11月に入り、今年(2019年)もあと2カ月を切りました。年末が近づくと、その年の所得を「棚卸し」する手続きも迫ってきます。会社勤めの人の場合、そろそろ年末調整にまつわる書類が配られているかもしれませんね。昨年から難しくなっている年末調整の書き方について、おさらいしてみましょう。
今年の年末調整で会社から配布される書類は主に下記の3種類になります。
(1)令和元年分 給与所得者の配偶者控除等申告書(2)令和元年分 給与所得者の保険料控除申告書(3)令和2年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
一昨年(17年)までは保険料控除と配偶者特別控除は「保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」として1枚でしたが、昨年(18年)から申告書(1)と(2)の2枚になりました。今年の年末調整も、基本的には昨年と同じ手続きになります(詳しくはこのコラムの「」をご参照ください)。
昨年から配偶者(特別)控除の金額が、本人と配偶者の所得によって細分化されたため、申告書(1)の記入の仕方が難しくなっています。国税庁は昨年同様、申告書への記入を助けるためのエクセルのフォーマット「配偶者控除等申告書(入力用ファイル)」を提供しています。本人と配偶者の給与所得などを入力すると、配偶者(特別)控除の額を自動で計算してくれます。このフォーマットを使って記入し、会社に提出する書類を間に合わせるのもよいでしょう。
次に、申告書(3)は、来年の源泉徴収を行うために事前に家族構成などを知らせる書類です。中でも「源泉控除対象配偶者」の欄は、配偶者(特別)控除を38万円受けることができる予定の配偶者を記載することになります。
源泉控除対象配偶者については、申告書(3)の注釈1や裏面に「来年の所得の見込み額が900万円以下の人で、所得の見込み額が95万円以下である配偶者がいる場合に記入する」旨が説明されています。
共働き夫婦で、来年の所得の見込み額はよくわからないけれど、この欄に配偶者の氏名などを書いたとします。実際に来年1年間を過ごして、夫婦どちらかの所得がこの基準額を上回る場合は、配偶者控除を多く取り過ぎていたことになり、来年の年末調整で追加で税負担が発生し、12月の給与の手取りが減ることになります。
今年の年末調整で会社に提出する書類は以上ですが、来年の年末調整の書類はさらに難しくなるかもしれません。
来年からは一律38万円だった、誰もが受けられる「基礎控除」が、一定の合計所得金額(2400万円)までは48万円に引き上げられます。同時に、「2400万円超、2450万円以下」の人は基礎控除が32万円、「2450万円超、2500万円以下」は16万円、「2500万円超」は0円と段階的に減額されることになります。
また、基礎控除が10万円引き上げられる一方、給与所得控除は10万円引き下げられます。所得から差し引かれる金額が同じだけ増えて減るため、多くの人は納税額は変わりませんが、給与所得控除額には上限があります。今年までは年収1000万円を超えると控除額は220万円の上限に達しますが、来年からは年収850万円超で上限の195万円に達します。このため、年収850万円を超える会社員は、実質増税になります。
ただし、本人や扶養親族が特別障害者である場合や、23歳未満の扶養親族がいる場合は、年収850万円超であっても、最大15万円の「所得金額調整控除」を受けることができます。
来年の年末調整で、会社勤めの人がこれらの基礎控除や所得金額調整控除の適用を受けようとする場合は、会社に申告書を提出することになります。そのため国税庁は、現在の申告書(1)を、基礎控除、配偶者(特別)控除、所得金額調整控除の申告を兼ねた書類にして、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という名称にする見込みです。今年12月末ごろに確定した様式が発表される予定です。
紙の書類で社員に記入を求めることが困難になってきて、人事システムなどで入力フォーマットを用意して、社員が入力して提出するようになっている会社が増えてきたり、来年以降は生命保険料控除の提出などを電子化させようとしたりする動きもあります。
複雑化する傾向にある税にまつわる仕組みですが、できるだけ、どのような計算で自分の納税額が決定されるのかに関心を寄せ、納得しながら納税できると理想的です。
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