹線の車両基地を計画していることが14日、分かった。その背景には、リニア大阪延伸を見越したダイヤ増発に加え、近年多発する豪雨や南海トラフ地震などの災害に備える危機管理がある。関係者によると、現状で大規模な車両メンテナンスができるのは博多総合車両所(福岡県)しかなく、一部区間が不通になった場合は車両の融通が制約される。新基地が整備されれば、柔軟なダイヤ運用が可能になる。一方、明石市には新駅設置など周辺の一体開発により、人口増など地域活性化に弾みをつけたい思惑がある。(藤井伸哉、小西隆久)
■拠点増で災害リスク分散
1995年の阪神・淡路大震災では、神戸、西宮、尼崎市など8カ所で新幹線の高架橋が落下し、柱約700本が損壊。新大阪-姫路間は不通となり、運転再開は81日後になった。2011年の東日本大震災や16年の熊本地震でも東北、九州両新幹線で被害が出た。
現在、西日本で高架などが被災した場合、博多で点検中の車両は新大阪への回送が難しくなる。明石に基地ができれば、姫路-博多間で災害があった場合も、被災地以外での部分運転や運行本数の確保が容易になる。
水害対応の利点もある。10月の台風19号による豪雨の影響で、長野市にある長野新幹線車両センターが被災。全体の3分の1に当たる10編成120両が水没し、JR東日本と西日本が廃車の方針を示した。ダイヤへの影響も大きく、被災前に比べ、運転本数が約1割減った。
明石市の候補地は、兵庫県の「千年に一度」の大雨想定による河川洪水で、ほとんどが50センチ未満か浸水が想定されない区域。50センチ以上3メートル未満の場所もあるが、車両基地は5メートル程度の盛り土を予定し、水没を防ぐ。
7年連続で人口増を続ける明石市にとっては、固定資産税や法人税の増加、周辺開発によるさらなる人口増も期待できる。
一方、懸念されるのが地域住民の理解だ。開発エリアは、稲作や特産野菜など近郊農業の優良な用地で、長期的に農業振興を図るため県が指定する農業振興地域。市は一部を原則転用禁止の「農用地区域」に指定しており、開発には農業者や国、県との調整や許可が欠かせない。
車両基地では深夜作業もあり、騒音などへの対策も必要になる。
明石市の関係者は「新駅や周辺再開発も同時に行う見込みで、地域活性化につながる利点を評価してもらいたい」と話す。