◇12日 大相撲九州場所3日目 白鵬〇<すくい投げ>●朝乃山(福岡国際センター)
これを「気迫」と見るか、「うまさ」と見るのか、それとも「なりふり構わず」なのか。そのすべてが詰まった一番に見えた。右から痛烈に張り手を見舞う。右の相四つにもかかわらず、左四つでも取れる白鵬は朝乃山の裏をかいて左差し。すぐさま右もねじ込むと、がむしゃらに前に出た。とどめは朝乃山に覆いかぶさるようなすくい投げ。
「まあ、考えて相撲を取りました。(2日目に黒星を喫していて)落とせないというね。(朝乃山は)勢いがありますからね」。初日にいきなり鶴竜が休場し、豪栄道も2日目から休場。上位がピリッとしない場所で、自身にもカツを入れるかのような内容だった。
2日目に大栄翔へ配給した金星。この日の朝稽古後に「そうねえ、何だろうねえ…。昔からっていうのかな。力を抜くというか、稽古場のクセというのかな。そういうものが出てしまった。決して油断はしてなかったんですけど」と話していたが、「『大丈夫だと思うけど』が、きのうは大丈夫じゃなかった。その辺を頭に入れて」とギュッと気持ちを引き締めて出直した。
1941年5月24日に昇進を決めた第36代横綱羽黒山は、53年9月17日に引退するまで12年4カ月、地位を守った。07年5月30日に昇進を決めた白鵬は、秋場所千秋楽の翌日に、その最長記録を塗り替えた。
朝乃山を下したことで全勝力士は西前頭9枚目の豊山まで下がることとなった。それでも最後に笑うのは自分だと、長年の経験が言っているはずだ。