サウナでわかるフィンランド「世界一幸福」な訳

心の豊かさと寛容さはどう育まれているのか

フィンランドは人口550万人に対して、300万個以上のサウナがあるとされる。戸建てだと家にサウナがあるのが一般的だ(筆者撮影)

「まるで天然の麻薬のような、サウナがもたらす多幸感やリフレッシュした気分を意味する」と、フィンランドの公共放送ニュースで紹介されたのは、日本で生まれたサウナ用語、“ととのう(TOTONOU)”だ。今日、11月11日は「ととのえの日」である。365日のうち、数字が最も整っている日だからという。
   
現在、日本では空前のサウナブームが起きている。おじさんが疲れを癒やす場所としてのイメージが強かったサウナが、今や感度の強い「サウナー」たちが“ととのう”ために足を運ぶ場所に変化しているという。サウナ専門のブランドがファッション誌でも紹介される人気ぶりで、サウナフェスはすぐにチケットが完売、今やサウナが地方創生のカギを握るという声も聞かれるほどだ。

実は近年フィンランドでも、“サウナ・ルネサンス”と称されるほどのサウナブームが起き、海外からの旅行者たちをもとりこにしている。筆者は現地で開催された世界サウナフォーラムに参加し、その魅力の秘密を探った。

人口550万人に対し300万個のサウナ

そもそも「サウナ」とは、フィンランドの地に根付いた熱気浴のことであり、フィンランド語の言葉だ。フィンランドは人口550万人に対し300万個ものサウナが存在すると言われ、まさにサウナ大国だ。

筆者が宿泊したヘルシンキのホテルでは、客室にプライベートサウナがあり、市街地にある観覧車の1台がサウナになっていたり、ハンバーガーショップには飲食ができるレンタルサウナルームまであった。年に1度の“ヘルシンキ・サウナデー”には、家庭やオフィスのサウナを一般開放して他人をもてなし、マイサウナ自慢を楽しむ一大イベントもあるというから驚きだ。

ホテルの室内でも「ロウリュ」を楽しめる(筆者撮影)

ここで日本とフィンランドのサウナの大きな違いを押さえておきたい。日本のサウナは、熱く乾いた室内(室温80~100度)でじっと耐え、火照(ほて)った体は水風呂でクールダウンするのが一般的。サウナの室内にテレビがあるのも日本ならではだ。

一方、フィンランドのサウナは、比較的穏やかな熱さの室内(室温60~80度)で、まきストーブや電気ストーブの上に置かれた焼け石に柄杓で水をかけ、ジュワーと音を立てて広がる蒸気を味わう。火照った身体は、冷たい湖にドボンと飛び込むか、外に出て外気浴でクールダウンするのが基本だ。また、服と共に肩書や地位も脱ぎ捨てて腹を割っておしゃべりする、究極の平等思想が存在する場でもあるという。

次ページサウナは「妻に言えないことも話せる場所」
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
  • 自衛隊員も学ぶ!メンタルチューニング
  • 最新の週刊東洋経済
  • ブックス・レビュー
  • 日本野球の今そこにある危機
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
9

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
  • Box841e9f449ad7
    これ「世界中の人に足りない」のが寛容さだよね.
    風呂やサウナのルールが云々と言うのは,別に日本だけじゃなく,習慣化しているから書く必要が無いだけでしょ.
    ルールはルールとして存在するよ.

    最近,文化と寛容と言う事がごっちゃになっている人が一杯いて,西洋文化は正しいあり方で,東洋文化は寛容さが無い,と言う雰囲気がある.
    この文章から言うと,「日本の海豚食文化に寛容でないヨーロッパ人」とも言える.
    韓国の犬食文化など,西洋に潰されちゃったよね.
    文化を許容する寛容性などかけらも無かった.

    寛容であるには,一方的でなく相互方向の文化や行動への敬意が必要で,一方向では成立しないと思うよ.
    up23
    down15
    2019/11/11 10:01
  • サーモンアボカド丼ca7d69bfe1ca
    ルールがあるから寛容だと思います。

    ルールあれば一見さんでも使い方、楽しみ方が理解できてルールの上で誰でも楽しみが生まれる。

    ルールが無いところではマナーの世界になる。
    マナーはそこを利用する常連達が知っているが一見には理解できない。
    文章にはならないのでマナーが倫理的に問題なものもまかり通る。
    マナーがあれば自然と排他的になる。
    つまり、常連同士が自然と会話できる環境になる。

    ルールがあれば、ルールを守る人誰でも受け入れられるという寛容さがある反面、知らない人がいるから公共の場になる。

    マナーの世界は寛容さは無くなり、常連達主体の場になり、会話が増える反面公共性が失われると思います。
    up10
    down6
    2019/11/11 13:43
  • といざヤす9fb97ee2a27b
    少し記事の趣旨から外れるかもしれませんが・・・

    ロシア帝国に支配されて数百年、今でも民族の心のふるさとカレリア地方はロシア領です。
    しかし、それでもロシアといたずらに対立することなく「大人の付き合い」をしているフィンランド民族は、さすがですね。
    up10
    down8
    2019/11/11 06:30
  • すべてのコメントを読む
トレンドウォッチAD
関西電力がはまり込んだ<br>「原発マネー」の底なし沼

社会を揺るがした関電首脳らの金品受領問題。本誌は関係者による内部告発文や関電の内部調査報告書などで、「持ちつ持たれつ」の関係に迫った。実態解明は第三者調査委員会に委ねられるが、原発推進への自傷行為となったのは間違いない。