高島屋は再開発効果で日本橋店の入店客数が大幅に増加した(撮影:尾形文繁)
週刊東洋経済 2019年6/29号
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「この手口なら反対派に気づかれないように再開発を進めることができる。これが許されるなら何だってできてしまう。バブル時代の手荒なやり方より、よっぽど有効かもしれない……」

長年、再開発に関わってきた企業幹部があきれ顔で言う。その手口とは、「借地権者の水増し」だ。

5人以上が共同で市街地再開発を行うには地権者の3分の2以上の同意が必要だ。地権者とは、土地の所有権を持つ所有者と、土地を借りて建物を建てる権利を持つ借地権者のこと。それぞれ3分の2以上の同意が求められる。

同意者が足りなかったら同意する借地権者を水増しすれば、3分の2以上を確保できる──。実は都内一等地でこの手法が使われたと疑われる場所がある。

その場所とは、東京都中央区日本橋2丁目だ。昨年9月に開業した商業施設「日本橋高島屋S.C.」を含む一帯である。再開発の主な担い手は、高島屋のほか、同区域にオフィスビルを持つ太陽生命保険、そして日本橋に本社を構えその周辺で多くの再開発を手がける三井不動産だ。

全容を振り返りながら、その手法を分析していこう。

80平方メートルほどの土地に30社の借地権者が登場