藤ノ森小で行われた組み体操のピラミッド。2段目の児童は足を地面につけ、安全に配慮した(10月16日、京都市伏見区)

藤ノ森小で行われた組み体操のピラミッド。2段目の児童は足を地面につけ、安全に配慮した(10月16日、京都市伏見区)

 小中学校の運動会で花形となってきた「組み体操」で、規模を縮小したり実施を取りやめたりと見直す動きが出ている。四つんばいで積み上がっていく「ピラミッド」や、肩の上に立って塔をつくる「タワー」などでけがが相次いでいるためだ。全国では神戸市長が中止を呼び掛けるなど議論が起きており、京都でも各学校が伝統と安全の間で揺れている。

京都市教委 「今後の在り方 検討」

 10月16日、藤ノ森小(京都市伏見区)の運動会。6年生の団体演技で、毎年恒例になっている組み体操の内容に変化があった。昨年は3段のタワーがあったが、今年は安全に配慮して行われなかった。
 代わりにしたのが3段や4段のピラミッド。といっても四つんばいの上にさらに四つんばいで乗る「俵積み」タイプでなく、2段目は足を地面に、手だけ四つんばいの人の背中に置く「足つき」タイプ。「安全確保のため、足が地面についていない生徒の上に別の生徒が乗ることはやめた」と東原幹人校長は説明する。
 本番では音楽に合わせ2人や複数人で組になり、練習で磨き上げたさまざまな形や動きを披露した。見守った6年男児の父親(54)は「高さがなくても、躍動感や美しさがあり感動した。これからの新しいタイプの組み体操だと感じた」と満足げに語った。
 市教育委員会によると、2019年度に小学校では約8割に当たる129校がピラミッドやタワーがある組み体操を行った。中学校は1割未満の3校だけだった。ただピラミッドの平均段数は3・4段と、2年前の3・9段から減り、低層化が進んでいる。
 見直しが進む背景には事故が相次いでいることがある。学校での負傷に医療費を給付する日本スポーツ振興センター(東京都)によると、組み体操の事故で医療費を支給した件数は11~14年度で年間8千件を超えた。特にタワーや倒立、ピラミッドで多く、1970年度以降ではタワーでの事故による頭部打撲など死亡事例も9件あった。
 このためスポーツ庁は2016年3月に組み体操の事故防止を各自治体に通知。タワーやピラミッドなど大きな事故につながる可能性がある技は確実に安全な状態で実施できるか確認し、できない場合は見合わせることなどを求めた。
 府内でも井手町では校長会が15年度に「タワーやピラミッドは3段までとする」などと取り決めた。八幡市は16年度、校長会が「最上段になる者以外の両足が必ず地面についていること。ただし、(数人の土台の上に1人が立ち、後ろに倒れるのを受け止めては投げて起こす)『人間起こし』は取り入れない」と申し合わせた。
 城陽市教委も16年度にガイドラインを作成し「タワー(人間起こしを含む)については禁止し、ピラミッドも5段以内に制限した上で安全が確認できない場合は実施を見送る」などと明記した。京都市教委も同年度に安全確認の徹底を促す通知を出している。
 ただ、いまだにピラミッドに取り組む学校は多い。京都市西京区の上里小は6月に運動会で7段のピラミッドを行った。2段目は足を地面につけるなどして安全に配慮したといい、吉田満校長は「協調性や連帯感、団結力の育成につながるため取り入れた。練習の段階で難しければ取りやめも考えていたが、大丈夫だと判断した」と説明。ただ18年度は2人組の技で手首を骨折するけがも起きたといい「伝統や地域、保護者の思いもある。悩むが、子どもの命を一番に安全な運動会になるよう考えていく」と語る。
 市教委はより慎重になっている。担当者は「組み体操は教育的な意義がある一方でけがが多い。今後の在り方を改めて検討したい」と話した。