アマゾンの納税額が楽天より圧倒的に低い理由

ITの巨人に長く根付く「フリーライダー」精神

同業他社と比べ、なぜ「アマゾンの納税額」は少ないのか?(写真:Phillip Faraone/ゲッティ イメージズ)
日本の大手企業、楽天や高島屋と比べて、アマゾンの「納税額」は極端に低い。インターネット通販サイトの雄として世界中を席巻する大企業にもかかわらず、それはなぜか? ジャーナリストの横田増生がアマゾンのさまざまな現場に忍び込み、「巨大企業の光と影」を明らかにした『潜入ルポ amazon帝国』から一部抜粋してお届けする。

2000年に日本で業務を開始したアマゾンジャパンが、日本でいくら納税したかがわかる年が1年だけある。2014年だ。

官報に、アマゾンジャパン株式会社とアマゾンジャパン・ロジスティクス株式会社の2014年12月期の決算公告が発表されている。

アマゾンジャパン株式会社の売上高は316億円強で、法人税が4億5000万円強。さらに、アマゾンジャパン・ロジスティクス株式会社の売上高は582億円で、法人税が6億円強。2社を合計すると、売上高が899億円強で、法人税が約10億8000万円──となる。

なぜ「アマゾンの納税額」は少ない?

ここで、「おやっ!? ちょっと変だぞ」と気づいた方もいるだろう。「アマゾンの日本での売上高が、900億円弱というのは、数字が一桁少ないんじゃないのか」と。そう思った人は、かなりのアマゾン通である。

米アマゾンが発表する年次報告書によると、2014年の日本での売上高は79億1200万ドル(8700億円)と記載されている。米アマゾンの年次報告書の記載と比べると、決算公告に記載された売上高は、ほぼ10分の1に減少している。

法人税などの税金は、売上高から販売管理費などの諸経費を引いて最後に残った税引き前利益にかかるものだから、売上高が低くなれば、その分純利益も低くなり、納税額も低くなる。

アマゾンの年次報告書によると、8700億円の売上高を上げている日本において、納税額が10億8000万円に過ぎないというのだ。

単純計算とはいえ、売上高が8700億円となると、法人税額が、100億円を超える可能性もある。実際、同じような売上規模の小売業者である高島屋の法人税はこの年、136億円強に上る。また、日本の同業者である楽天は、同年の売上高は5985億円で税引き前利益が1042億円に対し、法人税は331億円を支払っている。

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  • かず8534b1b475c6
    アマゾンのような形態で日本で商売する法人に対しては、日本法人の利益基準ではなく売上基準で、日本法人(または日本支社)に法人税を課するように法律を改正すべきだね。
    up251
    down11
    2019/11/11 06:34
  • cicero513b5170a733
    良い記事。GAFAの暗黒面を語るとき、ネットの自由とか、社会の変化とか、が、主題になりがちだけど、もう少し他の視点も、思い出す事が必要だと思えた。現地税回避は、現地のGDPを根こそぎ吸引するようなものだね。こういう世界企業に対して、そもそも税とは何で、何のために必要で、誰がどう負担すべきか、という議論と、それを正しく徴収するための枠組み論を、それこそ学者の人たちに、国を越えてやってほしい。
    up224
    down11
    2019/11/11 07:59
  • といざヤす9fb97ee2a27b
    国境を超えた利益付け替えのほかにも・・・

    すでに巨大企業になっていた日本のアマゾンが、なぜか株式会社から合同会社に改組しています。

    会計には詳しくないのですが、合同会社は零細企業を想定しているために、決算を公表する義務がないらしいです。そうなると、やはり税金とか何とか・・・ですよね。

    まあ、そういうことらしいですよ。
    up179
    down12
    2019/11/11 06:43
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