かつて朝鮮半島で一般的だった三つ編みでなく、ざくざく短く切った髪型にしたのは、無理矢理連れ去られたことを表し、握りしめた手は一日も早く日本政府から謝罪を勝ち取るという気持ち、そして裸足は被害を受けた元慰安婦のハルモニたちの苦労をそれぞれ象徴しているという。

 費用の拠出にはすべて挺対協が関わっている。挺対協をめぐっては、あまりにも鮮明な反日姿勢を掲げ頑なに日本政府に謝罪と賠償を要求してきた経緯から、韓国国内でも批判が少なくない。

 2015年には元慰安婦からも、「当事者の意見も聞かず、日本との協議を拒否している」と、その活動方針を批判されてきた。

 そうした市民団体からの依頼と資金で少女像を制作し続けることは、本当に慰安婦問題の解決につながるのか。

 筆者が取材した関係者によると、夫婦は今後、さらにカナダやオーストラリア、さらにブラジルに設置するための作品を制作中だという。さらに別の関係者からこんな驚くべき情報を得た。

「釜山の日本総領事館前に少女像を設置する動きが進んでいて、設置予定日は12月28日。釜山向けの少女像は既に完成済みでやはり夫婦の手によるものです。日本外務省は韓国側に対して、設置に許可を出さないよう圧力をかけていますが、もはや政府が機能していないので予断を許しません」

 12月28日とは、ちょうど日韓合意を発表した日である。その一年後に企画されたこの設置運動は、実行されれば暴挙と言うほかない。

 工房を訪ねる直前、夫婦に電話で取材を申し込んだところ、当初は予定が空いていれば喜んで受けると言い、日程を確認して折り返すとしていた。しかし、しばらくすると「日本のメディアは歪曲報道をするので取材に応じられない」とメールで連絡してきた。

 工房の前で二日間待っていたが、結局、夫婦は現れなかった。夜の帳が下りると、半島特有の厳しい寒さが身を襲う。慰安婦問題解決の道が再び閉ざされないよう願うばかりである。