大リーグのサイン盗み疑惑は枚挙にいとまがないが、「独創的」だったのは1973年7月のブルワーズだ。球団マスコット「バーニー・ブルワー」は味方の攻撃時、中堅奥の控室に陣取っていた。敵地で3連敗したレンジャーズのハーゾグ監督によれば、バーニーは双眼鏡を持った隣の球団職員から捕手のサインを伝えられると、「変化球のときは狂ったように踊り、拍手している」。さらに、白い手袋の着脱で打者に球種を知らせていたという。
地元紙ミルウォーキージャーナル(電子版)によれば、同監督の指摘により、ホーラー審判は双眼鏡の男を退場処分にし、バーニーには常に手袋を外しておくよう命じた。
2010年5月、フィリーズの“赤鬼”ことマニエル監督(元ヤクルト、近鉄)は、迷言で疑惑をけむに巻いたこともある。救援投手が外野ブルペンから双眼鏡でサインをチェックし、電話でベンチに伝達していた姿が中継テレビ局で抜かれると、赤鬼は「サインを盗もうとなんかしていない。盗みたいかって? 可能ならばイエスだ。だが、サインは盗まない」と語り、周囲の首をかしげさせた。
当時はおとがめもなかったが、今回のアストロズが2017年にサイン盗み専用のビデオカメラを設置していたとの疑惑は、そうもいかない。大リーグは今季開幕前、ビデオカメラなどを用いたサイン盗みについて規定を変更。マンフレッド・コミッショナーは17年、「今後はドラフト指名権のはく奪などもあり得る」と、サイン盗みの厳罰化を明言していた。
大リーグ機構は12日、調査に乗り出すと発表。大リーグ公式サイトによれば、アストロズのルノーGMも「詳細の判明を願っている。われわれの偉大な選手たちは正しいプレーをするし、われわれも球団として同様の(正しい)行動を身上としている。大リーグの規則は順守する」と協力を誓った。