MMTをめぐる議論で欠けている「供給力」の視点

完全雇用をめざす「就業保証プログラム」問題

経済評論家で株式会社クレディセゾン主任研究員の島倉原氏が監訳をつとめた『MMT現代貨幣理論入門』を基に、同氏と気鋭の論客4人が、同書をめぐって徹底討議する(写真:Pineapple Studio/iStock)
内外で議論の最先端となっている文献を基点として、これから世界で起きること、すでに起こっているにもかかわらず日本ではまだ認識が薄いテーマを、気鋭の論客が読み解き、議論する「令和の新教養」シリーズ。
前回、経済評論家で株式会社クレディセゾン主任研究員の島倉原氏が監訳をつとめた『MMT現代貨幣理論入門』を基に、MMTの概要を解説した。
今回は、同氏と中野剛志(評論家)、佐藤健志(評論家・作家)、施光恒(九州大学大学院教授)、柴山桂太(京都大学大学院准教授)の気鋭の論客4人が、同書をめぐって徹底討議する。

納税動機とMMT

島倉原(以下、島倉):本書『MMT現代貨幣理論入門』で監訳を担当した島倉です。ご覧いただいていかがでしたか。

『MMT現代貨幣理論入門』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

施光恒(以下、施):私が面白いと思ったのは、「貨幣より先に、まず国家ありき」という経済の捉え方です。国家が自らの債務証書としての貨幣を出し、「これで税金を払え」と命じることで普及させる。それにより経済が動いていくという順序ですね。最初に主権を打ち立てることによってゼロから有を生み出すという意味で、ドイツの政治学者のカール・シュミットなどの考え方に近いと感じました。

佐藤健志(以下、佐藤):著者のランダル・レイは149ページで、FRB議長だったベン・バーナンキの言葉を引用します。「政府はキーストローク、つまりバランスシートへの電子的な記帳を行うことで支出する。そうするための能力に、技術的なあるいはオペレーション上の限界はない」。

貨幣に関しては無から有が生み出せる以上、政府は財政赤字を気にしなくていい。通貨発行権という経済的主権が、積極財政による経世済民という政治的主権を支えるんですね。

中野剛志(以下、中野):政府支出に納税額が追いつかなくても、何も問題はない。なぜなら政府は自分が必要なだけのお金をいつでも創り出せるからです。みんな錯覚しているんですよ。本当は、政府は自分が創った金で運営されているのに、「政府は国民の税金で運営されている」と思い込んでいる。国民も公務員もね。

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  • やまと86545ca2039d
    MMTerは現状を『デフレ』と言うから主流派経済学に洗脳されている人々が揚げ足を取ってくる。需要から供給の正の循環が盛り上がらない『不景気』と言い換えるべきだ。

    中野氏のいう、需要を供給が追いかける経済成長の議論を補足するとともに、JGPの議論を理論から補足に移せば、理論体系としてのMMTを否定できる余地は無くなるはずです。
    up30
    down8
    2019/11/12 10:28
  • マヒロ7c75c1de0ce1
    記事でも触れているが、国民経済計算上各部門の収支は、國際(経常)=政府+企業+家計+非営利が成り立つ。非営利は無視でき、家計貯蓄率はゼロに近く、下げ余地はない。政府赤字縮小は企業貯蓄(内部留保)縮小、純輸出増による経常収支黒字拡大が主となる。前者は企業課税強化、後者は産業競争力強化による輸出振興・輸入代替産業強化が効く。
    一方、経済政策の中心は、消費増税・財政抑制による家計圧迫。増税の影響軽微が大本営発表的に報道されているが、所得は増えず、貯蓄率も下げられない所にあるのが実態。消費縮小に向かう外はない。
    消費増税が政府赤字縮小に結びつくのは、経済縮小が消費縮小により生じ、企業黒字減少発現を導くため。
    政府は、MMTに難癖を付けているが、その大事は、企業利益増大・一般会計赤字縮小。社会保障拡充は都合の良いお題目に過ぎず、国民生活向上など眼中にない。インフレ警鐘はオオカミ少年の真似事。

    up14
    down3
    2019/11/12 11:44
  • 今日のご飯はf81b0319ab5a
    べつにMMTを否定するつもりはありませんが、ベネズエラやギリシャで紙幣をどんどん発行したらどのようになるかを教えていただきたいです。

    MMTが可能な国(向いている国)と不可能な国(不向きな国)を分類していただけると議論がはずみます。

    また、リブラみたいな通貨ができたらその時はどうなるのでしょうか。
    その検証もして欲しいですね。
    up21
    down14
    2019/11/12 08:46
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