「個性を無視してペーパーテストだけで判別する受験戦争は子どもに悪影響。受験がないヨーロッパのように、大学の門戸はもっと開かれているべきだ」
そういった主張をする人は知っているだろうか。「受験がなくてだれでも大学に入れる」と言われがちなヨーロッパに位置するドイツで、3浪している人がいることを――。
日本は「大学に入る=受験」というイメージが強いから、「受験がない=かんたんに大学生になれる」と思いやすいのかもしれない。
最初はわたしも「受験がないなんて楽勝だなぁ」なんて思っていたが、そんなわたしに対しドイツ人の友人は、「学校でちゃんと勉強してないと卒業できないし、成績が悪いと大学の学籍をもらえないから、楽ではないと思うよ」と苦笑していた。
たしかにドイツには、日本的な受験はない。しかし、受験に代わる3回のふるい分けがある。ドイツはただ、日本とはちがうベクトルで『選別』しているにすぎないのだ。
ドイツでは、教育制度は州の担当である。そのため就学期間が州によって異なるし、最近ではいろんなタイプの学校が増えてきている。そのあたりを詳しく書くと日が暮れるので、あくまでざっくりと、『大学入学までの3段階の選別』についてお伝えしたい。
ドイツの教育制度は基本的に、小学校(4年制)卒業時点で進路を決める分岐型だ。小学校卒業後の進路は主に3パターンで、誤解を恐れずに日本式に例えればこうなる(極端に表現していることはお許しいただきたい)
大雑把にいえば、中卒・高卒・大卒コースである。実科学校でいい成績をとって条件を満たしてギムナジウムに編入、そこから大学進学という路線変更も可能だが(実際友人はそれを果たした)、大学進学したいのであれば小学校卒業時点ですでに『ギムナジウムに進む』という第1選別をクリアするのが王道である。
とはいえ小学生時点での学力差なんてたかが知れているので、学校選びには親の学歴が影響しやすい。つまり、中卒の親をもつ子どもが大学に進学するのはハードルが高いのだ(これには批判が根強くさまざまな対策がとられてきてはいるがそれは割愛)。あと、移民背景がある家庭の子は、ドイツ語能力が低いからか、ギムナジウム進学率が低いという不利な現実もある。
ドイツ連邦局によれば、2016/2017年度(10月で年度が変わるのでこういう表記になる)、ギムナジウム進学者は40.5%。
日本では9割以上が高卒なので「とりあえず大学進学」が可能であり、それが批判されることも多い。しかしドイツでギムナジウム以外に進めば、「とりあえず大学進学」すらできない子が一定数生まれるのだ。