宿題を嫌がる、片づけない、歯磨きが雑・・・
お子さんに直してほしいことや、出来るようになって欲しいことは、挙げたらきりがないですよね。
でも、お子さんが「覚醒」のような状態になっていきなりいろいろなことが出来るようになることはあり得ません。
そのため、お子さんの特性や状況に合わせて、重点的に取り組む課題を絞ることになるでしょう。
今回は、そんな「現状を何らかの方向に改善させようとする時」に有効な心構えについて説明します。
それは、『お子さんの色々な行動の仕分けをする』ということです。
ここで説明する考え方は、発達障害のある・ないに関わらず有効な考え方ですが、発達障害のお子さんは得意・不得意の差が激しいため、本人の特性を考慮したうえで行動の仕分けをしていくことは重要であると思います。
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子どもの行動を4つのグループに分ける
お子さんの課題、親御さんが思っている課題がたくさんあると、何から手をつけたらいいか分からなくなりますよね。
そのため、様々な課題を4つのグループにランク付けして整理するということをしていきます。
その4つは、「絶対やめてほしい行動」「できたらやめてほしい行動」「できたらやってほしい行動」「絶対やってほしい行動」です。
分かりやすくするために、だいぶ極端な例を出します。
夜中までネットをしており、そのため朝起きれず学校には行かない。昼間もゲームばかりしていて、自分が食べたものの片付けもしないし、部屋も散らかり放題。お風呂にも数日入っていない。母が注意をすると、物に当たってしまう。
という状況があるとします。
かなり深刻な状況ですよね。
パッと考えると、例の行動は全て「絶対やめてほしい」か「絶対やってほしい」に入れたくなる行動です。
しかし、ここで考えなくてはいけないのは、そのお子さんの特性と現状です。
例えばこの状態のお子さんに学校に行ってもらおうと思ったら、働きかける親御さんも、久しぶりに学校に行くことになるお子さんも、ものすごく大変ではないでしょうか。
もし私がこのご家族の相談をお受けしたら、まず初めの段階では「物に当たる」だけを「絶対やめてほしい行動」に、「朝起きる」だけを「絶対やってほしい行動」にすることを提案をさせていただくことになるかなと思います。
もしかしたら、話し合い次第では生活リズムも一旦横に置いておいて、「物に当たる」だけを「絶対やめてほしい行動」としてその他の行動は全ての「できたら」に入れてしまうかもしれません。
「その行動のある・ないで負担感がものすごく異なる」ようなポイントだけに絞ることで、課題を明確にしながら全般的に良い方向に繋がるように促していきます。
4つに分けたグループのそれぞれに対してどう対応するか
それぞれのグループに対する対応ですが、具体的な対応については、これはもうオーダーメイドの丁寧な対応が必要になるという前置きをせざるを得ません。
「絶対に」のグループの対応
対応についての基本的な考え方としては、まずは4つのグループを「絶対に」の2つと「できたら」の2つに分けます。
そして、「絶対に」の方は達成させるために積極的な働きかけをしていきます。
関わり方や心構えについての記事を参考にしながら、本人にも「やるように」または「やめるように」意識してもらわなければいけません。
毅然とした一貫した態度で対応しなければならないような局面も出てくるかもしれません。
*参考
例えば前述の例であれば、どんなに物に当たられても絶対に要求を叶えさせないということを繰り返して物に当たるという方法が有効ではないということを理解させたり、物に当たることで壊れたものは本人に弁償させることで物に当たる行動が損に繋がることを理解させたり。
どのような方法を取るにしても、「絶対に」の項目の改善を図ることは、お子さんの負担も大きいですが、何よりも親御さんの強い気持ちと、その気持ちに基づく一貫した行動が必要になり、負担は大きいことが多いです。
だから、「絶対に」に入れる行動は、「その行動のある・ないによって負担感が大きく異なる」本当に「絶対に」な行動のみにしなくてはいけません。
「できたら」のグループの対応
一方「できたら」のグループに入ることは、文字通り「できたら」なので努力目標と捉えます。
そしてこれらの行動に対しては「正解を伝えてできたら評価する」ということを繰り返すことで、望ましい行動が増えていくように働きかけていきます。
その際には「できたら」のグループに入っているということを忘れずに、禁止や命令は使わず、強引な働きかけにならないように注意する必要があります。
*参考
最小の負担で最大の効果を!
「絶対に」のグループの対応の部分で説明した通り、「絶対に」のグループに入るような問題に取り組むことは、お子さんにも親御さんにも大きな負担になります。
そのため、挙がった行動は出来るだけ「できたら」のグループに入れていきます。
実際に親御さんの相談に対応するときには、4つの枠が書かれたフォーマットを使い、その中に改善したいことを書き込んでいってもらいます。
最初は親御さんに自由に書いてもらい、そのあとで「絶対に」「できたら」の定義を説明し、それぞれの課題がどちらに入るのかを修正していきます。
このプロセスを通して、「絶対に」に入れるべき課題は多くはないということに気づいた親御さんは、皆スッキリした表情になります。
「こんなにたくさんは無理ですよね」「子どもに求めすぎていました」といった感想を述べられる親御さんもいます。
この気づきを親御さんが得ることが出来ると、たくさんのことに取り組む必要はないということが分かって肩の荷が降り、穏やかにピンポイントの介入が出来るようになり、またお子さんの負担も減り、怒られる頻度が下がり、穏やかに過ごすことが出来るようになるという良い連鎖が生まれやすくなります。
少ない「絶対に」に入る行動について取り組むだけで大変なのに、「できたら」の行動にも積極的に介入していくということは非常に困難です。
目標をランク分けするという方法は、「その行動のある・ないによって負担感が大きく異なる」行動に焦点を絞ることで、最小の負担で最大の効果を得るということを促す考え方であると言えます。
的を絞って集中的に取り組むことが、急がば回れで良い循環を生むといいですね!