著者の茂木氏は今回のご著書で大東亜戦争のスケールの大きい必勝の戦略をつぶさに説明して「多数の軍人があの戦争は無謀だった」と明言しているのに、ではなく、明言しているのはどうもおかしいのではないか、というのが著者の立場であるので、ミスター・ディグは最初から見当はずれなことを言っている。
また、「歴史学者ではないらしく」と言っているところを見ると、本人は歴史学者らしいが、その歴史学者が、戦勝国史観、左翼史観の呪縛にはまってしまい、まともな歴史を書いていないと著者は主張しているので、之も見当外れである。
たとえば、JB355号という米陸海軍合同委員会提出の日本本土爆撃攻撃計画があるが、之を昭和16年7月23日に、ルーズベルトはOKのサインをしている。B15長距離爆撃機150機と戦闘機350機を中国の基地から、東京、大阪、名古屋、小倉などを爆撃する計画で、10月には実行の予定であった。真珠湾攻撃の2か月前だ。もちろん中国機の攻撃に見せかけるのだが、作戦、パイロットのほとんどは米国製、偽装した対日先制攻撃計画だった。
この計画は、イギリスが危なくなり、B15をそちらに急遽回さなければならなくなったために、10月には実行できなかった。しかし、明確な対日攻撃実行計画であった。
この事実が、1970年にはアメリカの公文書館で情報開示された。この歴史学者君、こういう史実を 少しでも発掘して日米戦争の資料として使ったとでもいうんかい。
それどころか、この事実は真珠湾50周年の1991年にアメリカのABC放送で大きく報道された。それでも、ミズター・ディグは、之を研究に取り入れもしなかったのだろう。さらに、2006年には、アラン・アームストロングが「幻の日本爆撃計画」という本を出している。これも無視、というのが「歴史学者」というわけである。
なお、JB355作戦は、大統領特別補佐官のロークリン・カリーが計画推進者で、陸海軍にこれを持ち込んだのであるが、かれは戦後コミンテルンのスパイであることが発覚して、南米に逃亡している。コミンテルン陰謀説批判をしているこの「歴史学者」は、こういうことを知っているんかね。もはや、「ヴェノナ文書」によって、コミンテルン・スパイと本国との通信記録はほとんど解読されているということも知らない、無知な「歴史学者」だからこそ、無知の上塗りにしろうとをなめた批判をしているということだろう。
この歴史学者に一つだけ聞きたいのは、ソ連がドイツと戦うことができたのは、アメリカから航空機1万5千機、戦車7千両、対空砲8200台、トラック37万台他という膨大な軍事援助のおかげであり、この援助ルートの中心である、インド洋を日本が押さえたら、まず99%ソ連の勝利はなかった、というくらいのことは知っているのかね。それを実行できる戦略が、「歴史学者」がけなし、馬鹿な軍人もだめだと言っていた、「対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案」であるということだ。これは実行可能であったし、効果抜群であったことを立証しているので、本文を読んでみることですな。くれています。軍令部の作戦に違背した山本五十六(日本から見た)戦犯論が納得できます。
かつて林房雄氏の「大東亜戦争肯定論」という名作があります。近くは鈴木敏明氏の「大東亜戦争はアメリカが悪い」という名著があります。
茂木氏のご著書は前2作とは趣が異なりますが、大東亜戦争を論じた本としては、前2冊に勝るとも劣らないインパクトのあるご本であります。大東亜戦争から学ぶべきことは沢山あります。しかし、その割には読むべき本が少ない。今手に取ってみますと、こんな現実もあったんだ、と啓発されることが多々あります。
大東亜戦争開戦記念の機会にこのご本を座右におかれれば、大東亜戦争の教訓が風化することなく伝えられると信じます。広く江湖にお勧め申し上げます。
- 単行本(ソフトカバー): 256ページ
- 出版社: ハート出版 (2018/12/1)
- 言語: 日本語
- ISBN-10: 4802400713
- ISBN-13: 978-4802400718
- 発売日: 2018/12/1
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