第一話 迷宮装備
「邪神よ!我が刀身に宿れ!必殺!邪神竜撃迅雷剣ッ」
そう叫びながら、俺は青く禍々しい凶悪モンスターへ自分の剣を振り下ろした
ぽにゅわぁ、と擬音にならない擬音と共にその凶悪モンスター''スライム''は動かなくなり、小さな石を落として消滅する。
「相手が悪かったな…」
と決め台詞を吐き、スライムが落とした石を回収。そして右手に持った袋に入れた。
これで今日ドロップした迷宮石は全部で10個になった、スライムが落とす低級の迷宮石だが一つ500円にはなる。
「今日はおかずが一つ増やせるぜ…」
なかなかの戦果に満足し、俺は腕時計を確認した。針は18時25分を指している。
スーパーの半額セールは19時からだから、急いで迷宮を出て、隣の委員会で換金すれば十分間に合う時間だ、そう思い俺は迷宮扉へ向かおうとした。
「ん?」
外に通じる迷宮扉の方へ歩き出そうとした瞬間、少し離れたところに何か落ちているのが見えた。
「迷宮石取りこぼしたか?」
スライムからはなかなかドロップしない迷宮石だ、一つたりとも無駄にはできない。
唐揚げ弁当買っておかず買って、チョコボールも買おうとか考えながらその落ちているものの側まで向かう。
そして足元まで来て拾おうとそれを間近で見た瞬間、あまりの衝撃に右手に持った迷宮石入りの袋を落とした。
落ちていたそれは青く輝いている、そして見たところ腕につけるプロテクターだった。
「うそだろ…」
モンスターからドロップするアイテムは色々あるが、大体は迷宮石か、モンスターが拾ったり人から奪ったりした薬草なんかの消耗品、後は低確率でそのモンスター固有の素材品だ
そしてもう一つ、素材品よりも低確率でまず落ちることはないと言われているアイテムがある。
「迷宮装備…」
落ちれば一攫千金、はたまた一気に上級冒険者の仲間入りと言われている迷宮装備。
まさかスライムからドロップしたのか?一応低級モンスターからもドロップした例は聞いたことあるが、スライムからは無いはずだ
しかし、目の前にあるそれはどう見ても装備品だった。
いや、まだ誰かの落とし物って可能性も!
そう考えてプロテクターを拾い上げる、もしもこれが迷宮装備なら模様があるはずだ。
迷宮装備には、どのモンスターがドロップしたかわかるモンスターの模様が描かれている。
まじまじと見る、すると端の方にうっすらとスライム模様が書いてあった。
「うおお…、おおお!」
間違いない、迷宮装備だ。
今日、この辺りを狩っていたのは俺だけだし、来たときにはこんなもの無かった。
つまり、俺が倒したスライムが落とした迷宮装備だ。
俺は辺りを見渡して誰もいない事を確認してから、すぐにプロテクターを後ろに背負ったリュックに入れた。
そして大急ぎで迷宮扉へ向かい、外へ出た。
外に出ると、迷宮ではあまり感じなかった寒さを感じた。
冬の空は18時でももう真っ暗だ。
周りでは今から迷宮に向かう冒険者や、今日の探索を終え談笑するグループがちらほら見える。
俺はいつものように隣の冒険者委員会で迷宮石を換金するのも、半額弁当を買いにスーパーに向かうのもやめて一目散に家へ走った。
半額弁当を逃すのは惜しいが、リュックの中身を考えれば仕方がなかった。
初投稿です。マイペースですが楽しく書いていきたいと思います。
よろしくお願いします。