あなたも狙われている? サイバーセキュリティに関して知っておくべき「7つの脅威」

ハッカーの脅威は他人事であるとは考えていないだろうか。ところが、実はわたしたちの身近なところにも、情報漏洩のリスクやハッキングされる危険性が潜んでいる。こうした被害に遭わないために、知っておくべき「7つの脅威」について紹介しよう。

USB

MYKHAILO POLENOK/EYEEM/GETTY IMAGES

ニュースの見出しを飾るサイバーセキュリティ上の脅威といえば、大規模なデータ漏洩や、金銭を要求するためにコンピューターを乗っ取るマルウェアなど、特定のものに限られている。しかし、あまり知られていないサイバー攻撃に警戒しておくことも重要だ。

あまり知られていない脅威は、iOSの修正不能なバグに並ぶほどの注目を浴びることはないかもしれない。だが、データやプライヴァシーの面で、やはり何らかの深刻な被害をもたらす恐れがある。わたしたちが警戒すべき脅威とその対策について、ここで紹介していこう。

1)危険が潜むUSBメモリー

小さなUSBメモリーは一見すると、そこまで危険には見えないかもしれない。だが、こういった携帯型のドライヴが大きな脅威を媒介することもある。なかにはコンピューターに接続されると同時に多大な被害を与えることを目的として設計されたものもあり、そういったものはとりわけ危険だ。出所に絶対の確信をもてないUSBメモリーを自分のコンピューターに接続することには、極めて慎重になるべきである。

たとえ、接続と同時に何らかのウイルスを感染させるようにプログラムされたものでなくとも、USBメモリーはメールの添付ファイルなどになりすましたウイルスを容易に媒介してしまう可能性がある。実験によると、出所不明のUSBメモリーに遭遇した場合、多くの人が好奇心に負けてしまうという結果が示されている。常識を働かせた行動を心がけよう。

このようなUSBメモリーを介した脅威への対策としては、警戒心をもつほかにも、一般的なルールを守ることが有効だ。コンピューターのOSを常にアップデートし、さらに効果的なセキュリティツールをインストールしたうえで、アップデートした状態を維持しておくことだ。USBメモリー上のファイルの安全性に確信がもてないときには、何よりもまずウイルススキャンを実行したい。

2)“ゾンビ化”したアカウント

目まぐるしい変化のなか、あらゆるものがつながり合っている現代。ソーシャルメディアや語学学習、職探しなど、どのアプリやウェブサイトを使っていたかを忘れてしまうことは日常茶飯事だろう。しかし、ほこりをかぶった状態で放置しているアカウントが増えるほど、ハッキングされる可能性は高まっていく。

関連記事情報流出の危険性がある「放置アカウント」、いますぐ削除する2つのステップ

こういった休眠アカウントは、ただスマートフォンから関連アプリをアンインストールして終わりにするのではなく、時間をとってアカウントそのものを削除することが重要だ。アカウントを削除しておけば、たとえいずれかのサーヴィスでデータの漏洩が起きたとしても、自分のデータがその被害を受ける恐れはなくなる。

また、Facebookと連携しているデートアプリや、Googleアカウントを登録しているメールアプリなどのように、メインのアカウントと連携しているサードパーティのアプリやサーヴィスについても、定期的に見直したほうがいいだろう。こういった連携が多いほどハッキングの標的になりうるものが増えるため、日常的に使用していないものについては定期的に連携を解除したり、アカウントを削除したりすべきだ。

3)信頼できないブラウザー拡張機能

適切なブラウザー拡張機能を使えば、日常的に使用するウェブブラウザーに便利な機能を追加することができる。しかし、こういった拡張機能もまた、ほかのソフトウェアと同様に入念な下調べが必要だ。なんといってもブラウザー拡張機能は、その気になればユーザーのネット上の行動を何もかも把握できてしまう特権を有するからだ。

有害な拡張機能をインストールしてしまうと、自分の閲覧データを売られたり、ポップアップ広告がしつこく表示されたりするようになったり、望まない別のソフトウェアをインストールされたりする恐れがある。このためインストールするブラウザー拡張機能は最低限にとどめ、よく知っていて信頼できるもののみ使用することをお勧めする。

安全な拡張機能の見分け方は、安全なアプリの見分け方と同じだ。開発者の経歴を調べたり、要求してくる許可の内容をチェックしたり、ほかのユーザーによるレヴューを読んだりして、本当に有用な拡張機能だけを使うようにしたい。

4)SNSと連携した怪しいクイズ

家族や友人がFacebook上でクイズに答えて、自分はホグワーツ魔法魔術学校のどの寮に向いているか、あるいはどのセレブリティに近いタイプかといった結果を公開しているのを目にしたことがあるだろう。このようなクイズは無害で楽しそうに見えるかもしれない。確かにそういうものもあるのだが、なかにはユーザーが意識せずに提供する個人データの収集を目的としているものもある。

こういったクイズは、答えた本人やその友人についての詳しいデータを蓄積するために利用可能で、実際そのように利用されてきた。収集されるデータは、クイズの答えそのものだけではなく、連携したFacebookアカウントに保存されているその他の情報も含まれる。

このような楽しいクイズに答える際には、“最初に住んだ家があった道の名前”や、“ペットの名前”といった、個人データを尋ねる質問がどれだけあるかということにも注意しよう。何らかのかたちでなりすましに利用される可能性があるからだ。

また、最近人気が広がっている“老け顔”アプリ「FaceApp」のように、個人情報や写真の提供を求めてくるものや、ソーシャルメディアのアカウントとの連携を要求してくるものにも注意が必要だ。自分がどの大統領に近いタイプかを知ることに、そこまでのリスクを負う価値はない。

関連記事老け顔アプリ「FaceApp」への過剰反応は、“もっと大きな危険”を覆い隠すことになる

5)個人情報につながる写真の投稿

お気に入りのソーシャルメディアに写真を投稿することは、決して悪いことではない。だが、公開しようとする写真からほかの人がどのような情報を特定できるかを、もう一度よく考えてからにしよう。自宅や職場の場所に関する情報については、とりわけ注意が必要だ。

InstagramやFacebookをはじめとする多くのアプリは、写真に組み込まれている位置情報を自動的に削除するようになっている。しかし、「Google フォト」など一部のアプリについては、ファイルに埋め込まれた位置情報のデータが、写真を共有したあとにも残る場合がある。さらに、撮影時の位置情報を維持するか否かにかかわらず、ソーシャルメディア上でのチェックインに関連づけられた写真には、その位置情報が改めて追加される可能性がある。

これはなぜ危険なのだろうか? 職場や住所の情報は、なりすまし詐欺を行ったり、オンラインアカウントのセキュリティ用の質問に答えたりする際に役立つ可能性がある。さらに、できれば会いたくない人物があなたを直に訪ねてこようとする際に利用される可能性もある。公開された写真から把握できる個人情報は、少ないほど好ましいというわけだ。

6)スマートホームを利用した覗き見

家庭ではスマートホーム化の動きが進んでいる。しかし、ハッカーやマルウェアの販売者にとってみれば、これは標的にできるまったく新しいデヴァイスが加わったということでもある。標的にされると、玄関が施錠できなくなったり、自宅のセキュリティカメラの映像を望まない相手にまで見られたりする可能性がある。

スマートホームの安全性を確保する対策は、購入するデヴァイスの選択から始まる。できる限り知名度が高く、定評があり、ハードウェアにおいて堅実な実績を有するブランドだけを選ぶべきだ。さらに購入後は、スマートホーム用デヴァイスだけでなく、そのすべてのゲートウェイとして機能する自宅のルーターについても、常にソフトウェアをアップデートしておこう。定評のあるスマートホーム用デヴァイスのほとんどは、自動的にアップデートを実行するようになっているので、それも信頼のおけるブランドにこだわる利点と言えるだろう。

スマートホーム用のデヴァイスやアカウントにパスワードが必要な場合、初期設定のまま使用し続けるのは避けるべきだ。代わりに、ほかのアカウントに使用していない、長くて推測しにくいパスワードを設定し、さらに2要素認証がある場合は予防効果を高めるために有効化しておこう。

7)危害を及ぼす充電ケーブル

ガジェットに付属されてくる標準の充電ケーブルは、充電したり、必要に応じて音楽を同期したりすることを目的に設計されている。しかし、外見上はそれに非常によく似ていながらも、はるかに多くのことができるように特別に開発された充電ケーブルも存在する。

リンク先の記事で紹介されている偽のLightningケーブルを見てほしい。大量生産も可能となっているこのケーブルは純正品にそっくりだが、これをデヴァイスに接続すると、ハッカーによる遠隔アクセスが可能になるのだ。

不正に細工されたこのケーブルをユーザーが接続し、「このコンピューターを信頼しますか?」という警告が表示された際に「信頼」をタップするだけで、遠隔アクセスが可能になってしまう。この警告自体は通常も表示されるので、何のためらいもなく同意してしまう恐れが大きい。

対策としては、デヴァイスに付属するケーブルや、信頼できる入手先からのケーブルのみを使用することだ。これはガジェットの健全性を保つために普段から守っておくべきことでもある。またUSBメモリーと同様に、身の回りにあるケーブルがどれも適正なものであると憶測してはならないということだ。

RELATED

SHARE

あの失敗した「海洋清掃マシン」が新たな舞台で復活。東南アジアの河川でプラスティックごみを回収へ

海に漂う大量のプラスティックごみを回収すべく、全長600mの海洋清掃マシンを太平洋へと送り出したNPO団体「オーシャン・クリーンアップ」。その巨大マシンが壊れてしまったあと、新たな舞台に選んだのは東南アジアの河川だった。ごみを発生源で効率よく回収しようという試みは、今度こそ成功するのか。

TEXT BY MATT SIMON
TRANSLATION BY MADOKA SUGIYAMA

WIRED(US)

THE OCEAN CLEANUP

PHOTOGRAPH BY THE OCEAN CLEANUP

いまから1年ほど前の昨年9月、オーシャン・クリーンアップという団体が、海洋プラスティックごみの除去を目指して前例のない装置で前例のない活動を開始した。その装置とは、全長600mのU字型のプラスティック製チューブである。このチューブにぶら下げた網に東太平洋に集積したプラスティックが自然に入る仕掛けで、集められたごみは回収船がやって来てすくい上げ、陸地に運ぶ手はずになっていた。

ところが開始から数カ月後、この海洋清掃マシンはプラスティックごみを集めないばかりか、ふたつに割れてしまった。チューブの修理と機能向上のため、オーシャン・クリーンアップはこの装置をハワイまで曳航しなければならなくなった。

関連記事太平洋に向かった巨大な「海洋清掃マシン」が、ごみを集めないまま壊れてしまった

それから数カ月後の今年10月初旬、オーシャン・クリーンアップは機能の向上した装置がついにプラスティックごみを集めたと発表した。しかしある研究者がTwitterで、この装置は海洋生物も収集していると指摘した。前例のない活動は、なかなか順風満帆とはいかないようだ。

“失敗”を経た新たな解決策

科学者たちは、オーシャン・クリーンアップの装置の設計上の選択について、装置が設置される数年前から警鐘を鳴らし始めていた。海洋生物を傷つける可能性、巨大なプラスティックからマイクロプラスティックが剥がれ落ちる事実、波の荒い海に浮かぶ全長600mのチューブの脆弱性が問題だと警告していた。どの問題も最初から明らかに悩みの種だった。

そして装置の設置後、オーシャン・クリーンアップは科学者たちが間違った解決策と考える方法に数千万ドルを費やしてきた。科学者たちによると、プラスティックごみの回収に最適な場所は、ごみが海にちょうど流れ込むところよりも前、つまり河口の少し上流である。

この意見に、オーシャン・クリーンアップは耳を傾けていたらしい。同団体は10月26日、アップルが開催するようなイヴェントをロッテルダムで開催し、太陽光発電で動く「The Interceptor(インターセプター)」というごみ回収船の詳細を明らかにしたのである。

インターセプターには河川に浮かべる長いフェンスが付いている。河口の少し上流でこのフェンスを広げ、集められたごみは船尾の開口部に流し込まれたあと、ベルトコンヴェヤーで船内の大型容器に運ばれる。

すでに2隻のインターセプターが、インドネシアとマレーシアで航行している。もう1隻はヴェトナムのメコン川での航行を準備中で、4隻目はドミニカ共和国で航行する予定だ。

The barge's conveyor belt ferries trash into bins

集められたごみは、ベルトコンヴェヤーで船内の大型容器へ運ばれる。大型容器がごみで満杯になると専門のスタッフが川岸までごみを運ぶ。PHOTOGRAPH BY THE OCEAN CLEANUP

ヒントになった先行事例

確かにインターセプターは素晴らしいアイデアだが、河川を航行するごみ回収船というアイデアはすでに実行に移されている。数年前からボルティモアで河川のプラスティックを集めるごみ回収船が航行しているのは、周知の事実だ。

その船とは、大きな目玉が飛び出た「ミスター・トラッシュ・ホイール(Mr. Trash Wheel)」である。このごみ回収船はボルティモア港で年間200トンものごみをすくい上げており、「プロフェッサー・トラッシュ・ホイール」という仲間もいる(ミスター・トラッシュ・ホイールのInstagramアカウントをフォローしていないと、見逃しているかもしれない)。

「科学者は長らく、河口の上流におけるごみ回収船の運航こそが、海洋プラスティックごみ問題の正しい解決法だと主張し続けてきました」と、アダム・リンドキストは語る。リンドキストは、非営利組織ウォーターフロント・パートナーシップ・オブ・ボルティモアで、ボルティモア港の汚染削減と環境再生を目指す活動を行うヘルシー・ハーバー・イニシアチヴの責任者だ。「オーシャン・クリーンアップが河川でのごみ回収船という方法をまねたのは、この方法への最大の賛辞だといえます」

ミスター・トラッシュ・ホイールはボルティモアの河川向けに開発されているが、オーシャン・クリーンアップはインターセプターを大量生産できるように設計した。そのうえインターセプターはかなりハイテクである。ボルティモアのごみ回収船は水車、すなわち川の流れで回転する外輪によってベルトコンヴェヤーを動かし、バックアップとして太陽光発電を用いる。一方、インターセプターは太陽光発電のみで動く。

Mr. Trash Wheel collecting trash

いつ見ても愛嬌があるミスター・トラッシュ・ホイールは、ボルティモアでプラスティックごみを回収している PHOTOGRAPH BY WATERFRONT PARTNERSHIP OF BALTIMORE

世界中の河川へも輸送可能

オーシャン・クリーンアップの創設者兼最高経営責任者(CEO)のボイヤン・スラットは10月26日、プラスティックごみに見立てた多数のラバーダックを水面に流してデモンストレーションを実施している。このようにプラスティックごみは、インターセプターのベルトに乗って河川から船内に上がっていく。それから“シャトル”のように往復する箱に集められる。

集められたプラスティックごみは、その箱から下部にある6つの大型のごみ容器に落とされる。この容器が満杯になると、インターセプターのシステムがその地域のスタッフにメールを送信する。メールを受信したスタッフがタグボートでやって来て、容器を川岸まで運ぶ。インターセプターは1日に約50,000kgのプラスティックごみを回収可能で、20年もつ。

オーシャン・クリーンアップによると、インターセプターには世界中の河川に輸送しやすい利点もある。もちろんすべての河川を調べたわけではないが、とりわけ大量にプラスティックごみを排出している河川の特定によって、オーシャン・クリーンアップはこの問題に大きな進展をもたらすことができる。

「地球上のプラスティックごみの80パーセントは、1,000あまりの河川から排出されています」と、オーシャン・クリーンアップの主任研究員ローラン・ルブルトンは言う。「海へのプラスティックごみの排出を大幅に減らしたいのであれば、こうした河川でごみの回収に取り組まなければなりません」

問題解決には「上流」での対策が効果的

河川から大量のプラスティックが排出されていることはわかっていても、そのプラスティックが最終的に流れつく場所を特定するのは困難を極める。オーシャン・クリーンアップの推定によると、同団体が巨大なチューブで清掃しようとしたはるか沖合の還流には、海洋プラスティックのほんの小さなかけらが漂っている。

海岸から流出したプラスティックの0.06パーセントは還流をくぐり抜けるものとみられる。それ以外のプラスティックは絶え間なく循環する海流にとらえられて海岸へ押し戻されたのち、沖へ流されるようだ。

海洋プラスティック問題に取り組むNPO「The 5 Gyres Institute」を率いる科学者で、この問題を研究しているマーカス・エリクセンは、「海岸で毎週のように清掃活動を実施するほうが、(海洋で)ごみの回収事業を6~7年間かけて実施するよりも、ずっと多くのごみを集められるはずです」と語る。「何らかの問題を解決するには、一般的には原因の上流か下流で対策を講じることになります。しかし、下流側に行けば行くほど、問題解決に必要なコストが膨らみ続けるのです」

the ocean cleanup

VIDEO BY THE OCEAN CLEANUP

人々の行動を変えられるか

河川の上流で海洋プラスティック問題を解決する利点は資金面以外にもある。それはさまざまな人々にこの問題をアピールできることだ。ミスター・トラッシュ・ホイールにあの大きな目玉がついているのは、ごみを見るためでも、ボルティモア港をパックマンのように動き回ってごみをすくい上げるためでもない。

「大きな目玉をつけたところ、ミスター・トラッシュ・ホイールの作業は人々に行動の変化を促す活動に変わりました」と、ヘルシー・ハーバー・イニシアチヴのリンドキストは説明する。「わたしたちはごみ回収船の所有にとどまらず、この種の船によって人々の行動を変えていくことがとても重要だと考えています。水路からひっきりなしにごみを拾い続けるだけの活動ではなくなりますから」

オーシャン・クリーンアップの海洋清掃マシンについてどのような思いを抱くにせよ、この装置のおかげで海洋プラスティック汚染についてわずか数年で大きな関心が集まった事実は否定しがたい。そして同団体の取り組みが河川の上流に向かえば、海洋プラスティック汚染は身近な問題として強く意識されるようになるだろう。

「人類が緊急事態に陥っていること、プラスティックごみが急速に増加している現状を、皆さんに認識してほしいのです」と、オーシャン・クリーンアップのルブルトンは言う。「川に船を浮かべたからといってすべてが解決するわけではありませんが、川の上流でプラスティックを回収したり、人々の行動を変化させようとしたりする際に役立つはずです」

大きな目玉はオプションだが、インターセプターにもぜひつけたほうがいい。

RELATED

SHARE