中国の経済学者、向松祚・中国人民大学教授が笹川日中友好基金の招へいで来日。4中全会が定める党の指導強化が企業にもたらす影響、米中経済戦争の現状と展望、中国経済の構造改革の必要性と行く末について語った。「2020年の経済成長率は、政府が公表する統計数字でも6%以下になる」とみる。(聞き手 森 永輔)
中国共産党が第19期中央委員会第4回全体会議(4中全会)を10月末に終えました。どこに注目しますか。
向松祚:今回の大きなテーマは党によるマネジメントの近代化でした。一言で言えば、「党がすべてを支配する」ということです。
ビジネスについては民間企業を「励まし、誘導する」としました。表現はともかく、現実には経営に介入するという意味でしょう。経済学者としては、賛同できる内容ではありません。これは鄧小平時代の方針と異なります。かつて鄧小平は「政治と企業は切り離す」としていました。これに比べて後退しています。
中国人民大学教授。同大国際貨幣研究所理事兼副所長。専門は貨幣経済。ジョンズ・ホプキンス大学応用経済研究所高級研究員、中国人民銀行深圳特区支店金融債権官営弁公室主任、華友世紀(米ナスダック市場に上場)総裁兼CEOなどを歴任して現職。(撮影:加藤 康、以下同)
また政治指導者が鄧小平から胡錦濤に至る過程で、民間企業に関する共通の理念が形成されてきました。「法を守り、税金を納めれば、それで合格」。これが変わることになるかもしれません。
習近平(シー・ジンピン)国家主席自ら10月初頭に会議を主宰し、「民間企業を励ます」と語りました。しかし、かけ声と現実には乖離(かいり)があります。現実には国有企業の強化と大型化にばかり目を向けており、民間企業への対策はそれほどではありません。既に経済の半分以上を民間企業が支えているにもかかわらずです。最も活気があり、競争力があるのは華為技術(ファーウエイ)やアリババ、テンセントなどの民間企業ですよね。
党が民間企業への介入を強めると、どのような弊害が生まれますか。
向松祚:民間企業は3つのことを憂慮してきました。第1は、身と財産の保全。第2は差別。第3は経営への介入です。いずれも、民間企業のやる気をそぐことにつながります。
コメント4件
六天魔王
数字の話。2015年中国のGDPは6.9%の成長だったと共産党政府は発表した。但し輸出は前年比8.0%減、輸入は14.1%減で当時の貿易依存度は40.25%だった。翌2016年は輸出は同2%減、輸入は同0.6%増で、GDP成長率は6.7%と
発表された。GDPに占める貿易依存度が高い中、貿易収支が改善するとGDPが減少すると言う離れ業だ。いつまで共産党政府発表のGDPの数字に基づく高尚な分析を報道するのか。一休みしては如何でしょうか。汝、深き眠りより目を覚ませと呼ぶ声が聞こえ。...続きを読むconnect
以前は発表値で7%成長がボーダーラインだったと思うが、今はとても無理で6%になっている。
発表6%で実績4%なら毎年2%程度はのっけてるんだろうか?
体感的には今年の急減速っぷりは4%もあるか疑わしく感じるが。
仮に毎年2%ずつサバ読んでる
なら10年で3割程実績と乖離するが・・・...続きを読む麒麟蹄跡
路傍の雑草
>>中国企業が米国から知的財産を盗んでいるというのは正しくありません。
その通り!中国企業は華為を筆頭に米国だけでなく、日本や韓国、EU諸国からも通信やIT、AIに関する核心技術を盗んでいる、が正しい。
mino
中国の高成長が長くは続かないのは自明。成長に依存する体制から「豊かさ」に基づく体制への変革を中国は迫られている。と同時に現物(実体)に依存する経済から「抽象物(虚体?)」に基づく経済へのシフト。そして、「民本主義」へのシフト。これらを絶妙の
バランスとタイミングで実現し続けなければならない。中国指導部は大変だ。10tトラックで山道を120キロで疾走室つけなければならないようなもの?整備・舗装された道ならいいが、ここから先は「未舗装」だろう。果たして安全に目的地にたどり着けるか。そのためにも、速度を徐々に落とさねばならない。急に落とせば荷崩れをお起こす。ブレーキをかけすぎれば効かなくなる。そのうえ霧まで濃くなってきた。積み荷のゆるみも心配だ。中国の指導者でなくてよかった…...続きを読むコメント機能はリゾーム登録いただいた日経ビジネス電子版会員の方のみお使いいただけます詳細
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