九州新幹線長崎ルートの開業に伴う並行在来線(肥前山口―諫早間)に関し、2008年4月に佐賀、長崎両県が鉄道施設の維持管理で合意した「佐賀1対長崎2」の負担割合について、長崎県側が難色を示している。想定していた年間2億3千万円の費用が、資材費や労務費の高騰などで上振れする見通しになっているため。両県が合同で設立する一般社団法人の発足を来年度に控え、交渉が続いているが、山口祥義知事は「値切られているようだ」と不快感を示している。

 07年の両県とJR九州との3者合意時は第三セクターの松浦鉄道などを参考に、年間の維持管理費を2億3千万円と算出していた。しかし、特急が走るJRの線路や踏切、信号などの設備の仕様はより高価で、資材費や労務費も高騰していることから上振れが濃厚になった。

 佐賀県交通政策課は上振れの程度について「協議中で確かなことは言えない」としつつ、倍増する可能性も示唆した。

 現在は月2回ほどのペースで両県とJRによる担当者レベルの協議を実施しており、その中で長崎県から、上振れ分は「佐賀1対長崎2」という合意に沿うことが難しいという考えが示されたという。佐賀県は1対2の負担割合を原則とする考えを伝えている。

 長崎県新幹線・総合交通対策課は取材に対し「協議中なので何も答えられない」と述べるにとどめた。

 両県とJRは3者合意で、並行在来線の長崎線肥前山口―諫早間について、開業後20年間(後に23年間に変更)は経営分離せず、JRが運行し、施設は両県が維持管理する「上下分離方式」を採用した。肥前山口―諫早間の延長は61キロで、県内区間は38キロ。距離で案分すると佐賀が約62%、長崎が約38%になる。

 当時の金子原二郎長崎県知事は「終着駅の効果が最も大きい」として「応分の負担」を表明。両県の交渉の結果、「佐賀1対長崎2」の割合で負担し合うことを08年4月、当時の古川康佐賀県知事と合意した。

 山口知事は10月25日の県庁での「GM21ミーティング」後に報道陣の取材に応じ、「長崎県側が佐賀のつらい思いに配慮したものだった」と当時の経緯を振り返った。その上で「『事業費が増えた分は違う』というのは値切られているような感じ。私たちは合意してきたことは真面目にやっている」と長崎県側の姿勢に疑問を呈した。