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バ美肉エンジニアのXRDC2019参加レポート

バ美肉エンジニアのXRDC2019参加レポート

はじめに

こんにちは。DMM VR labのクレウスです。
今回はDMM VR labメンバーとして、弊部の石井とともに、サンフランシスコで現地時間の10/14と10/15の2日間に渡って開催された、xR開発者のためのカンファレンス『XRDC』に参加してきました。
www.xrdconf.com

 Developer Conference(開発者カンファレンス)といえば、ゲーム業界では『GDC』が有名ですが、この『XRDC』は『GDC』から派生して今年から単独で行われるようになったものです。
『GDC』は日本からもゲーム業界から多くの開発者が参加しており、OculusやUnity、Googleのような大きな企業から毎度目玉になるような発表があります。

3月には弊部のパトリックが『GDC 2019』に参加しています。
その際のレポートはこちらをご覧ください。
inside.dmm.com

DMM VR labについて

私が所属するDMM VR labでは、VRゲームの開発を中心に、xR領域の研究開発を行っています。

BOW MAN

2019年8月30日には、VRカジュアルゲーム『BOW MAN』をリリースしました。
bowman.vrlab.dmm.com

 BOW MANはカジュアルな弓ゲーで、VRM形式のアバターを読むことで自アバターとしてゲームをプレイでき、そのうえデフォルトで配信向きの視点になっていますので、OBS等の配信ソフトを使えばすぐに動画配信が可能です。

VRゲームはデバイスの普及が待たれるなか、ユーザーベースが大きくないことが課題でありつつも、BOW MANにおいては、たくさんの方がアバターを使った動画をTwitterに投稿しており、弊社調べでは公開から35日間で累計1500万インプレッションを達成しています。

SDKの提供

アバター文化によってVRゲームの体験を伝えやすくなることが実証できました。
弊部では今後、VRゲームにおけるアバター利用をもっと簡単に実装するための機能をSDKとして提供することを目指して、開発を進めています。

BOW MANはSteamとOculus Riftストアにて$14.99で発売中ですので、気になる方はぜひ購入していただき、アバターでプレイしている様子をTwitterやYouTube等に投稿してみてください!

Oculus Riftの「BOW MAN」 | Oculus

BOW MAN on Steam

アバター文化

そして、私もVRアバター文化とは深い付き合いがあり、自分のアバターを持っています。

普段はVRChatというソーシャルVRに入り浸っているのですが、最近はVRM形式対応アプリが増えており、アバターの利用シーンが増えてきました。
今回の出張でも、VRoidモバイルのAR撮影機能を使用して、あちこちでアバターで記念撮影を行いました。

現地の雰囲気

会場入口

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会場内

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周辺の眺め

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会場のフォート・メイソンからは、『ザ・ロック』と呼ばれる『アルカトラズ島刑務所』がよく見えました。
同名の映画が有名ですね。

Alcatraz Cruises – The official website and only source for tour tickets to Alcatraz Island

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 サンフランシスコの象徴的ランドマークでもある『ゴールデンゲートブリッジ』も一望できました。

セッションレポート

セッションの全体感

VR開発者向けのセッションが中心ながら、同時に、投資家向けのセッションも多い印象でした。
2日間で計4セッション(すべてゲーム開発のカテゴリ)を傾聴したのですが、
各スタジオの開発手法の紹介から、ガチめのQuest移植ノウハウまで幅広くあり、VRゲームに関するものが大半を占めていました。

そのなかでも特に気になったセッションを二つピックアップして、以下にご紹介したいと思います。

Case Study: Ubisoft's Escape Rooms

Ubisoftデュッセルドルフ(ドイツ)のVRチームのローケーションベースVRの開発手法

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少人数でアジャイル開発、カンバン方式(※)の採用など、弊部と似たような開発手法をとっているのがわかりました。

※カンバン方式:トヨタが提唱した生産管理方式
 DMM VR labでも、カンバン方式のTrelloで課題管理を行っています。

制作中のプロトタイプについては、常にプレイヤブルな状態を維持し、いつでもテストプレイできる状態にしていたそうです。

興味深かったのが、VRが得意な人とそうでない人向けにそれぞれ移動方式を変えていたという点です。

VRが得意でない人はテレポート移動なし、1ボタン(Grab)のみでインタラクトできるようにして、
VRが得意な人はテレポート移動可能、2ボタン、Stickで方向を回転できるようにしたとのことでした。

XRDC 2019 Session Scheduler | Case Study: Ubisoft's Escape Rooms

'Blood & Truth': Lessons Learned Making a VR Action Movie

PSVR向けのAAAタイトル"Blood & Truth(邦題: ライアン・マークス リベンジミッション)"の開発秘話

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続いてPlayStation London Studioの方のセッションです。
PSVR向けのAAAタイトル"Blood & Truth(邦題: ライアン・マークス リベンジミッション)"の開発秘話などが聞けました。

 

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本作のVR体験におけるテーマは、"Be the Action Hero(アクション映画のヒーローになれる)"ことで、その体験を主軸として、映画『ダイ・ハード』のマクレーン警部補や『ジョン・ウィック』の主人公になることを目指したそうです。
映画ライクを目指しつつ、あまりにもダイナミックすぎるカメラ移動は酔いや不快感につながるため、カットシーンの導入は避けたとのことです。

 

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これは、AAAタイトルで予算も製作期間もある状態だからこそできることかと思いますが、直接シナリオに関係ない部分やミニゲーム的な要素があると、VRゲームでは特に喜ばれるという話がありました。

 

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このほか、PSVR特有の難しさ(トラッキング範囲やトラッキング方式)についても言及されていました。
全世界に広く出たVR-HMDでもあるので、PC-VRよりもユーザーの身長差などの振れ幅が大きかったそうです。

PSVRといえば、PlayStaion5の発表に伴いPSVR2の噂も出ており、弊部としても大変興味深いところです。

XRDC 2019 Session Scheduler | 'Blood & Truth': Lessons Learned Making a VR Action Movie

展示の紹介

展示の全体感

フォートメイソンのパビリオンを丸々貸切って、合計11ブースの展示がありました。
そのなかでも弊部の取り組みに近く、興味深かったものを二つご紹介しようと思います。

DEEP MOTION

一つ目は、人の体の動きを自動生成できるソフトウェア「DEEP MOTION」のデモ展示ブースです。
ディープラーニングと物理シミュレーションを使用し、自然でリアルなモーションをリアルタイムで生成できるというものです。

 展示ブースのデモではOculus QuestでIKの動きを体験できました。
3点トラッキングのOculus Questでも、人型モデルの手足や肩が自然に動くのでとても驚きました。

また、位置推定が優秀で、コントローラのトラッキングが外れた状態でもさほど違和感なく手のIKが計算されて動いていました。

DeepMotion

GoMotion

二つ目は、手軽で軽量なモーションキャプチャーセンサー「GoMotion Pro」の展示です。

一言で言うと「Perception Neuron(※)の廉価版」で、12個の小型センサーを使い、すべてワイヤレス(WiFi)で手軽にフルボディトラッキングができるというものです。

※小型のセンサーユニットを数珠繋ぎに接続してフルボディでモーションキャプチャーができるもの。
 現在ではPerception Neuron Proが完全ワイヤレスに対応。

センサー間も無線接続なので、Perception Neuronのようにコードがゴチャゴチャにならないのが大きなメリットです。
価格も比較的安価で、期間限定で USD599 (約 65,000円) でプレオーダーができるようでした。


Brand New GoMotion Motion Capture Demo!

GoMotion

 

まとめ

初めての海外出張で、現地のカンファレンスに参加して緊張の連続でしたが、海外のカンファレンスは国際色豊かでまずはそれが印象的でした。
肝心の内容については、母国語が英語でない方も多く登壇されており、シンプルな単語で聞き取りやすかったです。

現地では翻訳・文字起こしアプリをバリバリに駆使するつもりだったのですが、サイレントセッション(※)だったため、残念ながら活躍させることができませんでした。

※ヘッドフォン経由で聞くセッション。省スペースで複数のセッションを防音仕切りなしに行えるメリットがあります。

英語での発信の必要性

参加者として思ったこととしては、必ずしも現地のイベントでなくても良いのですが、何らかの媒体を通して「日本国内のVR活用事例の英語での発信」が必要だと感じました。
日本国内で行われていることは、言語の壁によって、英語圏の人々には全く認識されていません。

アバター文化について

例えば日本でのアバター文化ですが、国内ではソーシャルVR-SNSとして『VRChat』を中心にアバター文化ができつつあります。
先日FacebookもVR-SNS『Facebook Horizon』を発表しました。

『アバター』と一口にいっても、アジア圏と欧州圏ではその定義や傾向が大きく変わります。
欧州圏では、アジア圏のアバター文化はあまり受け入れられないようです。
全体的に、自身に近いリアル寄りのアバターを使う傾向が強いですね。

今後、国内外問わず各社からソーシャルVR-SNSが出てくるだろうと見ていますが、
アバター文化はソーシャルVR-SNSと密接な関係があり、こういった地域ごとの認識や傾向の差はソーシャルVRにおいては特に顕著に出てくると感じています。

こういった大きな流れのなかで、DMM VR labとして、また個人開発者として自分がどのように動くべきかと考えを巡らすために、今回のカンファレンス参加は良い機会となりました。