俳優、窪田正孝(31)が主演する来春スタートのNHK連続テレビ小説「エール」(月~金曜前8・0)の脚本家が交代することを5日、同局が発表した。林宏司氏が降板し、清水友佳子氏、嶋田うれ葉氏、番組スタッフが執筆する。撮影は9月から始まっており、異例の途中交代劇となったが、関係者によると、林氏はクランクイン前に降板が決まっていたという。制作側との意見の相違など確執が原因とみられ、撮影に影響が出ないか心配される。

 窪田が昭和の大作曲家、古関裕而(こせき・ゆうじ)さんをモデルにした主人公を演じる次期朝ドラで、脚本家の“電撃交代”が発覚した。

 NHKは5日、文書で当初、林氏を予定していた「エール」の脚本を清水氏と嶋田氏のほか番組スタッフに交代すると発表。番組スタッフは、同作の演出を担い、2013年の朝ドラ「あまちゃん」も手掛けた吉田照幸氏で、今後はこの3人を中心に執筆する。交代理由について同局は「制作上の都合」と説明し、詳細は明かさなかった。

 サンケイスポーツの取材に応じた複数の関係者によると、最大の原因はフジテレビ系「コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-」シリーズやNHK「ハゲタカ」など数々の人気ドラマを手掛けた林氏と制作の中心スタッフとの確執にあったとみられる。

 脚本は一部完成し、9月17日から東京都内のスタジオでクランクインしたが、人物描写やせりふなどを巡り、「2人のそりが合わず、クランクイン前から中心スタッフが書き換えていた」という。

 林氏は来年1月にスタートする天海祐希(52)主演の日本テレビ系「トップナイフ-天才脳外科医の条件-」(土曜後10・0)で脚本を担当することが5日、サンケイスポーツ報道で明らかになったばかり。同局によると、すでに執筆に入り、同作の台本は予定通り進行中だ。

 また、ある民放関係者は「林氏は『エール』のクランクイン前から脚本を降りていたはず。NHKは、林氏が日テレのドラマを担当することを報道され、急いで発表したのではないか」と指摘。クランクイン前から降板が決まっていたとみられ、現時点で撮影は順調だが、“ドタバタ”な状況は周囲も把握しており、「今後は撮影に悪影響が出ないようNHKは全力を尽くすべき」と望む声もある。

 ドラマの世界では、ともに才能がある脚本家と制作スタッフが対立するケースは珍しくないが、朝ドラでの脚本家の途中交代は超異例。大河ドラマでは1974年の「勝海舟」で倉本聰氏(84)が同様の理由で途中交代したことはあるが、今回、雨降って地固まるか注目だ。

★エールにかけ林氏抱負も…

 窪田主演の「エール」は朝ドラ102作目。「長崎の鐘」や「栄冠は君に輝く」などで知られる古関裕而さんと二階堂ふみ(25)演じる妻で歌手でもあった金子(きんこ)さんをモデルに、夫婦愛で歩んだ音楽人生を描く。今年2月に行われた制作発表で林氏は「このドラマが誰かの“エール”になりますように」などと文書で抱負を寄せていた。一方、「エール」脚本の後任となる清水氏はTBS系ドラマ「わたし、定時で帰ります。」、嶋田氏は放送中のフジテレビ系「リカ」などの脚本で知られる。