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昔のゲームばっかりやってたぼっちなコミュ障に、VRMMOはキツイっす 作者:赤鯨

ぼっちコミュ障、海へ ~ザ・ライフ・オブ・オーシャン~

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ついに来た人間(イルカ)

今までで一番面白かったプレイヤーの名前は、『ミカサ・アッ』ッという名前です。出会ったことはありませんが、モンハンクロスとかのオンラインにいたそうです。

なんでフルネームで入れたんだとか思いますが、それよりも武器が太刀だったということがツボりました。

やるならちゃんとなり切って双剣使いなよ……。


再び初めの砂浜へと戻ってきた俺を出迎えてくれたのは、当然のようにアクアだった。

ちなみに今の俺はイルカのままだ。砂浜に半分打ち上げられた形になっている。アクアは上半身を起こし座っているので、今度は俺が見下ろされている。


「おかえりなさいませ、どうやら生を全うされたようですね」


「生を、全う……できたのかな……?」


その命と引き換えに俺を生んでくれたママン。彼女とは一言も話さなかったけど、その犠牲の上に成り立った命はわずか3分ほどで終わってしまった。


ああ、世界って、自然って厳しいんだな……。ゲームばかりしてるとどーだこーだ、社会の厳しさが云々かんぬん言ってた高校の時の先生にこのゲームをやってもらいたい。


社会って生まれた瞬間に母親が死んで、ただ一回の呼吸のために必死の思いで体を動かし、努力が報われた瞬間に喰い殺されることよりも厳しいんだろうか?

俺、今度からイルカを見たときは敬語で話しかけるよ……。世界に息づくイルカはみんな、あの地獄を潜り抜けてきた猛者なのかよ。マジ半端ねぇわイルカパイセン……。


「寿命で死ぬも、捕食されて死ぬも、等しく大自然の営みの一部です。サメに食べられようが、微生物に分解されようが等しく何かの生きる糧となります。そうして命は巡り、世界は成るのです」


「ほのぼの海洋ライフゲームかと思っていたら、食物連鎖学習ゲームだったのか……」


「世界という大きなライフサイクルの中では一個体の生き死にというものは無数にあるうちの一つにすぎません。永遠の命など無く、他者を食らい全力で生き、死んで他者の肉となる。連綿と続く命のつながりを感じて頂ければ幸いです」


 こいつのAIを組んだやつは敬虔な仏教徒かなにかなのか?にこにこ笑顔のナイスバディなパツキンねーちゃんが諸行無常を悟りすぎだろ……。


「ところで、次の命は何になさいますか?」


ファミレスの店員かよ。ご注文お決まりですか?みたいに聞かれても。命の扱いが重いのか軽いのかわからん。


「とりあえず、当分の間はバンドウイルカをやってみるよ。……次は、NPCの群れに生まれさせてください」


「承知致しました。では、準備がよろしければ5秒間目をつむってください」


次のイルカ生はせめて被捕食エンド以外でよろしくお願いします……。






「ここでっ!こうっ!!腹筋に力こめろぉぉぉぉ!!おらぁぁああ!!!」


初めてのイルカ生からリアル時間で早一週間。何のかんのでイルカライフが楽しくて学校以外はほぼずっとやってた。料理された魚を見ると違和感覚えるくらいにはずっと鮮魚(水揚げ前)を食べていた。


この一週間でいろんなことを経験した。

サメに喰われ、シャチに喰われ、首長竜に喰われ、メガロドンに喰われた。イカを食べようとして逆に巻き付かれたこともあるし、鰯の群れに突っ込んで超腹いっぱいになったこともある。

鰯の一部含めて食って食われてした相手はほとんどプレイヤーだったのにはビビった。あ、定置網に巻き込まれて窒息死もしました。人間ってマジ地球環境の害悪な。


なお、寿命を全うしたことはない模様。ちなみにラオシャンの基本設定ではリアル時間で一ヶ月経つとゲーム内では1年経つ。つまり春夏秋冬が一週間ずつってわけね。ログアウト中に寿命を超えることはないみたいだけど。

まあ、自分の成長速度や年齢はある程度なら設定でいじれるんだけどさ。クジラとか亀とかやってると全然終わんねーからね。あといつまでも赤ちゃんのままだとすぐ食われるからね。赤ちゃん時代にしかとれない実績とかもあるから一概に成長スキップがいいとも言えないけど。



そんで今何やってるかというと、イルカショーでよくある、海面に立ち上がってすごい勢いでバック走するやつに挑戦中なんだ。錐揉みジャンプや宙返りよりも難しいんだよな、これ。

尾びれを素早くかつ力強く動かして立ち上がり続けるのはもちろん、姿勢を固定しないとすぐにバランス崩して倒れるから腹筋にめっちゃ力入れないといけない。


「だらっしゃあああ!!10メートルはいったか?」


『実績解放:フル・アスターン!』


「おっしゃあ!」


 イルカやシャチなんかには、この手の曲芸をすることで解放される実績が多数あると聞く。高さ何メートルまでジャンプとかな。シャチだと飛んでる鳥をジャンプして捕食する実績もあるんだとか。

あと、エコーロケーションも使えるようになった。超音波発射して周囲の情報を得るってやつな。なんかできねーのかなーって思ってたらいきなり視界の中に3Dマップみたいなのが出てきてビビったね。クジラだともっとくっきりはっきり見えるみたいだけど。


「うーん、初めはアレだったけどイルカライフ楽しいなぁ。大きさもちょうどいいよな」


ラオシャンでは、当然ながら何になっているかで見える世界が違う。クジラから見れば鰯なんぞ有象無象だが、逆に鰯から見れば最大の哺乳類であるシロナガスクジラなんて途方もなく大きな存在だ。ちなみにラオシャンで一番小さい存在はオキアミだ。小さすぎてプレイヤーネームが指してる人がどこにいるかわかんないからな。


今のところ他プレイヤーとは食うか食われるかの関係しか持ったことがない。特に持ちたいとも思わないけど。まあ、一度鯵のプレイヤーを捕食した時、「味な真似を……鰺だけに」って言われたのは不意打ちでちょっと面白かった。絶対アレを言うためだけに鯵を選んでるよな。


『あなたの群れに子供が生まれました』


あ、おめでとうございまーす……。ずっと曲芸チャレンジばっかりやってたから群れをほぼ放置してたわ。NPCがまた増えるのか。あ、そうそう。今NPCを20体くらい呼び出して群れ作ってんの。もちろん実績と肉食動物に対する肉の盾のために。

どれ、NPCとはいえ俺の群れの一員であるならその初呼吸を見届けてやろう。たまーに親が死んで助けがないやつとかいるからな、俺みたいに。


えーっと、あ、いた。……あいつ……か……。


俺の目の前で必死にもがく子イルカの頭の上には『日曜日の次の日』という文字が。なんだその名前は。人によっては発狂もんだぞ、特に社会に疲れたサラリーマンとか。

しかし、プレイヤー、か……。


「おぼ、おぼぼぼぼぼ!!」


溺れてるよな、あれ。マニュアル操作初めてなのかな。このまま放ってたら死ぬかな。でもわざわざプレイヤーの群れ選んで来てるのに見殺しはちょっとなー。あー、でもママンもいるから大丈夫だろ。

あ、ママンが下から押し上げてる。がんばれがんばれ、あとは暴れすぎて酸素を無駄に使わないようにするだけだぞ。そーれもうちょっと、もうちょっと。


おぼぼぼ言ってるってことは水飲んでるんだろ?なんで海洋生物に生まれるのがわかるくせに出生一番で海水飲みこんでるんだよ。つーかイルカなんだからある程度水飲んでも平気だぞ?捕食の時なんか結構飲みこむんだからさ。これだから人間捨てきれてないやつは……。


結局ママンに押し上げられつつ無事に海面までたどり着けた日曜日の次の日(めんどいからもう月曜日でいいや)は、若干慌てながらも大きく息をしていた。

うむ、初めての呼吸はいいものだよな。それがマニュアル操作で溺れかけた後ならなおさらな。


「はぁ、はぁ……。死ぬかと思った……」


そうだね、掛け値なしで文字通り死ぬ寸前だったね。俺の第一生よりも長生きできてよかったな?


しかし、ついに群れの中にプレイヤーが来てしまったか……。

ちなみに私は平日も休日もありません。GW?知らんな。

ニートじゃないよ!


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