弁護団が「ケフィア」を告訴へ、出資法の預り金規制について
はじめに
加工食品などに関し多額の出資金を集めていた通販会社「ケフィア事業振興会」(千代田区)が3日破産手続きに入っていたことがわかりました。破綻後も出資の勧誘を続けていたとされ、契約者側の弁護団は刑事告訴の構えを見せています。今回は出資法が規制する預り金について見ていきます。
事案の概要
日経新聞電子版によりますと、ヨーグルトの種菌の通信販売等を行っていたケフィア社は自社サイトで扱う干し柿やヨーグルトなどへの出資を募る「オーナー制度」を開始し、昨年7月の時点ではオーナー数が4万5千人に上っていたとされます。通販会員にDMを送付して勧誘し、半年後には買い戻され、10%程度の利回りがあるなどとしてオーナーを集めていたとのことです。同社は昨年5月頃から利息の支払いや払い戻しが滞り、今月3日に破産手続開始決定を受けた旨の文書が張り出されました。負債総額は1000億円を超え、債権者は3万人に上るとされます。被害対策弁護団は出資法違反の疑いで刑事告訴を検討しているとされます。
出資法の規制
出資法によりますと、「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定がある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない」としています(2条1項)。そして「預り金」とは、「不特定かつ多数の者からの金銭の受け入れであつて」「預金、貯金又は定期積金の受け入れ」およびそれと同様の経済的性質を有するもので、「社債、借入金その他いかなる名義をもつてするかを問わ」ず該当するとされます(同2項1号2号)。その趣旨は一般大衆から多額の資金を集め、ひとたび業務が破綻すれば多くの出資者に不測の損害を及ぼし、社会の信用制度と経済秩序を乱す恐れのある「預り金」を規制することにあります。
預り金の要件
金融庁のガイドラインによりますと、「預り金」とは「預金等と同様の経済的性質を有する」ものであり以下の4つの要件全てに該当するものとされております。
①不特定かつ多数の者が相手であること。
②金銭の受け入れであること。
③元本の返還が約されていること。
④主として預け主の便宜のために金銭の価額を保管することを目的とするものであること。
つまり多数の者から元本を保証した上で「金銭」を集める、いわゆる銀行の預金のような性質を持つ行為が規制の対象となるということです。たとえば金銭を集めても、金銭以外のもので返還する場合は預金のような性質はなく該当しません。また本来の「社債」は該当しませんが、社債という名目でも実質、預金のような性質であれば該当することになります。
違反した場合
出資法2条に違反し「預り金」を行った場合は3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科となります(8条3項1号2号)。そして別途詐欺罪などの刑法犯が成立する場合は本条の適用はなく、刑法だけが適用されます(同4項)。たとえば当初から償還するつもりがなく、資金だけを集めた場合は預り金ではなく詐欺罪が成立することになります。
コメント
本件でケフィアは会員に勧誘する際、支払った額は買い戻しという形で半年後に全額払い戻され、10%前後の利回りあるとして出資を募っていたとされます。これは不特定多数の者から元本保障した上で資金を集めていることから「預金」の性質のある行為と言え「預り金」に該当する可能性があると考えられます。以上のように出資法が規制する預り金は借り入れや社債など、適法な金銭消費貸借と区別がつきにくい点があります。また顧客から預託金などを預かることも多々あると思われます。違法な預り金となる一番の基準は元本保証と不特定多数から募るという点にあると言えます。つまり銀行の預金と同様の性質があるかで判断するのが近道ではないかと考えられます。会員や顧客から資金を募る際には以上の点に留意して出資法に違反していないかを見直すことが重要と言えるでしょう。
このニュースに関連するセミナー
法務ニュース 訴訟行政 出資法・貸金業法2003年 一橋大学法学部法律学科卒業
2004年 最高裁判所司法研修所入所
2005年 第一東京弁護士会登録 TMI総合法律事務所勤務
2013年 デューク大学ロースクール卒業(LL.M.)
2013年 ロサンゼルスのクイン・エマニュエル・アークハート・サリバン法律事務所勤務
2014年 ニューヨーク州弁護士資格取得
2014年 TMI総合法律事務所復帰
2017年 パートナー就任
主催・協力
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
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1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設
主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。
主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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2002年 中央大学法学部法律学科卒業
2006年 最高裁判所司法研修所入所
2007年 第二東京弁護士会登録 TMI総合法律事務所勤務
2010年 金融庁総務企画局市場課勤務 (インサイダー取引・金商業規制・課徴金事案等を担当)
2013年 TMI総合法律事務所復帰
2016年 パートナー就任
主催・協力
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
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外資系法務本部長、駒澤大学法科大学院、国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師
元Apple Japan法務本部長、元伊藤忠商事法務部、元Temple Law School日本校客員教授。上智大学法学部、Georgetown Univ. Law Center卒
編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数
主催・協力
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
午前の「基礎から学ぶ英文契約書の読み方」は、英文契約書を読んでみたい方、国際法務にこれから携わる方や弁護士の方、携わっているが改めて基礎を確認されたい方などご参加ください。
講義は英文契約書の読み方中心とします。
契約書プリントで代理店契約(Distributor Agreement)を使用します。
午後の「今さら聞けない英文契約書作成・交渉」は、国際法務の実務を担当されている方、多少の基礎知識はあるが自己流で勉強された方、弁護士の方、発展的な学習をされたい方などご参加ください。
このセミナーでは過去の「今更聞けない」シリーズの発展版となります。
なお、午後の部は講師著書の国際ビジネス法務(第2版)(第一法規株式会社/2018年3月発売/2,800円+税)を教科書として使用します。
午前、午後通しで参加ももちろん可能です。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/パートナー弁護士
01年東京大学法学部卒業
04年弁護士登録
12年米国Vanderbilt University卒業(LL.M.)
13年ニューヨーク州弁護士登録、英国University College London卒業(LL.M.)
労働法、社会保険・労働保険・年金に関連する法律、会社法、個人情報保護法等の法分野に関する業務を中心に、労働案件、一般企業法務の案件、紛争案件等を取り扱っている。
著作に『仕事でよく使う・すぐに応用できるビジネス契約書作成ガイド』(共著)(清文社、2017)、『実務Q&Aシリーズ 懲戒処分・解雇』(共著)(労務行政、2017)等がある。
■荻野聡之
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/アソシエイト弁護士
03年東京大学法学部卒業
06年東京大学法科大学院卒業(法務博士(専門職))
08年弁護士登録
労働法、危機管理、事業再生等の法分野に関する業務を中心に取り扱っている。
著作に『企業のための労働実務ガイド1 Q&Aと書式 解雇・退職』(共著)(商事法務、2013)、『労使双方の視点で考える 27のケースから学ぶ労働事件解決の実務』(共著)(日本法令、2015)、『M&Aにおける労働法務DDのポイント』(共著)(商事法務、2017年)等がある。
主催・協力
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
メンタルヘルスの問題は長期化するケースも少なくないため、そのようなケースでは、企業は、メンタルヘルスに不調を抱えた従業員に対して、長期間に渡り継続的な対応を行う必要があります。
企業の事後対応も、メンタルヘルスの問題が発覚した時点、休職命令の発令時点、休職期間中、復職時点、労働契約の終了時点における各局面で、それぞれ検討すべき問題が異なります。
また、メンタルヘルスに不調を抱える従業員に対する対応を企業が誤ってしまうと、問題の解決を遅らせるだけではなく、症状の悪化等により問題が深刻化する可能性も否定できません。
そこで、企業としては、メンタルヘルスの問題が発生した場合には、対応を誤らないよう適切に対応することが、問題を長期化、深刻化させないため、特に重要になっています。
本セミナーでは、企業側弁護士としてメンタルヘルス案件の対応経験が豊富な講師が、実務上のノウハウを交えて、企業側で具体的にどのように対応すればよいかの手順を局面ごとに分けて、わかりやすく解説いたします。
2005年東京大学法学部第一類卒業
2006年弁護士登録(第一東京弁護士会)
2015年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)
2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
2017年米国ニューヨーク州弁護士登録
日本における知的財産法、営業秘密保護、個人情報保護法のほか、
EUにおける知的財産制度・競争法、GDPRをはじめとするグローバルベースでのデータ規制について詳しい。
主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
本セミナーでは、単に条文の内容を日本語にして伝えるだけではなく、日本企業が経験したGDPR対応・日本の個人情報保護法の下での態勢整備との差も意識しながら、ポイントを押さえる形でCCPAの内容を説明し、具体的な作業手順を示します。
また、CCPAの最終版の条文を前提に、10/11公表の規則案の内容も含む形で解説します。
他の州で進んでいるCCPAを参考にした類似の法制度の導入に向けた検討状況と、連邦レベルでのプライバシー法制の導入の動きについても、その概要を説明する予定です。
ベンチャーラボ法律事務所 代表弁護士
1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設
主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。
主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
■アーロン・ペイシェンス
シモンズ&シモンズ外国法事務弁護士事務所代表 パートナー 外国法事務弁護士(英国法・ニュージーランド法)
10年以上日本に滞在、日本語が堪能で、TMT、ヘルスケア・ライフサイエンスを含む幅広い分野の、売却、買収、提携など、クロスボーダーM&Aを数多く手がけ、株式譲渡、事業譲渡、株主間契約、業務提携など、販売契約及びIPライセンスに関する契約書作成においても多数の案件実績を有する。
日本国内外の企業に対して、広範囲な法分野にわたる法的サービスを提供するチームのパートナーであり、TMT(テクノロジー、メディア及びテレコミュニ―ケーション)およびライフ・サイエンス分野のグループメンバー。
主催・協力
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
英文契約書をレビューするためには、英米法の基本的な考え方とキーになる条項の理解が不可欠です。
本セミナーでは、日本法準拠の契約書と比較することによって、日本企業が陥りがちな問題点を解説するとともに、日本企業が苦手とする契約交渉において留意すべき点についても検討します。
株式会社アドヴァンテージ
ちょくルートプランナー
市の財団職員として事業・講座の企画運営を担当。
その後、より北海道を活性化させたいという想いから、自社採用サイトより株式会社アドヴァンテージに応募し、入社に至る。
現在は札幌オフィスにて、北海道民なら誰もがご存知のパン製造販売企業、書籍販売企業などの採用支援をしながら、「ちょくルート」の普及に努める。
■久保 智人
企業法務Matching代表
・サツドラホールディングス株式会社(東証一部上場)
経営管理グループ法務担当チームリーダー
・国立大学法人小樽商科大学外部講師
・宅地建物取引士(石狩)第20718号
・ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)審査員
2004年 東京大学法学部卒業
2006年 東京大学法科大学院修了
2007年 弁護士登録
主に、企業の買収・統合・再編(M&A)、ファイナンス、ファンドの組成・運営等、会社法務全般、ガバナンス、不祥事対応、金融規制法、金融コンプライアンス等の業務を取り扱う。
また、自らも社外監査役や外部委員を務める。
今回のセミナー内容は、「企業法務における有事対応と予防」です。