侍ジャパンが上回っているのがプロとしての経験値と地の利だとすれば、米国が勝っていたのは相手の情報量だろう。
「先発(高橋礼)についてはかなり(映像を)見てきた。(他の投手も)インサイドに速く、外に緩くという配球なのはわかっていた」
大野雄から右翼席に運んだジョーダン・アデルの言葉が、豊富な情報量を感じさせた。彼は米国代表最年少の20歳で、2年前にエンゼルスからドラフト1巡目(全体10位)で指名された。トラウトや大谷に続くトッププロスペクトとして、マイナーリーグで修業中だ。
この大会に大リーガーは参加しておらず、メキシコやベネズエラなど中米勢は、国内リーグの選手を中心にチームを編成。米国は「元」よりも「未来」の大リーガーに重点を置いた。近い将来に目が飛び出るような大型契約を結ぶ選手は何人かいるだろうが、現時点のキャリアを考えれば、日本が格上だった。ただし、マイナーリーガーゆえに日本が持つ米国の情報は基本的なものに限られるが、その逆はそうではなかった。
「この大会では普段、対戦していない選手と対戦しなければならない。NPBのデータではないが、こちらのスカウトがもってきたリポートはある。彼らが集めたデータに基づいて、研究している」
ブローシャス監督が言及したデータは、守備陣形に顕著に表れた。4番の鈴木には三遊間に3人守らせ、5番の吉田正には一、二塁間に3人を置いた。万人共通のセオリーより個別のデータ。日本にも普及したトラックマンの膨大な情報を、米国は入手していたと見ていいだろう。
「きょうの(米国の)投手はシンカー系が多いので、できるだけ有利なカウントをつくり、ゴロを打たせるよう指示した」(ブローシャス監督)。その策をしのぐ対応力をもつ鈴木と浅村で奪った3点では届かず。経験値と地の利が、米国流最新のデータ野球に敗れた試合だったのかもしれない。