最速147キロ、全球ストレートで最後の対決は終わった。
「引退する人のボールとは思えなかった。僕でいいのかとも思ったけど、すごい投手の最後に立ち会えて、光栄です」。大島とメッセンジャーはNPBでのキャリアはともに10年。いわば「同期生」の対決は、メッセンジャーから見て坂本勇、長野、村田修一に次いで4番目に多い114度。打率3割2分4厘と大島に分があったが、最後は空振り三振で去りゆく同期生に花を持たせた。
「そりゃいい投手です。角度があるし、力もある。スライダーはキレて、フォークがストレートと同じ軌道から落ちてくる。いかにあの真っすぐを打つか。そう思って戦ってきた相手です」
大島が引退試合の相手を務めるのはヤクルト・館山(21日、二ゴロ)、広島・永川(23日、一ゴロ)に続いて3度目だ。真剣勝負を相手は望むが、こちらは「1球で終わらせては」や「四球じゃかわいそう」と気を使う。そんな難しい立場も快く引き受けられるのは、彼の最多安打(174)が確定したからだ。28日夜、坂本勇が173安打で途中交代した瞬間、僕は偶然彼の横にいた。そこには重圧から解放された穏やかな顔があった。
「毎日、僕を元気にグラウンドに立たせてくれるトレーナーや、練習を手伝ってくれるBP(打撃投手)、BC(ブルペン捕手)さんのおかげだということを忘れたくないです」。自分のことはひと言も言わず、スタッフへの感謝を伝えた。代わりに僕が大島の自己管理を伝えよう。
彼はこの3月から禁酒した。「何かをつかむために、自分の好きな何かを我慢しよう」と。以後、1滴も飲まず。忍耐はタイトルで報われた。「明日の夜、飲めるのが本当に楽しみで…」。全日程を終えれば禁は解かれる。大島はよく頑張った。浴びるほど飲めばいい。