日本経済の先行きに不透明感が強まる中、注目を集め始めた中小企業の「淘汰論」や「不要論」。この大胆な理論を実行に移すとすれば、社会の混乱を防ぐために少なくとも次の2つの条件をクリアすることが欠かせない。
- ①消滅する中小企業が生み出している付加価値を、残された企業(大企業中心)でカバーする。
- ②消滅する中小企業が生み出している雇用を、残された企業(大企業中心)でカバーする。
2019年版の中小企業白書によれば、全ての日本企業に占める中小企業の比率は99.7%に上り、GDPのおよそ4分の1を支えているとみられる(2015年時点で25.4%、分母のGDPは531兆円で試算)。雇用でも日本の全雇用の約7割(68.8%)の受け皿になっているのが現実だ。
生産性の低い中小企業の淘汰を説くデービッド・アトキンソン氏の言う通りに、中小企業を半減させれば、残された企業が補わねばならない付加価値と雇用は膨大になる。中小企業に厳しい視線を送る人々は当然、その多くは、競争力のある大企業などに集約され、大きな負の影響は生まれないとの立場を取るが、本当だろうか。
色あせた「道東最大の繁華街」
ここから先は、実際に「中小企業が消えた街」がその後、どんな運命をたどったかを見ていこう。
北海道釧路市――。かつて炭鉱と水産業で栄えたこの街は、中心市街地の空洞化が全国に先駆けて進んだ場所でもある。昭和から平成初期にかけて道東屈指の繁華街として栄えた釧路駅前の商店街は、いまやシャッター通りと化す。
釧路駅周辺はかつて釧路市の、いや道東地域の中心地だった。駅から約1キロにわたってまっすぐのびる片側2車線の目抜き通り「北大通」には、地元資本の百貨店や娯楽施設が立ち並び、「釧路では『街に行く』イコール北大通で遊ぶことだった」(地元住民)。
コメント5件
yk
中小企業といっても色々だ.
一緒くたにしていいのか?
工夫も生産性もなく,滅びて当然のテンプレートで中小企業を語っていないか?
フットワークの軽さが中小の良さ.
合理と組織の理論で動いている大企業では産めないイノベーションがあるのでは無いか
?
...続きを読むどちらかというと,いいアイデアがあっても人金のリソースがなくてやれないことを支援する仕組みが必要.
中小企業=下請け/弱小というイメージからの脱却.
そのための待遇面での格差の縮小.
そういう意味で,個々の独立性を保った上での連合の形成や統合システムの構築など,集団としてのマネジメントは必要だと思う.
Miura, Kodai
会社員
『生産性の低い中小企業の淘汰を説くデービッド・アトキンソン氏の言う通り』とありますが、氏の主張は統廃合を進めるべきというものではないでしょうか。
俵星
日本人
釧路は200カイリで漁業が、エネルギー革命で炭鉱が閉鎖、この影響で人口が減少したことが町が寂れた最大の原因。日経記者の知識の底の浅さに呆れる。
Toshinari Suzuki
限られたパイの奪い合いの中で、成長を強制するような施作には、限界があると思う。社会保障費の負担増など、コスト負担ばかりが先行してゆく中で、パイが増えないのに成長だけ強要するのは、無理だ。Amazonに淘汰される小売のように、全国・全業種にシ
ュリンクがおきているのて、成長しない施作誘導が望まれる。...続きを読むコメント機能はリゾーム登録いただいた日経ビジネス電子版会員の方のみお使いいただけます詳細
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