NEWS / HEADLINE - 2019.11.8

10万を超える不交付撤回を求める署名は文化庁へ提出されず。文化庁側の対応などを疑問視

本日予定されていた「あいちトリエンナーレ2019」への補助金不交付の撤回を求める署名の提出が取りやめとなった。

 

文化庁への署名提出前の様子(中央が藤井光、小泉明郎)

 11月8日にReFreedon_Aichiが文化庁に提出予定だった、「あいちトリエンナーレ2019」への補助金不交付撤回を求める10万を超える署名の提出が、急遽取りやめとなった。

 ReFreedom_Aichiは、あいちトリエンナーレ2019において展示中止作品の再開に向けて活動した参加作家らによるプロジェクト。この日は、小泉明郎や藤井光らが参加した。午前中に日比谷図書文化会館に集まった参加者は、それぞれの自己紹介を経て、12時より文化庁に移動を開始。文化庁到着後はオープンマイクを使用し、参加者がメッセージを伝えるパフォーマンスを行った。途中、乱入者などがあったものの、13時には予定通り、書面提出のため文化庁に入館。提出の様子は音声により外へ中継された。

 しかし文化庁が用意した部屋が手狭であり、もっと広い部屋を用意するよう提出側が要求したが応えられなかった。文化庁側は、提出側の質問に対し「ツイッターなどで噂として広まっていた情報をもとに不交付決定したわけではない」と説明。また「不交付についてはこれから検討していくので、まだ(今後について)具体的に決まっていることはない」と回答した。

 提出側は、撤回を決めた人物との対話も要求。しかし、文化庁側は個人ではなく庁としての判断であると回答し、議事録が存在しないディスカッションで決まったものだとした。会議で決定した事項であるかどうかの明確な言及を避けたかたちとなり、決定にいたるメモ等の記録の存在も不明瞭であるとされた。

 最終的に提出側は、文化庁側が署名を受け取る態度ではないと判断。参加していた小泉明郎は、「あまりにも小さな部屋だった、文化庁側が10万人の署名を受け取る態度にあると思えなかった」と語った。また、藤井光も「 不交付の決定プロセスが不明瞭だった、その調査を待つ、または促す必要がある」と述べた。

 詳細は、提出側が予定している記者会見で説明される予定。

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NEWS / HEADLINE - 2019.11.8

「自国を批判的に表現できるのは、成熟と余裕のある証拠」。「JAPAN UNLIMITED」の公認撤回に対し参加アーティストがコメント

オーストリア・ウィーンで開催中の展覧会「JAPAN UNLIMITED」の公認を、11月5日までに、在オーストリア日本大使館が取り消した。本展に参加するアーティストのひとりであり、ウィーンを拠点に制作活動を続ける丹羽良徳が、本件についてコメントを寄せた。

丹羽良徳 日本共産党にカール・マルクスを掲げるように提案する 2013 Installation view at frei_raum Q21 exhibition space MuseumsQuartier Wien, 2019 Photo by Pablo Chiereghin Courtesy of Q21 / MQ and Marcello Farabegoli Projects  (c)Yoshinori NIWA

 出展作品の政治的な内容が、在オーストリア日本大使館により問題視され、日本とオーストリアの国交150年の記念事業としての公認を取り消された「JAPAN UNLIMITED」。この展覧会に参加するウィーン拠点のアーティスト・丹羽良徳が、この件に関して美術手帖にコメントを寄せた。

 丹羽は本展に《日本共産党にカール・マルクスを掲げるように提案する》(2013)や、《私的空間からアドルフ・ヒトラーを引き摺り出す》(2018)を出展している。

 政治制度や歴史を問い直す作品をつくり続ける丹羽。展覧会の公認撤回という事態については、次のようにコメントしている。

 在オーストリア日本大使館による「日本オーストリア友好150周年事業」の撤回は、大使館からすれば国内批判をかわすための緊急措置としか思ってないだろう。展覧会に金銭的支援もないから撤回も簡単だろうし、コメントもなかったようだ。

 ただ大使館職員も展覧会イベントに参加していたので、内容は充分知っていたはずだ。自民党政治家から圧力を受けたからと言って一度認定したものを易々とオープニングの5週間後に撤回する保身的な態度は、オーストリアの企画側には困惑とネガティブな印象を与えた。しかしそれは同時に、展覧会企画の核心となる「日本の危うい政治的状況を映し出す『予定通りの過剰な反応』を引き出すことに成功した」と受け取られているのが本音のようだ。

 同じ施設のほかの展覧会と比べても来場者が多く、評価も高いと聞く。自国を批判的に表現できるのは、成熟と余裕のある証拠で、日本社会がもう一歩オープンで豊かな社会構築に踏み出せるよう、日本の中央政府が何を言おうとも、我々は日本のために働いているわけではないのだから、もっと自由に、もっと批判的に、世界各地の表現者たちと協働していきたい。