SNSに疲れた現代人に贈る「面白さ」の本質論

万人ウケする「面白さ」がすべてではない

新しいことを知ることの「面白さ」は、自分を成長させ、元気にしてくれる(写真:imacoconut/iStock)
クリエーティビティーを用いる仕事をしていれば「どうすればもっと面白くなるか」と、日々格闘することもあるだろう。近年はとくにSNSの普及で、万人に「ウケる」「映える」言葉やモノ、ことがらを、多くの人が探すようになった。
人気ミステリー作家の森博嗣氏による『面白いとは何か?面白く生きるには?』より抜粋し「面白さ」の本質が何にあるのか、再考してみたい。

「面白い」の1つの要素として、「興味深い」という方向性がある。頭脳の働きの面白さ、クイズやパズルなどの「面白さ」が、これである。

単に歴史について書かれた本や、科学者の一生を語った伝記なども、読む人によっては「面白い」ものになる。単に「知る」だけでも「面白い」と感じる。自分が興味を抱いているテーマであれば、なおさら「面白さ」を感じるはずだ。いったい、知ることの何がそんなに面白いのだろうか?

「知る」とは、「知らない」ことに気づくこと

僕は24歳から48歳まで研究が仕事だった。ずっと研究に没頭する生活だった。研究というのは、「知る」ことの究極ともいえる行為だろう。

普通の「知る」は、人に教えてもらうか、調べるか、検索するかでほぼ実現するが、研究とは、世界で自分が初めて知るという意味だから、研究する対象は、その答えが世界のどこにも存在しない。誰も知らないことだから研究するのだ。

研究者というのは、この究極の「知る」を体験する人のことだが、そのモチベーションは、「知る」ことの面白さに尽きる。世の中にこんな面白いことがあったのか、という体験ができる。

もちろん、研究成果は、社会に認められ、なんらかの利益につながる。例えば、学会から賞をもらったり、あるときは、特許で儲かったりする。だが、それは微々たる問題で、最初の「知る」面白さに比べたらかすんでしまうだろう。自分が知らないことに気づくのが、「知る」という体験だといえる。

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  • 如月五月ブログ/更新6407c324596e
    そもそも、

    SNS疲れというのは、周囲を「楽しませよう」とした結果、
    実際には自分は「楽しめていない」ことが原因だろう。

    「いいね」の獲得は、自分も楽しめた「結果」であればいいが
    他人を楽しませる「目的」になっては本末転倒だ。

    人生の面白さは「知る」「気づく」ことから始まるというのは
    正論だと思う。


    up27
    down10
    2019/11/9 07:07
  • はるb0f092acc0f2
    >古来、多くのユーモアは、少なからず差別的であり、戦争や死を扱ったブラックなものだった。差別を笑い飛ばしているのに、「差別で笑うとはなにごとだ」と真剣に抗議されれば、たしかに答えようがない。だが、そこが面白かったことは事実であり、大勢の人が笑ったことも、歴史的事実なのだ。

    確かにそうだと思うけれども、どんな表現にも、「何を描くか」という側面だけでなく、「どう描くか」という側面があると思う。
    例えば、同じように「差別」を描いていたとしても、それこそ筆者の言うように、差別を「笑い飛ばす」ような表現なら笑えるかもしれないが、人をからかったり見下したりして笑うような表現では、面白くもなんともないし、笑えない。
    そういうものが好きな人もいるかもしれないし、そういう表現も世界のどこかには必要なのかもしれないが、少なくとも私は、ユーモアには、人を勇気づけたり元気づけたりするところがあって欲しいと思う。
    up7
    down3
    2019/11/9 08:01
  • AJRAbdebf3631e11
    人は、他人のことを大して気にしていないと、早く気づくことが大事。もう少し、他人に興味ない生き方が出来んもんかと思う今日この頃。興味なくても、そりゃ、住まいのお隣さんが何かあったら救急車や消防車を呼ぶだろうし、道でご老人などが困っていたら何かしようかと思うし、その程度で良いと思いますよ。
    up6
    down3
    2019/11/9 10:07
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