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 安倍首相は数々の疑問に、いまだ何ひとつ、まともに答えていない。このまま幕引きとするわけにはいかない。

 首相主催の「桜を見る会」について、政府が来年度の開催中止を決めた。第2次安倍政権発足以降、招待者が膨れあがり、特に首相の後援会関係者が大勢招かれていることに公私混同との批判が強まっていた。急な中止決定に、追及の矛先を鈍らせる狙いがあるのは明らかだ。

 政府はあいまいな招待基準や、不透明な招待プロセスなどを見直したうえで、再来年度の復活をめざす。1952年から続く行事であるが、各界で「功績・功労」があった人が対象という会の趣旨に立ち返り、この際、長年の慣行を見直し、今の時代にふさわしいものにしてもらいたい。

 しかし、その前にやるべきことがある。税金で賄われる公的行事の私物化ではないかと指摘される安倍政権下での実態を、徹底的に解明することだ。

 菅官房長官は一昨日、午前の記者会見では「首相枠、政治枠という特別なものはない」と否定しながら、午後の会見では一転、首相ら官邸幹部や与党に推薦依頼を出していたことを認めた。政治経験の長い菅氏が事情を全く知らなかったとは信じがたく、不誠実きわまる。政治家が推薦した人数についても、名簿が廃棄されていてわからないと繰り返すばかりだ。

 首相は国会で「招待者のとりまとめには関与していない」と答弁したが、桜を見る会を含む観光ツアーの案内が、事務所名で地元の有権者に配られていたことが明らかになっている。「首相自身は知らなかった可能性がある」という内閣官房の説明は納得しがたいが、そうだとしても監督責任は免れない。

 毎年、会の前夜には、都内の高級ホテルで、首相も出席して後援会の懇親会が開かれていた。野党は、会費5千円では費用を賄えない、首相が関係する政治団体の政治資金収支報告書に一切記載がない、などとして、公職選挙法政治資金規正法に違反する疑いがあると主張する。適切に対応しているというのであれば、首相自身の口からきちんと説明すべきだ。

 ところが、首相は国会では、招待者の個人情報を口実に具体的な答弁を拒み、来年度の開催見送りについても「私の判断で中止した」と一言、記者団に告げただけだった。

 首相は先日の2閣僚の辞任に際し「一人一人の政治家が自ら襟を正し、説明責任を果たすべきだ」と語った。であるなら、率先して、野党が求める予算委員会の集中審議に応じ、その言葉を実行に移すべきだ。

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