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(喜美子)失礼します。
♪~
喜美子にとってそれは 初めて見る光景でした。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も涙に負けるもんか」
起きてたん?
(直子)夢見た… 怖い夢…。
空が明るい。
夕焼けや。
空襲や。花火ちゃう?
空襲で みんな逃げてくのにうちだけ置いてかれた。
姉ちゃんが手ぇ離したからや。
まだ そんな夢見るん?
姉ちゃんが帰ってきたからや…。見たん久しぶりや。
こっちおいで。ええ。
ええから おいで。 手ぇつないで寝よ?
(百合子)ずるい。あ…。
百合子も起きたん?うん。
ほな 百合子も手ぇつないで寝よか?うん。
3人で 手ぇつないで寝よ。子どもやん。
ええやん。 子どもでええやん。3人でいる時は 子どもでええよ。
もっと くっつき。うん。
楽しいこと考えて寝え。楽しいことなんかない。
ほな 好きなこと。
家庭科の先生好きや 優しい。ほんで家庭科好きになったん?
うん。ふ~ん。 直子は?
ない。食べ物やったらあるやん。
ゆで卵? まだ好き?好き。
ほな ゆで卵に囲まれてる夢 見ぃ。
フフ… そんな夢。
やっと笑た。 これで怖い夢飛んでったわ。
楽しいこと 好きなことええこと考えながら寝なさい。
顔 にやけるで。にやにやしながら寝なさい。
(笑い声)おやすみ。
おやすみなさい。おやすみなさい。
おやすみ。
そんなことを言いながら眠れないのは 喜美子です。
丸熊陶業の作業場で見た光景がどうにも気になって しかたありません。
♪~
(照子)ご苦労さん!
喜美子~!
やった~! いた~ 間に合うた~。
(八重子)お帰りなさい 照子さん今日も 可愛らしいな。
(緑)ほんま いつ見ても可愛らし。お帰りなさい。
ありがとう。
久しぶりに その顔見た…。
ほな 帰らしてもらいます。あっ ご苦労さ~ん。
ご苦労さまでございますぅ。失礼します。
うちも もう帰んで。せっかく会いに来たのに。
いつも学校から帰ってくるともういいひん。
4時で終わりやもん。9時から4時な。 簡単な仕事やろ?
なるべく楽な仕事にしてあげてほしいてうちが言うてあげてん。
仕事は楽な方がええやろ!?仕事は大変な方がおもろいで?
ほな 今やってる仕事つまらへんのか?
つまらへんとは言わへんけど…。
何や 絵描いてる人いやるやん。
ああ 絵付けの職人さんら?そう その絵付けの話。
(物音)
(信作)ついに お前らも「信様 信様」言う時が来たで!キャ~キャ~言う時が来たんや!見とけよ!
♪~
「大将 やってる?」。「キャ~! 信様~ かっこいい!」。
見てみぃ! ええやろ? 背広や背広~!
英語で言うたら スーツ。 スーツ。「キャ~! 信様~!」。
こいつ ほんま変わったで伊賀のおばあちゃん亡くなってから。
あっ その話 聞く? 長うなるけど 聞く?いらんわ!
あっ ほやけど こいつ友達いいひんの変わらへんで?
お前もやんけ。こいつもな 友達おらんさけ喜美子帰ってきたん涙出るほど うれしいねん。
こいつ言うな!お前かて うれしいやろ!
それ 買うてもろたん?うん。ふ~ん。
4月から それ着て役場で働くのん?うん。
休まんと行くんやで?うん。
今 絵付けの話 しててん。 絵付けなんて昔 そんなんなかったやんな?
ああ 火鉢の?うん。 あんなん見たん初めてや。
ほやけど 立ち入り禁止言われた。ああ 親方が気難しいねん。
金にも うるさい。 反り合わん。
誰と合わんの? あめ食べる?うちのお父さんと。 何のあめ?
もめてばっかりでなあ。 何や このあめ?
食べてみ。
酸っぱいあめや! 新発売!
まずっ! 何 これ~!話そらさんと 絵付けの話…。
どうしたらええ?変な顔。 喜美子も食べる? はい。
ちょっ… もう ええねん。食べてみ。絵付けのこと知りたいねん!
誰もいいひんやん 入ろ。
えっ ええの?いいひんねんもん ええやろ。
絵付けの火鉢に力入れ始めたんは 最近や。
ちょうど喜美子が大阪行った頃からかなあ?
火鉢に絵を…。そや。
これが デザインな。デザイン…?
親方がデザイン考えてうちのお父さんに提案するねん。
ほんで デザインが決まったらそれを ぎょうさん作るんや。
ここで 色塗ったり…。分担作業やな?
そや。 ほんで絵描いて塗った火鉢はな…。窯 持ってって焼くんやな。
そっ。 そしたら こうなるんや。
今 信楽の絵付けの火鉢は高級品やいうて売れてるもんな。
・親方~!・親方!
えっ? え~ どうする!?勝手に入ったん見つかったら…。
ええやん 別に。立ち入り禁止言うてたで!? 叱られる!
ほな…。隠れぇ 隠れぇ。
え… どこに!? どこに!?火鉢!
無理やん!
親方!
(城崎)邪魔や。あ…。
すいません。
(原下)親方ほんまに丸熊さんと手ぇ切るんですか?
ああ。せやけど…。
引く手は あまたや。よそ移る はよ片づけぇ。
はい。 撤収や!(3人)はい!
加山さん?
(加山)これ 少し多めに包んどきました。
引き止めへんのですか。ここまで こじれたら しゃあないですわ。
絵付け職人がいいひんようなったら誰が火鉢に 絵ぇ描きますんやろなあ。
新しい絵付け職人が早々に見つかるとは思えまへんけど…そのあとが楽しみですわ。
少ないけど 頂いときまひょ。
お世話になりました。
何や 感じ悪かったなああの親方いうの…。
ほやけど いきなりあんな場面に出くわすなんてのう。
おう! おう 何 考えてんねん?
丸熊陶業出てからず~っと 何 考えてん…?
戻る。えっ?戻るわ!えっ?
おい! えっ!?
絵付けをやりたい?
うまくできるかどうか分からへんけどやってみたい。
やらせてほしい!それを ずっと考えてたん?
言わんかったら後悔する思て…。喜美子が絵付けを?
やらしてやれや。そんなんできる?
だって こいつ 絵ぇうまいやんけやれるかも分からんで。
絵ぇ描くことやったら子どもの頃から得意やで。
そやけど子どものお絵描きとはちゃうで?
しかも 女の絵付け師なんて聞いたことないで?
女は やれへんの?やってる人 いいひん。
女は やったら あかんの?女でも やれるんちゃうん?
そやから やってる人 いいひんねん。
絵付けも陶芸も みんな作ってるのは男や男だけや 男の世界や。
照子 昔 婦人警官に憧れてたやん?女のお巡りさん あれかて最初はさ…。
おう おう そや!女にも やれるいうことになったやんけ。
聞くだけ聞いてみてくれへん?
何やったら うち照子のお父さんに頭下げに行くで?
待ってえや ちょっと…。
絵付け職人辞めてしもて困ってるんちゃうの?
そら困ってるやろけど…。お願いします。 照子 お願いしますぅ!
まあ… そんなに言うならどうしても言うなら…。
こいつ通さんと 直接…。分かった 分かった。
うちに任して。 うちから話す。
どうせ 辞めてしもて誰もいやらんもん 絵付けする人。
明日 あの作業場行き?ほんで今夜 お父さんに早速 言うとくし。
ほんま?
ありがとう 照子!
おお… 気分ええなあ。おう おう おう よかったな。
じゃあ 俺も!わっ 気持ち悪い!何でやねん!
ギュ~仕返しや~!
喜美子は 新しい道を見つけました。
うれしくてその日 父が酔って帰ってきても新しい道を見つけたことが うれしくて…。
その道は キラキラと輝いて見えました。
この時までは…。
♪~
ちや子さんや~!そうや 来たで~。
つきあってるんちゃう?結婚!?
喜美子さん…。僕は はよ結婚したい思てます。
誰に…!うちは そんな根性なしちゃうわ!
ええよ。やったるで~!