歴代の本屋大賞作品から選ぶ 読書家おすすめの10冊

笑った本、泣いた本、勇気をもらった本……。本好きの書店員が選ぶ「本屋大賞」なら、面白くないわけがない。実際に5作品以上読んだ1000人がお薦めの本を選んだ。

■1位 舟を編む(三浦しをん)998ポイント
言葉の面白さ・仕事の地道さ 伝わる

出版社の辞書編集部を舞台に、主人公の青年が個性豊かな編集者や研究者らとともに新しい辞書づくりに取り組む姿を描いた。小説のテーマとなっているのは「言葉」。「すべてのことをインターネットに頼っている息子に、辞書が苦労と愛情の結晶であることをわかってほしい」(62歳女性)。「職場の理系の人に、言葉の面白さをわかってほしい」(23歳男性)。読書を薦める際、言葉の面白さに注目することを挙げる人が多かった。

あまり知られていない辞書編さんの困難な過程を丁寧に描いている。「仕事が嫌になっている人に、時間をかけてコツコツと成果を積み上げていくことの大切さを読み取ってほしい」(55歳女性)。「仕事についてのスタンスなど自分と比較すると発見があるかもしれない」(46歳女性)という意見もあった。仕事についても考えさせられる。

自分で読み返したい作品とした人が最も多かった。「大人になって読むのでは感じ方が違うと思う」(22歳女性)。「主人公に感情移入して読んだが違う人物の視点で読んでみたい」(55歳女性)

(1)出版社 光文社(2)価格 文庫本682円(3)発行部数 136.7万部(4)選考の年、結果 2012年、大賞

■2位 告白(湊かなえ)731ポイント
予想を超える展開 一気に読了も

娘を亡くした女性教師が、犯人である少年を指し示した教室から物語は始まる。「級友」「犯人」「犯人の家族」と語り手を変え、事件の真相に迫る。読後の感想が分かれる衝撃的な結末まで一気に読み終えたという人が多く、「予想を超える展開。読み進めるうちに、最後が気になって仕方がなかった」(26歳女性)。面白かった作品としてトップに挙げた人が最も多い作品だった。

ミステリー好きに薦めたいが、「自分の子供に、他人に対しどのように接していけばよいのかのヒントとして読んでほしい」(47歳女性)という声もあった。

(1)双葉社(2)681円(3)357.2万部(4)09年、大賞

■3位 海賊とよばれた男(百田尚樹)724ポイント
戦後の事業家 生きる姿に勇気

石油会社を立ち上げた男が、敗戦ですべてを失った後、社員を一人も解雇せずに事業を再生し、石油を武器に変えて世界と対峙した生きざまを描く。出光興産の創業者・出光佐三がモデル。「日本の戦後を感じる」(55歳男性)。「この時代の男たちに胸が熱くなった」(37歳男性)。「経済小説として面白い」(67歳男性)。男性に面白かったとした人が多かった。

「後輩社員に人のために頑張る姿が美しいことを伝えたい」(38歳女性)など、同僚に薦めたいという声が集まった。「気持ちを奮い立たせたい時に読みたい」(38歳男性)と「読み直したい作品」に挙げた人も。

(1)講談社(2)(上)(下)各825円(3)442万部(4)13年、大賞

■4位 博士の愛した数式(小川洋子)705ポイント
平易な表現 数学嫌いもファン

記憶を失った天才数学者「博士」のもとに派遣された家政婦の「私」、10歳の息子「ルート」。博士の大切な言葉である「数字」を媒介に3人の心の交流を描く。「淡い記憶の中でも精いっぱい生きようとする博士がいとおしかった」(26歳女性)

数式が並ぶが、数学嫌いの「私」のシンプルな言葉でつむがれ、「作者の小説に共通する異形な美しさや静けさが好き」(52歳女性)と女性の支持を得た。「数学好きに」(26歳女性)という一方、「嫌いでも、数学を違った角度で見られる」(22歳男性)

(1)新潮社(2)605円(3)276.3万部(4)04年、大賞

■5位 蜜蜂と遠雷(恩田陸)670ポイント
ピアノの音 色彩豊かに表現

若いピアニストたちの青春群像劇。コンクールを通して様々な才能を持つ参加者の人生を描く。「ピアノの音を色彩豊かに描いた作品」(66歳男性)。演奏の描写を理由に面白かったと答えた人が多かった。「クラシック音楽を実際に聴きながら読んだ。今までにない立体的な読書だった」(67歳女性)という人もいた。

薦めたい相手としては音楽好き、ピアノを弾く人が多かったが、「格闘技みたいに楽しめるので格闘技好きに」(36歳男性)という声もあった。17年1月直木賞も受賞した。

(1)幻冬舎(2)(上)(下)各803円(3)149.3万部(4)17年、大賞

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笑った本、泣いた本、勇気をもらった本……。本好きの書店員が選ぶ「本屋大賞」なら、面白くないわけがない。実際に5作品以上読んだ1000人がお薦めの本を選んだ。

998ポイント

出版社の辞書編集部を舞台に、主人公の青年が個性豊かな編集者や研究者らとともに新しい辞書づくりに取り組む姿を描いた。小説のテーマとなっているのは「言葉」。「すべてのことをインターネットに頼っている息子に、辞書が苦労と愛情の結晶であることをわかってほしい」(62歳女性)。「職場の理系の人に、言葉の面白さをわかってほしい」(23歳男性)。読書を薦める際、言葉の面白さに注目することを挙げる人が多かった。

あまり知られていない辞書編さんの困難な過程を丁寧に描いている。「仕事が嫌になっている人に、時間をかけてコツコツと成果を積み上げていくことの大切さを読み取ってほしい」(55歳女性)。「仕事についてのスタンスなど自分と比較すると発見があるかもしれない」(46歳女性)という意見もあった。仕事についても考えさせられる。

自分で読み返したい作品とした人が最も多かった。「大人になって読むのでは感じ方が違うと思う」(22歳女性)。「主人公に感情移入して読んだが違う人物の視点で読んでみたい」(55歳女性)

(1)出版社 光文社(2)価格 文庫本682円(3)発行部数 136.7万部(4)選考の年、結果 2012年、大賞

731ポイント

娘を亡くした女性教師が、犯人である少年を指し示した教室から物語は始まる。「級友」「犯人」「犯人の家族」と語り手を変え、事件の真相に迫る。読後の感想が分かれる衝撃的な結末まで一気に読み終えたという人が多く、「予想を超える展開。読み進めるうちに、最後が気になって仕方がなかった」(26歳女性)。面白かった作品としてトップに挙げた人が最も多い作品だった。

ミステリー好きに薦めたいが、「自分の子供に、他人に対しどのように接していけばよいのかのヒントとして読んでほしい」(47歳女性)という声もあった。

(1)双葉社(2)681円(3)357.2万部(4)09年、大賞

724ポイント

石油会社を立ち上げた男が、敗戦ですべてを失った後、社員を一人も解雇せずに事業を再生し、石油を武器に変えて世界と対峙した生きざまを描く。出光興産の創業者・出光佐三がモデル。「日本の戦後を感じる」(55歳男性)。「この時代の男たちに胸が熱くなった」(37歳男性)。「経済小説として面白い」(67歳男性)。男性に面白かったとした人が多かった。

「後輩社員に人のために頑張る姿が美しいことを伝えたい」(38歳女性)など、同僚に薦めたいという声が集まった。「気持ちを奮い立たせたい時に読みたい」(38歳男性)と「読み直したい作品」に挙げた人も。

(1)講談社(2)(上)(下)各825円(3)442万部(4)13年、大賞

705ポイント

記憶を失った天才数学者「博士」のもとに派遣された家政婦の「私」、10歳の息子「ルート」。博士の大切な言葉である「数字」を媒介に3人の心の交流を描く。「淡い記憶の中でも精いっぱい生きようとする博士がいとおしかった」(26歳女性)

数式が並ぶが、数学嫌いの「私」のシンプルな言葉でつむがれ、「作者の小説に共通する異形な美しさや静けさが好き」(52歳女性)と女性の支持を得た。「数学好きに」(26歳女性)という一方、「嫌いでも、数学を違った角度で見られる」(22歳男性)

(1)新潮社(2)605円(3)276.3万部(4)04年、大賞

670ポイント

若いピアニストたちの青春群像劇。コンクールを通して様々な才能を持つ参加者の人生を描く。「ピアノの音を色彩豊かに描いた作品」(66歳男性)。演奏の描写を理由に面白かったと答えた人が多かった。「クラシック音楽を実際に聴きながら読んだ。今までにない立体的な読書だった」(67歳女性)という人もいた。

薦めたい相手としては音楽好き、ピアノを弾く人が多かったが、「格闘技みたいに楽しめるので格闘技好きに」(36歳男性)という声もあった。17年1月直木賞も受賞した。

(1)幻冬舎(2)(上)(下)各803円(3)149.3万部(4)17年、大賞

510ポイント

衆人環視の中で起きた首相暗殺事件。暗殺犯のぬれぎぬを着せられた青年が、必死に逃走する孤独な姿を描く。「先の読めない展開と魅力的なキャラクターが相まって読み応えがあった」(42歳男性)。「出だしからハラハラして最後まで読んでしまうだろうから、本嫌いの友人に薦めたい」(37歳女性)

「読むたびに伏線が明らかになり、前に気がつかなかった点が分かる」(59歳男性)。読み直したいと答えた人が多かった。

(1)新潮社(2)1034円(3)118.6万部(4)08年、大賞

498ポイント

高校生の僕が病院で拾った「共病文庫」は膵臓(すいぞう)の病気で余命が短い同級生の女子がつづっていた日記帳。秘密を共有した2人を描き、「キミスイ」と呼ばれて若者の人気を集めた。「恋愛ものとは思えないタイトルに逆にひかれた」(33歳女性)

「読んでいると切なくなる」(44歳男性)。「何度読んでも泣ける」(29歳女性)という展開で、恋人や友人に薦めたいとの声が目立った。「ロマンチックだけど字を読まない人に、王道の恋愛小説で活字の威力を知ってほしい」(68歳男性)

(1)双葉社(2)734円(3)246.7万部(4)16年、2位

454ポイント

イラストレーターや俳優などとして活躍する作者の自伝的小説。女手ひとつで息子を育てたオカン(母)を中心に母と子、父と子、青春の屈託を描いた。「何気ない日常の中のほのぼのとした物語」(64歳女性)ながら、「とにかく泣ける」(38歳男性)。

「母への愛情、息子としてのふがいなさが描かれ、心が揺さぶられる」(67歳女性)。「家族のあり方の勉強」(69歳女性)で家族に薦めたいほか、「両親亡き今、昔と違った感覚で読めそう」(56歳女性)

(1)扶桑社(文庫は新潮社)(2)825円(3)240万部(4)06年、大賞

433ポイント

大富豪の令嬢の新米刑事が、丁寧な口調で暴言を吐く執事と事件を解決する。「ユーモアたっぷりの掛け合いと本格的な謎解きが魅力」(60歳女性)。1話完結型で、シリーズ化されている。「娘たちがちょっとした探偵気分を味わうために読んでほしい」(56歳女性)。「テレビドラマを見た人にぜひ原作を」(49歳女性)

(1)小学館(2)702円(3)217.3万部(4)11年、大賞

426ポイント

戦国時代、瀬戸内海が拠点の村上海賊の当主の家に生まれた女性が主人公。壮大なスケールで海賊船の合戦を描く。「戦国時代の海賊という男だけの世界で立ち回る姫が格好いい」(59歳男性)。1~10位で唯一の非映像化作品で「CGを駆使し、リアル感を再現してほしい」(49歳男性)。

(1)新潮社(2)1・2巻各649円、3・4巻各693円(3)298.8万部(4)14年、大賞

2004年に始まった本屋大賞の特徴はオンライン書店を含め、新刊書を販売する「書店員」が選考する点。他は作家など文学のプロが決めることが多い。実際に本を扱う書店員が「自分が本当に売りたい本」として選ぶ。1次投票でノミネート作品を絞り、2次投票を経て受賞作品を決める。19年4月の第16回では1次に全国493店の623人、2次に308店の371人が参加した。

作家にとっても「読者に最も近い書店員が選ぶので、大きな励ましになる」(筑摩書房顧問で書評家の松田哲夫さん)。既存の文学賞に縁がなかったというリリー・フランキーさんの「東京タワー」が06年大賞を受賞し、「読者目線に立った賞」(松田さん)という印象が広がった。

受賞作はテレビドラマや映画などに映像化されることも多い。現在公開中の「蜜蜂と遠雷」は、17年に直木賞と本屋大賞をダブル受賞した作品だ。ピアノのコンクールが舞台で映像化が難しいとの指摘もあった。作者の恩田陸さんは「なるべくピアノを弾いている映画に」と希望し、俳優の松岡茉優さんらが登場人物の心理を演奏シーンで巧みに表現した。幻冬舎も「原作者の意図をくみ取った作品で大満足」という。

[NIKKEIプラス1 2019年11月9日付]

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笑った本、泣いた本、勇気をもらった本……。本好きの書店員が選ぶ「本屋大賞」なら、面白くないわけがない。実際に5作品以上読んだ1000人がお薦めの本を選んだ。

998ポイント

出版社の辞書編集部を舞台に、主人公の青年が個性豊かな編集者や研究者らとともに新しい辞書づくりに取り組む姿を描いた。小説のテーマとなっているのは「言葉」。「すべてのことをインターネットに頼っている息子に、辞書が苦労と愛情の結晶であることをわかってほしい」(62歳女性)。「職場の理系の人に、言葉の面白さをわかってほしい」(23歳男性)。読書を薦める際、言葉の面白さに注目することを挙げる人が多かった。

あまり知られていない辞書編さんの困難な過程を丁寧に描いている。「仕事が嫌になっている人に、時間をかけてコツコツと成果を積み上げていくことの大切さを読み取ってほしい」(55歳女性)。「仕事についてのスタンスなど自分と比較すると発見があるかもしれない」(46歳女性)という意見もあった。仕事についても考えさせられる。

自分で読み返したい作品とした人が最も多かった。「大人になって読むのでは感じ方が違うと思う」(22歳女性)。「主人公に感情移入して読んだが違う人物の視点で読んでみたい」(55歳女性)

(1)出版社 光文社(2)価格 文庫本682円(3)発行部数 136.7万部(4)選考の年、結果 2012年、大賞

731ポイント

娘を亡くした女性教師が、犯人である少年を指し示した教室から物語は始まる。「級友」「犯人」「犯人の家族」と語り手を変え、事件の真相に迫る。読後の感想が分かれる衝撃的な結末まで一気に読み終えたという人が多く、「予想を超える展開。読み進めるうちに、最後が気になって仕方がなかった」(26歳女性)。面白かった作品としてトップに挙げた人が最も多い作品だった。

ミステリー好きに薦めたいが、「自分の子供に、他人に対しどのように接していけばよいのかのヒントとして読んでほしい」(47歳女性)という声もあった。

(1)双葉社(2)681円(3)357.2万部(4)09年、大賞

724ポイント

石油会社を立ち上げた男が、敗戦ですべてを失った後、社員を一人も解雇せずに事業を再生し、石油を武器に変えて世界と対峙した生きざまを描く。出光興産の創業者・出光佐三がモデル。「日本の戦後を感じる」(55歳男性)。「この時代の男たちに胸が熱くなった」(37歳男性)。「経済小説として面白い」(67歳男性)。男性に面白かったとした人が多かった。

「後輩社員に人のために頑張る姿が美しいことを伝えたい」(38歳女性)など、同僚に薦めたいという声が集まった。「気持ちを奮い立たせたい時に読みたい」(38歳男性)と「読み直したい作品」に挙げた人も。

(1)講談社(2)(上)(下)各825円(3)442万部(4)13年、大賞

705ポイント

記憶を失った天才数学者「博士」のもとに派遣された家政婦の「私」、10歳の息子「ルート」。博士の大切な言葉である「数字」を媒介に3人の心の交流を描く。「淡い記憶の中でも精いっぱい生きようとする博士がいとおしかった」(26歳女性)

数式が並ぶが、数学嫌いの「私」のシンプルな言葉でつむがれ、「作者の小説に共通する異形な美しさや静けさが好き」(52歳女性)と女性の支持を得た。「数学好きに」(26歳女性)という一方、「嫌いでも、数学を違った角度で見られる」(22歳男性)

(1)新潮社(2)605円(3)276.3万部(4)04年、大賞

670ポイント

若いピアニストたちの青春群像劇。コンクールを通して様々な才能を持つ参加者の人生を描く。「ピアノの音を色彩豊かに描いた作品」(66歳男性)。演奏の描写を理由に面白かったと答えた人が多かった。「クラシック音楽を実際に聴きながら読んだ。今までにない立体的な読書だった」(67歳女性)という人もいた。

薦めたい相手としては音楽好き、ピアノを弾く人が多かったが、「格闘技みたいに楽しめるので格闘技好きに」(36歳男性)という声もあった。17年1月直木賞も受賞した。

(1)幻冬舎(2)(上)(下)各803円(3)149.3万部(4)17年、大賞

510ポイント

衆人環視の中で起きた首相暗殺事件。暗殺犯のぬれぎぬを着せられた青年が、必死に逃走する孤独な姿を描く。「先の読めない展開と魅力的なキャラクターが相まって読み応えがあった」(42歳男性)。「出だしからハラハラして最後まで読んでしまうだろうから、本嫌いの友人に薦めたい」(37歳女性)

「読むたびに伏線が明らかになり、前に気がつかなかった点が分かる」(59歳男性)。読み直したいと答えた人が多かった。

(1)新潮社(2)1034円(3)118.6万部(4)08年、大賞

498ポイント

高校生の僕が病院で拾った「共病文庫」は膵臓(すいぞう)の病気で余命が短い同級生の女子がつづっていた日記帳。秘密を共有した2人を描き、「キミスイ」と呼ばれて若者の人気を集めた。「恋愛ものとは思えないタイトルに逆にひかれた」(33歳女性)

「読んでいると切なくなる」(44歳男性)。「何度読んでも泣ける」(29歳女性)という展開で、恋人や友人に薦めたいとの声が目立った。「ロマンチックだけど字を読まない人に、王道の恋愛小説で活字の威力を知ってほしい」(68歳男性)

(1)双葉社(2)734円(3)246.7万部(4)16年、2位

454ポイント

イラストレーターや俳優などとして活躍する作者の自伝的小説。女手ひとつで息子を育てたオカン(母)を中心に母と子、父と子、青春の屈託を描いた。「何気ない日常の中のほのぼのとした物語」(64歳女性)ながら、「とにかく泣ける」(38歳男性)。

「母への愛情、息子としてのふがいなさが描かれ、心が揺さぶられる」(67歳女性)。「家族のあり方の勉強」(69歳女性)で家族に薦めたいほか、「両親亡き今、昔と違った感覚で読めそう」(56歳女性)

(1)扶桑社(文庫は新潮社)(2)825円(3)240万部(4)06年、大賞

433ポイント

大富豪の令嬢の新米刑事が、丁寧な口調で暴言を吐く執事と事件を解決する。「ユーモアたっぷりの掛け合いと本格的な謎解きが魅力」(60歳女性)。1話完結型で、シリーズ化されている。「娘たちがちょっとした探偵気分を味わうために読んでほしい」(56歳女性)。「テレビドラマを見た人にぜひ原作を」(49歳女性)

(1)小学館(2)702円(3)217.3万部(4)11年、大賞

426ポイント

戦国時代、瀬戸内海が拠点の村上海賊の当主の家に生まれた女性が主人公。壮大なスケールで海賊船の合戦を描く。「戦国時代の海賊という男だけの世界で立ち回る姫が格好いい」(59歳男性)。1~10位で唯一の非映像化作品で「CGを駆使し、リアル感を再現してほしい」(49歳男性)。

(1)新潮社(2)1・2巻各649円、3・4巻各693円(3)298.8万部(4)14年、大賞

2004年に始まった本屋大賞の特徴はオンライン書店を含め、新刊書を販売する「書店員」が選考する点。他は作家など文学のプロが決めることが多い。実際に本を扱う書店員が「自分が本当に売りたい本」として選ぶ。1次投票でノミネート作品を絞り、2次投票を経て受賞作品を決める。19年4月の第16回では1次に全国493店の623人、2次に308店の371人が参加した。

作家にとっても「読者に最も近い書店員が選ぶので、大きな励ましになる」(筑摩書房顧問で書評家の松田哲夫さん)。既存の文学賞に縁がなかったというリリー・フランキーさんの「東京タワー」が06年大賞を受賞し、「読者目線に立った賞」(松田さん)という印象が広がった。

受賞作はテレビドラマや映画などに映像化されることも多い。現在公開中の「蜜蜂と遠雷」は、17年に直木賞と本屋大賞をダブル受賞した作品だ。ピアノのコンクールが舞台で映像化が難しいとの指摘もあった。作者の恩田陸さんは「なるべくピアノを弾いている映画に」と希望し、俳優の松岡茉優さんらが登場人物の心理を演奏シーンで巧みに表現した。幻冬舎も「原作者の意図をくみ取った作品で大満足」という。

[NIKKEIプラス1 2019年11月9日付]

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