ソフトバンクグループ(SBG)の連結決算が赤字に転落した。大型投資の損失が響いた。孫正義会長兼社長は強気の姿勢だが「携帯」という公益事業の担い手だけに慎重なかじ取りを求めたい。
今回の赤字はSBGが主力事業として進める新興企業への投資の一部が失敗したことが直接の原因だ。具体的には「ウィーカンパニー」という米国の会社の経営が悪化し、投資先としての価値が下がり巨額損失が発生したことが赤字につながった。同社は、日本を含む世界各地に持っているオフィスを、会員が使えるビジネスを行っている。
SBGの子会社で携帯事業を担うソフトバンクは昨年十二月、東京証券取引所に上場した。上場で得た資金を人工知能(AI)事業などを手掛ける企業に投資することが目的だった。あらかじめ「ビジョン・ファンド」という十兆円の基金もつくっていた。
孫会長は「私自身の投資判断がまずかった」と述べたが、責任が経営トップにあることは言うまでもない。SBGは携帯事業やウェブサイトを運営するヤフージャパンのイメージが強かった。しかし現在は投資会社へと変貌を遂げつつある。投資の陣頭指揮を執っているのは孫会長で責任の所在は明白だ。
心配なのは投資先の株価が下がったり業績が悪化しているケースが他にもあることだ。孫会長の投資判断の評価は高い。中国の電子商取引大手、阿里巴巴(アリババ)に対し創業直後から出資していたこともそれを裏付けている。
今回も投資姿勢については「萎縮しない」と明言。ただリスク覚悟の新興企業投資なだけに、今以上の慎重さも必要ではないか。
携帯事業への影響も気がかりだ。昨年の上場の直前、ソフトバンクは大規模な通信障害を起こし、契約者の七割以上の回線が被害を受けた。
今年相次いだ台風や豪雨の際でも携帯電話は命をつなぐライフラインだった。肝心なときに通信障害を起こせば大きな被害を生みかねない。
SBGの有利子負債は七兆五千億円を超える。経営悪化が融資した銀行だけでなく日本経済全体に及びかねない規模だ。
赤字から脱却するために投資事業に一層傾注するのは理解できる。だが携帯事業を中心にSBG全体が強い公益性を背負っている事実を、改めて念頭に置くよう強く求めたい。
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