『週刊ダイヤモンド』11月16日号の第1特集は「腰痛・膝痛・肩痛 医師が教える治療法 整骨院の裏側」。これまでタブー視されていたと言って過言ではない「不正」の実態に踏み込み、整骨院業界の裏側にあるものを、当事者への取材、証言を元に明らかにしている。そして、健康情報の氾濫により何を信じていいかわからない読者のために、腰痛・膝痛・肩痛を解決するための術を、信頼できる医師たちに聞いた。

整骨院って気軽に保険で
マッサージを受けたらダメなの?

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 慢性的な腰痛に悩む清原亮輔さん(仮名・40歳)はある日、健康保険組合から通知を受け取った。マッサージ目的で頻繁に通っていた整骨院の施術に対する保険適用を問題視する内容だ。

「え? 整骨院って保険でマッサージを受けたらダメなの?」

 結論から言うと、慢性的な腰痛のマッサージのために保険適用を受けるのはアウトだ。整骨院で保険が適用される範囲は、骨折や脱臼などのけがに限られる。

 ところが、実際には清原さんのような整骨院での保険を使ったマッサージは日常茶飯事で、保険の「不適切利用」として問題になっている。この他、負傷名などが何も書かれていない保険支給申請書にサインさせる「白紙委任」や、保険対象外の施術を続けるために、施術部位を転々と変えて保険請求する「部位転がし」など、整骨院は不正の温床のような業界だ。

 実態がルールと懸け離れているのは、そうしなければ整骨院の経営がもはや成り立たなくなるからだ。この“裏側”を理解しないと、あなたも知らぬ間に「不正」の共犯になりかねない。

整形外科からは「無駄な医療費増大につながる」
糾弾される整骨院の「不正請求」

 今、多くの国民が腰痛、肩こり、膝・関節痛に悩んでいる。日本では腰痛だけでも年間の経済損失は3兆円に上る。そして、米国では強力な鎮痛剤「オピイオイド」中毒が蔓延し、トランプ大統領が非常事態宣言をしたほどだ。

 日本にとって「痛み」は、早急に解消すべき課題だが、国民を巻き込んだ対立構造が起こるなど、状況は混沌としている。

 例えば、整骨院の「不正請求」は、整形外科から「無駄な医療費増大につながる」と糾弾され、両者は激しく対立する。しかし、慢性痛を抱える国民としては「整骨院で手軽に安く保険でマッサージを受けたい」というのも本音だろう。