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不遇らしいけど何とかなりそうなので無難にやってます 作者:洗濯紐

ゲームの始まり

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ゲームの始まり

VR物を書いてみました。ぜひ読んでみて下さい!

少しでも面白いと思ったらブックマーク等してくれると嬉しいです。

「はめられた…」


 周囲を見ても、何処にも弓を持っている人間などいない。確か、尚康は弓がとても強い。と言っていたはずだ。だからこそ、廃部寸前ではあるが弓道部に所属している俺をこのゲームに誘ってきていた筈だった。だが、周囲を見ても【遠距離物理】の初期武器である弓を持っている人など見当たらない。それどころか、時たま俺の手元にある弓を見て笑っている人すらいる。


 確かに、最初に【近距離攻撃】・【近距離防御】・【遠距離魔法】・【遠距離物理】の内一つの方向性に決めろと言われた時、【遠距離物理】だけぱっとしないような気はした。

 だが、俺以外で誰一人として弓を持っている人が見当たらないのはおかしい。

 それを尚康に問い詰めるためにも、俺は待ち合わせ場所である街の南部に行くことにした。


 現在、俺がいる場所は街の中心部であり、四方向へ道が伸びている。そして、何故か大抵の人は南以外の三方向へ進んでいた。それを聞くためにも俺は急いで南方向へ進んでいった。


 思い返せば、尚康の行動はいろいろとおかしかった。そもそも、俺はこのご時世では珍しく、VRゲームという物をやったことが無かったのだ。それだというのに尚康は、βテストの特典としてもらった、もう一つのソフトを俺にくれた。他にも欲しがる人がいたというのにだ。


 それに、自由主義を基本方針として掲げている尚康が、今回に限っては俺の方向性や種族、職業やスキルにステータスを指定してきていたのだ。それもおかしかった。



 五分程歩いていく内に、街の外壁にたどり着いた。まあ外壁と言っても、そんなに仰々しい物ではなく、ちょっとした壁があるだけだ。門番であろうNPCに軽く会釈し、門の外へ出た。


 そこには、案の定尚康らしき人物がいた。逆にそれ以外は誰も見当たらないので、尚康でないと困る。


「尚康…だよな?」

「あってるけど、プレイヤーネームのナオで呼んでくれ」


 言われてから気づいた。そう言えば、そういった様なマナーがあったな、と。まあ、そんなことはどうでも良い。今は色々と聞きたいことを聞くべきだ。


「なあ、色々と聞きたいことがあるんだが…」

「だろうな。でも、その前にフレンド登録をしておこう。やり方は分かるか?」

「一応、基本操作は全部見てるから問題ない」

「んじゃ、申請を許可してくれ」

「した」


 基本操作を見たと言っても、基本の基本しか把握できていない為、ヘルプ機能を良く使う事になる未来が見えるが、まあいいだろう。


「んじゃあ、俺がお前に【遠距離物理】にしてもらった理由と、ここ集合にした理由、ここに人がいない理由を全部説明しよう」

「頼む」

「まず、もう察してるだろうけど【遠距離物理】は、ネットを少しでも見た人だったら選択しない様な不遇職だ。理由としては、【遠距離物理】関連のスキルの射程が【遠距離魔法】より若干短い上に、スキル補正だけじゃなかなか当たらない。これは、近距離の両方に関しても言えることだけど、物理である以上現実のセンスが大きく関わってくる。剣だって空振ることも沢山ある。それに対して、【遠距離魔法】は現実には無い物だから、スキルの効果だけで確実に当たる。まあ、要するに【遠距離物理】は【遠距離魔法】の完全劣化版になっている訳だ。これで一個目は良い?」

「ああ」


 要するに、物理系統はリアルのプレイスキルが求められるから、弓じゃあ当たらないって事だろう。それで、現実で弓を扱っている俺だったら出来るのでは?と考えたのだろう。


「次に、2つ目と3つ目だけど、始まりの街の周囲にある草原は大きく4つの区分に分かれるんだ。北が攻撃値が高く好戦的、東が防御値が高く守備的、西が器用値が高く頭脳的、南が敏捷値が高く逃走的ってかすぐ逃げる。まあ、他の所では戦うことが出来るのに、ここだけは戦うことすら出来ない。この情報もネットに上がってるから、誰もこっちには来ないわけだ」

「へー」

「お前聞いてる?」

「聞いてる聞いてる」


 実際の所、途中から理由などどうでも良くなってしまった為、頭の中を通り過ぎて行ってるのだが、聞いているのだから問題はないだろう。


「んで、これがお前のステータスを指定した理由」


 そう言いながら、尚康…ナオは手を前にかざした。すると光とともに、初期武器の弓と然程大差のない弓が出てきた。


「これさ、β時は全然出てこない武器なんだけどさ、STR7、DEX4の最低制限は有るものの、固定ダメージ10なんだよ。んで、最初の草原に出てくるグラスラビットは一律HP10。だから、当たれば一発で倒せるんだよ。使ってみてくんね?譲渡するから」

「分かった」


 それから、ナオにある程度の説明を受けた。グラスラビットがアクティベート化する範囲は50mで、【遠距離魔法】の一次スキル限界射程範囲は48m、【遠距離物理】の一次スキル射程範囲は47mらしい。で、俺らがいる場所のグラスラビットは、50m以内に人が近づくと真っ先に逃げ出す。だから、50m以上の範囲から弓を当てる必要が有る。ということらしい。

 だが、日頃は三寸伸を使っているのに対して、今持っているのはショートボウだ。ナオには悪いが一発で当てられる自信は無かった。



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