――黒人問題に関しては、単純に日本人が日常生活のなかで黒人に触れる機会が少なくて、慣れていないというのが大きいのかなと思うんですよね。漫画の中で、星野さんが日本人の女性に告白したときに、「ありがとう」でも「ごめんね」でもなく、「その発想がない」って言われてフラれたっていう話がありましたよね。それは本当に正直なところで、その女性は、そういうことを考えたことがなかったんでしょうね。
そうそう、差別以前の問題。そもそも考えたことがない、というような感じでした。悲しかったなあ。まあ、固定観念とか先入観はありますけどね。「アフリカは貧しい」とか「黒人は足が速い」とか。そういう先入観でしゃべっているだけですからね。彼らが持っている、理解のためのカードを増やしてあげれば、見えてくるものも違ってくると思うんです。
――そんな日本でも、最近は外国人の観光客や居住者がどんどん増えています。星野さんは日本で暮らしていて、なにか空気の変化を感じることはありますか?
日本語が上手い白人とか黒人を見て、昔の人は驚いていたけど、今は驚く人は減ったかもしれないですね。街で僕が話しかけられるときにも、昔は絶対英語だったけど、最近は日本語で話しかけてくる人が増えました。
――そんな状況の中で、星野さんは自分の社会的な役割のようなものを意識したりすることもあるんでしょうか。
うーん、もともとそこまで大げさなつもりでやってなかったんですけどね。漫画を描いてSNSで公開して、フォロワーがちょこちょこ増えて、見てくれる人がいたらいいな、と思ってたぐらいだったんで、ここまでになるとは思ってなくて。この何カ月かでそういうことも考えるようになりましたね。
――こういう漫画を描いていると、いろいろな立場の人から意見も来るだろうし、何かしら役割を背負わされる感じはありそうですよね。
そうそう、いろいろ来るんですよ。アフリカハーフのお母さんが「うちの子供がルネさんの漫画を見て元気づけられています」ってコメントをくれたり。「みんなルネさんが代表だと思ってるんで」って言っていたりして。代表なんだなあ、って(笑)。この間は新聞社の人から「移民問題についてルネさんの意見を聞きたい」って言われて。
いやいや、それ、僕の担当じゃないよ、って思ったんですけど。僕が日本に来たのは4歳だから、日本人と大して変わらないんですよ。
――背負わされますね。
もう、あえて背負ってみようとは思っていますけどね。やってみたら、なにか発見があるかもしれないですから。
(撮影・小川光)