あの子は真剣?それとも遊び?AIなら見抜ける!【出会い系】

マッチングアプリで異性を探すとき、より効率的に自分に合った相手とマッチする方法はないのだろうか?

「真剣交際を希望しているのに、見事に遊び捨てられてしまった…」
「こっちは一晩寝たいだけなのに、相手が地雷メンヘラで痛い目を見た…」

アプリ利用が有料である男性や、結婚に焦る適齢期の女性は、こうした無駄な出会いを極力省きたいことだろう。

マッチングアプリにおいて、判断材料となるのはプロフィールだけだ。プロフィールを見るだけで、自分に合う相手かどうかを正しく判断するにはどうしたら良いのだろうか。

“損切り上手”の手助けをしてくれるのは、AIかもしれない――

本特集では、AI時代のメンタリズムを、最近発表された論文をもとに解説していく。今回のテーマは「相性の良いパートナーを見抜く」だ。

2019年5月にオランダの研究者たちが発表した論文”Effects of Relationship Goal on Linguistic Behavior in Online Dating Profiles: A Multi-Method Approach”(日本語意訳:目的とする関係性がマッチングサービスのプロフィール内で使用される言語表現に与える影響:複数の分析法によるアプローチ)では、1万人以上のマッチングアプリユーザのプロフィール内で使用されている単語を分析した研究内容が報告されている。

研究の結果、”真剣交際希望者”と”一夜限り希望者”では、プロフィールで使われる単語の種類に違いがあることが分かった。一体、どんな違いがあったのだろうか?論文を紐解きながら、気になる結果を見てみよう。

プロフィールの言葉遣いで真剣度を判断できるかも?

マッチングアプリで相手を判断するときの重要な手がかりの1つは、写真だ。交際において、まず顔が好きかどうかを重要視する人は多いだろう。

加えて、写真には、好みかどうかを判断する以上の機能がある。過去の研究で、長期的な関係性を希望する人(以下、真剣交際希望者)は、交際をより現実的にイメージしてもらうために、加工などが少ない自然な写真を使用する一方で、即席の関係性を希望する人(以下、一夜限り希望者)は、身体的な魅力を強調する写真を使用する傾向があることが分かっている。

しかし、写真のみならず、プロフィール内の文章にも、真剣か遊びかのヒントが隠されている可能性が高い。ある論文では、人間の固定的な性質(たとえば性別や年齢)によって、使用する単語に特徴が見出せることを報告している。たとえば、男性は「地位」や「収入」に関する単語を頻繁に使用し、女性は「私は~」という言い回しをよく使用するといった特徴だ。(こうした特徴は、生まれつきという意味ではなく、各性質に求められている社会的な役割の影響によるものだと思われる)。

さらに、固定的な性質以外にも、その時の感情や、文章を書く目的に応じても、使用する単語は変化する。たとえば、ポジティブな気分の人は、ネガティブな気分の人よりも「!」の使用が6倍多く、ネガティブな単語の使用が5倍少ないといった研究結果がある。

つまり、プロフィール内の”言葉遣い”も、相手を判断する上では侮れない判断材料だいうことだ。

出会い系プロフィールを統計とAIでテキスト分析!

このような理由で、オランダの研究者らはプロフィール内の言葉遣いに注目した。

研究者らは、実際のオランダ人12310人分のマッチングアプリプロフィールの自己紹介欄の最初の100語について分析を行った。この12310人のうち、真剣交際希望者は10696人、一夜限り希望者は1614人であることがそれぞれ分かっていた。

仮説

研究者らは、テキスト分析を行うことで、次の仮説を検証した。

真剣交際希望者は…
・「地位」などのステータスに関する単語を多用するのでは?
・(印象をよくするために)ポジティブ感情の表現を多用するのでは?
・「あなた」や「私たち」の使用が多いのでは?

一夜限り希望者は…
・「身体」や「性」に関する単語を多用するのでは?
・「私」や「僕」の使用が多いのでは?

テキスト分析法として使われたのは、「LIWC」と「単語ベースの分類器」の2種類だ。この2つを組み合わせて分析を行った。理系でなくても分かる温度感で、以下に簡単に概要を述べておく。

手法1.LIWC(Linguistic Inquiry and Word Count)

言語学や社会心理学の分野で使われるツールである。カテゴリ分けされた単語のリスト(辞書)があり、辞書内の各単語が現れる回数を調べ、文章の特徴を発見するというものだ。たとえば「孤独」という単語は「悲しい」というカテゴリに分類されている。「悲しい」カテゴリ内の単語の数が多ければ、その文章は悲しさが滲み出ている文章だと機械的に判断できる。

今回の実験では、オランダ語の「LIWC2015」の辞書が使われた。この辞書は、73カテゴリ・13000以上の単語が定義されている。このうち、先ほどの仮説に関連する6カテゴリ(身体&性、ステータス、ポジティブ感情、「私」関連語、「あなた」関連語、「私たち」関連語)に絞って分析(多変量分散分析:MANOVA)が行われた。

手法2.単語ベースの分類器

単語ベースの分類器は、AI(機械学習)を用いて、入力された文章内の単語の中から特徴を探し出すツールである。単語がどのカテゴリに属するかを判別するようなことはできないが、LIWCの単語リストに含まれていない単語も解析することができる。たとえば、マッチングアプリ特有の言い回し(援助交際を意味する「円」、アムウェイ信者を意味する「3」など)を特徴の1つとしてピックアップすることができる。

今回の実験では、6つの機械学習手法(線形SVM、Naive Bayes、決定木、ランダムフォレスト、AdaBoost、XGBoost)から成り立つ既存のアプローチで、特徴の分析が行われた。この解析による妥当性は「10-fold交差検定」という手法で検証された。

真剣交際希望者は、「ポジティブ表現」と「私は」が多い

分析の結果、次のことが分かった。仮説と照らし合わせながら見ていく。

真剣交際希望者の特徴

・「地位」などのステータスに関する単語を多用するのでは?
→ ×案外そうでもなかった!

・ポジティブ感情の表現を多用するのでは?
→ ◎仮説が証明された!

・「あなた」や「私たち」の使用が多いのでは?
→ ×むしろ「私」の使用が多かった!

真剣交際希望者のプロフィールには、「ポジティブ感情」を示す単語や、「私は」「私の」などの「私」関連語が多いことが分かった。一方、ステータスを示す単語はとりわけ多いということはなかった。

テキスト分析によって判明した、真剣交際希望者が使うポジティブ単語上位10つは以下の通りである。

「~したい」「楽しむために」「正直」「甘い」「共有するために」「可愛い」「落ち着く」「大切に」「信頼できる」「愛」

また、真剣交際希望者は、自己開示を多く行うことで、親密な関係を築こうとするために、「私」関連語が多いのだと推測できる。

出会い系に親しみのある人にとっては、納得感のある結果ではないだろうか。これらの情報だけで簡単なプロフィールがすぐ作れることだろう。

「私は正直者で、人からは信頼されるほうだと思います。パートナーには一途で、ずっと大切にします。一緒にいて落ち着く相手と、楽しい時間も苦しい時間も共有していきたいです。」とでも書いておくと、それっぽい。

さらに、真剣交際希望者のプロフィールは、一夜限り希望者のものより内容が長い傾向にあった。

以上より、マッチングアプリで自己開示の多い人や、ポジティブ単語が多い人、プロフィール文章が長い人は、真剣交際希望だと判断できるかもしれない。(しかし、この記事を書くことで、これを読んだ遊び人が真剣を偽る可能性もゼロではなくなってしまった…!)

一夜限り希望者の特徴

一夜限り希望者は…
・「身体」や「性」に関する単語を多用するのでは?
→ ×案外そうでもなかった!

・「私」や「僕」の使用が多いのでは?
→ ×案外そうでもなかった!

結論から言うと、今回の研究からは、一夜限り希望者のプロフィールは共通点が発見できなかったようだ。一夜限りの関係においては、多くの自己開示をする必要がないので、内容が広範になりがちなのだと予想される。相手に対しても、アプリの使用に対しても、真剣度が低いのだろう。

逆に言えば、「真剣交際希望者」の特徴がないプロフィールは、遊び目的を疑いながら慎重に接するべきなのかもしれない。

このように、マッチングアプリのプロフィール文章にも、自分が選ぶべき相手かどうかを判断するための情報が潜んでいるのである。この技術を応用して「プロフィール文章からの相性度表示」のような機能が追加されていくと、より精密で無駄のないマッチングができるようになるかもしれない。出会い系業界への今後のAI導入に期待したい。

本記事で取り扱った論文:

van der Zanden T, Schouten AP, Mos M, van der Lee C and Krahmer E (2019) Effects of Relationship Goal on Linguistic Behavior in Online Dating Profiles: A Multi-Method Approach. Front. Commun. 4:22.

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