トランプ氏、対中関税撤廃「合意していない」

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2019/11/9 0:26 (2019/11/9 3:02更新)

トランプ米大統領(8日、ワシントン)=ロイター

トランプ米大統領(8日、ワシントン)=ロイター

【ワシントン=鳳山太成】トランプ米大統領は8日、中国との貿易協議で発動済みの制裁関税を撤廃することに「合意していない」と述べた。中国政府は関税の段階的な撤廃で米国と一致したと発表しており、意見の食い違いが表面化した形だ。トランプ氏は合意文書に署名する首脳会談について、米国での開催を改めて要求した。交渉の行方はなお予断を許さない。

ホワイトハウスで記者団に「中国は(関税の)取り下げを求めているが、私は何も合意していない」と述べた。発動済み関税のうち「中国も『私が全部を取り下げることはない』と分かっているので、一部の取り下げを要求している」と指摘した。最終的に米国が関税の一部撤廃に合意する可能性は、完全には排除しなかった。

米中は首脳会談で貿易交渉の部分合意を探っており、追加関税の扱いは焦点の1つ。中国商務省は7日「(米中両国が)同じペース、同じ割合で発動済みの追加関税を取り消すことは第1段階の重要な条件だ」と述べたが、詳細は明らかにしていなかった。

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ナバロ大統領補佐官も7日、中国の発表を巡り「合意していない。決めるのはトランプ氏だけだ」と反論した。米政権内には中国への圧力が弱まるとして関税撤廃に慎重論も根強い。対中強硬派が巻き返している可能性がある。

トランプ氏は8日、首脳会談の場所に関して「アイオワ州など農業が盛んな場所だろう。(開催地は)米国になる」と語り、改めて米本土での開催にこだわりをみせた。2020年の大統領選をにらみ、貿易戦争で打撃を受けた農家の支持者にアピールしたい考えだ。

一方、習近平(シー・ジンピン)国家主席は米本土での会談に慎重になっているとの見方がある。英国やスウェーデン、スイスなど欧州各国での開催も取り沙汰されている。当初は16~17日にチリで開催が予定されていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて会談する方向だったが、現地の治安悪化で中止となった。

米政権は18年7月以降に約3600億ドル(約39兆円)分の中国製品に最大25%の関税を課した。19年12月15日にはスマートフォンなど1600億ドル分に15%の関税を課す予定。中国政府は協議を通して追加関税を全廃するよう米国に強く求めてきた。

もう一つの焦点である中国による米農産物の購入額でもまだ折り合えていない。トランプ氏は2年以内に年500億ドルに増やすよう迫っている。中国は「非現実的だ」と反論、ひとまず両国が貿易戦争に突入する前の200億ドル規模に戻すことを提案しているとの見方がある。

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