マイクロソフトは、開発が進められてきたChromium版Edgeブラウザーの正式版を、来年1月15日から配布すると発表した。ベータ版は、現在Edge Insiderにおいて提供されている(https://www.microsoftedgeinsider.com/)。今回はこのChromium版Edgeについて解説する。
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左上からChrome、Chromium版Edge Devチャンネル版、同Betaチャンネル版。タスクバーのアイコンに違いがある点に注意 |
あらためてChromium版Edgeとは?
Chromeと同じエンジンを用いたEdge
Chromium版Edgeは、グーグルのChromeのオープンソース版を利用して作られたEdgeだ。簡単に言えば、Edgeの皮を被ったChromeである。
ウェブページを表示するHTMLレンダリングエンジンやJavaScriptの実行エンジンはChromeと同等で、Chromeの拡張機能もそのまま利用できる。さらにChromium版Edgeの独自機能と、旧Edgeが持っていた機能(Web Noteやイマーシブリーダーなど)も搭載されている。
現在のWindows 10に搭載されているEdgeのHTMLレンダリングエンジンである「EdgeHTML」は、IEで使われていたTraidentをベースにしたもので、JavaScript実行エンジンも同じくIE上のChakraから開発が進められたものだ(ただし、こちらもChakraと呼ばれている)。
これに対して、Chromium版EdgeのレンダリングエンジンはChromeと同じ「Blink」、JavaScript実行エンジンは「V8」を利用する。このため、HTMLの表示やJavaScriptの互換性に関しては、Chromeとほぼ同等(ChromeとChromiumは同一ソースコードからそれぞれ独自に実装されたものと考えられ、完全に同じではない)である。ただし、Chromium版Edgeは前述したようにMicrosoft独自機能や旧Edgeから引き継いだ機能などがあり、ウェブブラウザーというソフトウェアとしては、Chromeとは別ものである。
プログラムとしてのChromium版Edgeと旧Edgeの最大の違いは、旧EdgeがUWPであったのに対して、Chromium版Edgeは、デスクトップアプリ(Win32アプリケーション)に戻った点だ。UWPを普及させようとUWP化したのだろうが、UWPであるがゆえの制限もあり、Windows 10の登場当初は機能不足が目立ったが、その後も改善が続けられてきた。
性能面でも一部のベンチマーク項目では、ChromeやFireFoxを上回ることはあるものの、総合的には後塵を拝し、第3位のブラウザという位置付けだった。拡張機能でも先行したChromeやFireFoxに水を空けられている状態。また、ウェブサイト側の対応では、IEより優先順位が低く、積極的に対応をうたうのはマイクロソフトのサイトぐらいだ(その割には最近までIEでしか動かないSilverlightを利用したページもあったが)。このままでは先の見込みもないということで方向転換したのが、Chromium版Edgeと言える。
なお、実装されているプラットフォームはWindows 10だけでない。Windows 7/8.1にWindows Server 2016/2008R2~2012R2、さらにはmacOS向けバージョンもある。このほかにマイクロソフトは、AndroidとiOSにおいて、すでにEdgeブランドのブラウザーを公開している。
Windows/macOS版に関しては、現在「Canary」「Dev」「Beta」の3つのチャンネルがある。これは開発時期と安定度の違いである。Canaryは、いわゆる“できたて”であり、毎日更新される。これに対してDevは開発者向けで、社内テスト後の公開でCanaryより安定度があるが、更新は1週間に1度となる。Betaは、さらに安定度があり、更新は6週間に一度となっている。
とりあえず、使ってみるならBetaだろうが、まだ一部の機能が実装されていない。現時点のフル機能が搭載されており、さらに一定の安定感を求めるならDevチャンネルを選ぶべきだろう。なお、これらのチャンネルのEdgeは、Windows上では別アプリケーション扱いとなるため、従来のEdgeとは共存が可能だ。
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