「一緒に探検したい」と思ってもらいたい―映像ディレクターに聞く 「ちょこっとアニメ けものフレンズ3」制作秘話
「ちょこっとアニメ けものフレンズ3」第6話より
(C)けものフレンズプロジェクト2G (C)SEGAセガゲームスと「けものフレンズ」プロジェクトがスマートフォンアプリとアーケードゲームで贈る「けものフレンズ3」。同作の公式Twitter(@kemono_friends3)やYouTube、ニコニコ動画、あにてれでは、フレンズたちの日常のひとコマを描くフルCGショートアニメ「ちょこっとアニメ けものフレンズ3(以下「ちょこけも」)」が配信されています。制作を手がけた映像ディレクターは「けものフレンズ」とどのように向き合い、いかにして制作しているのでしょうか? 「月刊ニュータイプ」2019年12月号に掲載されているインタビューの拡張版をお届けします。
――まずは「ちょこけも」を制作することになった経緯をお聞かせください。
ディレクター 「けものフレンズ」はさまざまな形で展開されていますが、やはり一番多いのはアニメで知った方たちだと思います。そこで、ゲームという形を取った「けものフレンズ3」にも興味を持っていただくために、ゲーム用に制作した3DモデリングをベースにしたCGアニメを作れないだろうか……とお話をいただいたのがきっかけです。
――ゲーム用の3Dモデルでアニメを制作されたというお話ですが、さまざまなゲームの中で見られる「ムービー」とはどのように制作過程が異なるのでしょうか。
ディレクター ゲームのムービーは、(ゲームの)開発会社がモーションキャプチャーで動きを取り込み、それを元にデザイナーがモーションやカメラの調整しつつエフェクトを追加して……という流れで制作されることが多いと思いますが、「ちょこけも」の制作過程はTVアニメに近いですね。絵コンテを切って、いただいた3Dモデルを手付けでアニメーションさせ、その後レンダリングして撮影処理します。細かい絵作りはアニメの方が自由に手を入れられますね。ただ、ゲーム用の3Dモデルであるだけに、動かせる範囲や、調整できる箇所がアニメ用のモデルよりは少なかったので、どこまで妥協せず絵作りやカメラワークを付けられるかに苦心しました。映像のつけかた一つで芝居から得られる印象はいかようにも変わってしまいますので、「けものフレンズらしい優しい世界」を描くことを常に心がけています。
――各話に登場させるフレンズの選定や、脚本の制作はどのように行われたのでしょうか。
ディレクター 脚本はアプリ版のシナリオチームが受け持ってくれています。その脚本を使って音声収録を先に済ませるプレスコで制作しています。アプリ版を遊んでくださっている方はお気づきかもしれませんが、「ちょこけも」に登場するフレンズはアプリのメインストーリーの序盤で登場し、さらに、仲間にむかえやすい顔ぶれになっています。セガゲームスさんからは「ちょこけも」を見てくださった方が、アプリをさわるとすぐいっしょに探検できるように……という狙いだとうかがっています。自分もアプリ版を実際に遊んでいるのですが「なるほどね」と納得しました。アプリをプレイすると、「ちょこけも」を見直したくなりますね。むしろ、各エピソードをもう1話ずつくらい作り足したくなっています(笑)。
――Webで配信すると視聴者からの反応もダイレクトに届くかと思いますが、現状の手ごたえはいかがですか。
ディレクター ご好評をいただけているようでうれしいですし、みなさんのお声から「こういうところに気を付けて作ると喜んでいただけるんだな」とフィードバックも得られています。YouTubeでは、コメント欄で「このシーンが好き」とタイムスタンプを付けて感想を書き込んでくださる方もおられて、そういう感想を見つけたときは、そのカットの担当者に教えてあげたりしています。作っている側からすれば、細かいところまで見ていただけるのは本当にうれしいです。
――これまで制作してこられて、苦心した回や印象に残っている回はありますか。
ディレクター 特に苦労したのは「#10」ですね。登場キャラが多く、お芝居らしいお芝居をさせるというよりも、ミライがひたすらしゃべり倒す脚本になっていますので、かぎりのある尺の中でうまくまとめられるかな、という不安がありました。印象に残っているのは、「#07」でマレーバクとミナミコアリクイがジャパリまんじゅうを食べているシーンですね。
――それまでのエピソードにはなかった、文字を使った演出がされています。
ディレクター 当初は「美味しい~」と漢字表記だったのですが、ひらがな表記の方がフレンズらしいよね、と今の形になりました。このカットに限らず、各エピソードには「次はこれまでやっていなかった表現をしよう」というチャレンジが込められています。「#03」で、マレーバクを怖がらせるミナミコアリクイが何度もトラックアップされ、怖がるマレーバクが何度もトラックバックされる演出もそのひとつです。TVアニメではあまりしない演出ですよね。
――そのようなチャレンジをしていこうと思った理由、きっかけなどはあったのでしょうか。
ディレクター セガゲームスさんのシナリオと声優さんのお芝居がそれだけでもう十分に魅力的で、最初にそれらをいただいたとき「これをピクチャードラマにするだけでもおもしろいだろうな」と思ったんです。そこに映像をつけるのだから、少なくとも映像としてもおもしろく感じられる何かを盛り込まなければと。エピソードの順番が前後しますが「#06」も苦労したので印象に残っています。カリフォルニアアシカが披露している芸はジャグリングの「3ボールカスケード」というのですが、最初はその動きをきちんと理解できないままに作ってしまって「何か動きが違うぞ?」となってしまいました。(モーションキャプチャーではなく)手付けのみで芝居を作る大変さに直面しましたね。きちんと形になったときは「やっとカスケードができたぞ!」と(笑)。
――まるで実際に習得したかのような(笑)。話は変わりますが、個人的に気に入っているフレンズはいますか?
ディレクター カリフォルニアアシカが好きです。基本的には面倒見がいいのに「今度ガイドさんに温泉について聞いておかなくちゃ…」と、見栄を張ってしまう一面もあるのがかわいいですね。映像を作るうえでは、カリフォルニアラッコとミナミコアリクイが動かしやすくて好きです。まだ「ちょこけも」に出ていないフレンズでは、ハシビロコウが好きですね!
――10月21日には「新章」と銘打たれた「#11」が配信されました。最後に、このエピソードを含めた「新章」の見どころをお聞かせください。
ディレクター 「#11」はアルパカ・スリをとにかくかっこよく撮りたい、という一心で作りました。見てくださったみなさんに、まるで王子様のようだと感じてもらえれば成功だと思っています(笑)。「#11」以降の新章はゲームと同じ時間軸のお話で、これまで「ちょこけも」には出てこなかったフレンズがどんどん登場しますのでご期待ください。また、「#11」には新章がアプリ版に対してどのような立ち位置の物語になるかのヒントも込めています。こういうお話なのかな、次はどんなフレンズが出るのかなと想像しながら楽しんでいただければ幸いです。今後も、アプリ版をより楽しめるような、「このフレンズといっしょに探検したい」と思っていただけるような映像作りを目指していきます。
■スマートフォンアプリ「けものフレンズ3」
配信中(2019年9月24日より)
配信機種:iOS/Android対応端末
ジャンル:フレンズたちと"わくわくどきどき探検"するRPG
価格:基本無料(アイテム課金あり)
■アーケードゲーム「けものフレンズ3 プラネットツアーズ」
稼働中(2019年9月26日より)
ジャンル:フレンズたちが"ちからくらべ"するカードゲーム
プレイ人数:1人
リンク:「けものフレンズ3」公式サイト