東京・池袋の都道で乗用車が暴走し、近所に住む母子2人が死亡、8人がけがをした事故で、現場にブレーキ痕がなく、正常に作動したエアバッグ含め乗用車に不具合が確認されていないことが20日、警視庁への取材で分かった。警視庁は運転していた旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長(87)が、誤ってアクセルを踏み続けた操作ミスの可能性を視野に捜査。車の操作状況を自動記録する「イベントデータレコーダー(EDR)」などを解析している。
警視庁によると、飯塚元院長の運転した車はガードパイプに接触後、約150メートル暴走して横断歩道に突っ込み、松永真菜さん(31)と長女の莉子ちゃん(3)が死亡。防犯カメラには、猛スピードの車が交差点に進入し、歩行者を次々とはねる様子が写っていた。飯塚元院長は「アクセルが戻らなくなった」と説明しているが車に不具合はなかった。
飯塚元院長は東大を卒業した53年に旧通産省(現経産省)に入省した官僚で、86年に工業技術院長に就任。クボタに移り、92年には日本人で初の国際度量衡局の諮問委員長に就任し、副社長になった。飯塚元院長と同じ都内の集合住宅に住む男性は「奥さんと2人暮らしで、ここ何年かで歩くのは結構きつそうになっていた。つえを持って歩いていた」と語った。「車庫入れがちゃんとできないのを見て危ないと思った」との証言もある。
事故現場付近には献花台が設置され、花束や菓子、飲みものが備えられた。手を合わせて泣きだす女性、家族連れが後を絶たず、悲しみに包まれた。
◆EDR(イベント・データ・レコーダー) フルブレーキ時にタイヤがロックしないABS(アンチロック・ブレーキシステム)の普及で路面にブレーキ痕が残らないことが増え、事故分析が難しくなった。またエアバッグ作動時の状況明確に判定するため、訴訟大国の米国で2000年に搭載が義務化された。04年からトヨタら国内メーカーも輸出車を中心に搭載。衝突時の車速、ブレーキ操作などが衝突の数秒前から記録されている。ドライバーの運転ミスか、車側のシステム不具合で生じた事故かの判定資料に用いられる。